#1750 一斉→個別→一斉の算数授業【算数科】
今回は、過去の記事で整理した「一斉→個別→一斉」の単元・授業構想を算数科を例に整理していく。
参考にしたのは、加固希支男氏の実践である。
1 単元導入の一斉授業
単元の導入では、全体で一斉授業を行い、単元を通して大切にしたい「数学的な見方・考え方」を確認・共有する。
このときの見方・考え方は、単元を貫くような「包括的」なものが望ましい。
2 単元中盤の個別学習前半
単元の中盤では、個々のペースに応じた個別学習を進める。
前半は、「指導の個別化」を意識する。
この段階では、「最低限の明示」がポイントとなる。
流れは以下の通りだ。
➀全員共通の問題を複数解く
②問題解決の際は、
「どうしてそうなるのか」という解き方の説明、
「どうしてそうしようと思ったのか」という発想の源を
「吹き出し法」により、ノートに記述する
③周りの友達と、解き方・考え方を交流する(協動)
④複数の問題解決や友達と交流した解き方・考え方をもとに、
「大切な考え方・きまり・共通点」を見つける
⑤「大切な考え方・きまり・共通点」を黒板やICTで共有する
この個別学習においても、「数学的な見方・考え方」を共有できるようにする。
しかし、単元導入の一斉授業で共有した「包括的な見方・考え方」よりも、抽象度が落ちた見方・考え方を共有することになる。
単元導入で共有した見方・考え方よりも抽象度レベルが落ち、より個別具体的な見方・考え方(あるいは知識・技能)を扱うことになるのだ。
ここまでが個別学習の前半である。
しかし、個々の子どもにより、学習のペースは異なってくる。
よって、45分間でここまで全員が達成できることを目指す。
「最低限の明示」がポイントなのである。
次の「後半」の学習は、いける子どもだけでもよいのだ。
また、基本的には子どもたちの個別・協働学習に任せるのだが、あきらかに学習のねらいから逸れているときは、個別学習を止め、一斉指導に戻すことも必要である。
しかし、⑤のように黒板に書いてもらったり、ICTで共有したりする際は、学習を止め、一斉指導に戻す必要はない。
「大切な考え方」を理解する必要がある子どもだけが、黒板やICTなどで確認すればよいのである。
3 単元中盤の個別学習後半
後半は、「学習の個性化」を意識する。
この段階では、「上限の解放」がポイントとなる。
学習の個性化を促す方法は、以下の通りだ。
➀問題をつくる(数値の変更、個数の変更、場面の変更)
②きまりを発見する
③気になることを探究する
このような活動により、学習の個性化を実現する。
しかし、この段階は「上限の解放」の部分なので、全員ここまで達成することを目指す必要はない。
ここまでまとめてきて気づいたのだが、個別学習の前半でも後半でも、教師は個別指導に徹することができる。
教室前方に立ち、全体に指導する場面はほとんどなくなる。
つまり、最終的には「教師がいなくても、子どもたちだけで学習を進める」ようにしていくことができるのだ。
教師がやることは、
「最低限解くべき問題の設定」
「黒板の開放やICT環境の整備」
「学び方の選択ができるように鍛えておく」
「つまずいている子どもへの個別指導」
となる。
つまり、単元中盤の個別学習における教師の役割は、「指導者」ではなく、「支援者」「伴走者」「学習環境の調整者」となるのだ。
4 単元終末の一斉授業と振り返り
単元終末の一斉授業では、以下のような活動を行う。
➀単元中盤での複数の個別学習において「重要なこと」を全体で再確認する
②獲得した見方・考え方を踏まえて、発展問題に全体で挑戦する
さらに、単元の最終末では、単元を通した振り返りも行うようにする。
振り返りの観点は以下のようなものが考えられる。
➀この単元で学んだ、これからも使いたい「見方・考え方」
②この単元で重視した「学び方」
➀は内容面における振り返りで、②は方法面における振り返りである。
このような振り返りにより、この単元で獲得した「見方・考え方」、身体化した「学び方」を、次回以降の単元でも活用できるようにするのだ。
以上が、算数科における「一斉→個別→一斉」の授業デザインである。
ぜひとも、これからの算数の授業づくりに生かしていきたい。
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