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#1578 問題解決の算数授業【算数科】

今回は早勢氏の『算数科はじめての問題解決の授業ハンドブック+実践事例25』からの学びをまとめていく。

問題解決の算数授業をつくるためには,以下の12のポイントがある。

1 基本としたい「指導過程」は問題解決的にする

子どもが「目的意識をもって主体的に取り組む」ことができる授業展開を構想することが肝となる。

①教師が提示した「問題」をきっかけとして,予想や試行錯誤を通して子どもが「課題」を見つける。
② 個人思考を経た話し合いなどによる集団解決を行い,「課題」と「問題」を解決する過程で知識や技能,数学的な考え方など,本時の目標の達成を図る。
③ 子どもの声を生かした本時のまとめがあり,確認問題や練習問題も行う。

もう少し詳細に記述すると,
➀問題の提示
②予想、試行錯誤
③課題の明確化
④個人思考
⑤集団解決
⑥確認問題
⑦まとめ(振り返り)
⑧練習問題
となる。

一般的には「課題→問題」の順だが,問題解決の授業では,「問題→課題」の順となるのだ。

2 「本時の目標」を十分に吟味する

目標には,大きく分けて次の3つの水準がある。
①達成的目標:達成されたか否か明確に知る手段がある
②向上的目標:ある方向へ向かい向上・深化が要求される
③体験的目標:体験を通して感動や満足感を得る

1単位時間のように期間が短い場合の目標は,「➀達成的目標」で書くようにしたい。

そして,子どもの具体的な行動で表す「行動目標」の形で書くようにする。

つまり,「~を理解する」ではなく,「~が説明できる」というような行動目標とする。

このように,本時の目標を具体的に設定すれば,評価規準の「B規準」を作成したことにもなるのだ。

3 「本時の目標」と「まとめ」を正対させる 

「本時の目標」でねらう教師の意図は,導入で教師が提示する「問題」をきっかけとして,子どもの「?」(はてな)を引き出すようにして「課題」として設定する。

そしてそれは, 個人思考や集団解決を経て,子どもたち自身で見つけた「!」(なるほど)の形でゴールとして「まとめ」られ,確かに定着しているか「練習問題」で確認される。

これらが一連として正対した授業を展開することが,「目標と指導と評価の一体化」に極めて重要となる。

つまり,授業を構想する際には,「本時の目標」が達成された後のゴールをイメージし,子どもの声を生かした「まとめ」 を明確にすることが重要となる。

よって,「教師が一方的に文章を板書する形式的なまとめ」「教科書のまとめをノートに写させるまとめ」は避けなければいけない。

教師は本時の目標でねらう大切なことにアンテナをはり,子どもたちへの問い返しの発問を通して「確認」や「強調」をすることで,ほぼ「本時のまとめ」とすることができる。

また「教科書に書いてあるまとめ」も,確認のために活用するようにしたい。

4 「問題」をきっかけに「課題」は子どもたちから引き出す

1単位時間の授業における「課題」は,子どもが教師から提示される「問題」をきっかけとして「目的意識をもって主体的に取り組む」ために極めて重要となる。

よって,教師は子どもたちから「課題」を引き出すようにし,明確に板書をするようにする。

「問題」をきっかけにして授業が始まり,その「問題」の解決過程で「課題」が生じる。

「問題」とは,考えるきっかけを与える問い(教師が与えるもの)であり,
「課題」とは,「問題」の解決過程で生じた疑問や明らかにすべき事柄(子どもがもつもの)なのである。

教師は授業を構想するときに,
「本時の目標」→②「なるほど!」(まとめ)
→③「はてな?」(課題) →④「導入」(問題)

を意識することが必要となる。

5 導入で提示する「問題」を工夫する

「問題」は,子どもの「はてな?」を引き出すものでなくてはならない。

そのため,よい「問題」は,
①子どもの学習意欲を引き出すもの
②問題の解決過程で新たな知識・技能を同時に身に付けていけるもの
なのである。

考えるきっかけとしての「問題」は,次のように「決定問題」の形で提示することで,子どもの「はてな?」を引き出しやすくなる。

○ 「~はいくつか」 など (求答タイプ)
○ 「~はどれか」 など (選択タイプ)
○ 「~は正しいか」 など (正誤タイプ)
○ 「~はどんなことがいえるか」 など (発見タイプ)

他にも以下のような問題づくりの工夫がある。

➀ 誰でも直感的に予想できるような問題にする
② 異なる予想が生じるような問題にする
③ 数値,図の向きや大きさを工夫する
④ 子どものつまずきを捉え,意図的に問題に取り入れる
⑤ つまずきが生じるような問題にする
⑥ 教科書を逆から教える発想で教科書の練習問題を活用する

6 「個人思考」では「集団解決」の構想を練る

授業では,「個人で取り組む時間」を「自力解決」と呼んできた。

このとき教師は「この時間で,すべての子どもに自力で解決させなければならない」と考えてしまい, 個別に教えたりヒントを出したりするようになる。

しかし,いくら考えてもわからない子どもは,途方に暮れて「もう考えたくない」と思ったり,早くできた子どもは「できたから,もう考えなくていい」と遊んでしまったりすることもある。

また,長い「自力解決」の後での「集団解決」は,単なる発表会の時間のようになることが多い。

そこで,この時間を「個人思考」とすることが重要となる。

「まずは子どもが自分なりに考えてみる時間」と捉えることで、途中まででもよく, 多くの時間もかけなくてよいと思えるようになる。

つまり,
➀「自力解決」・・・・ 最後まで解決する,長い時間
②「個人思考」・・・・ 途中まででもよい,短い時間
となる。

この個人思考の時間に,次の集団解決のための「指名計画」を立てるようにする。

つまり,どの子どもの考えをどの順番に,どのタイミングで取り上げるかを決めるのだ。

このとき,「ヒントの意図的なつぶやき」や「気づいたことの記述の促し」もできるとよい。

7 子どもたちで見つけたと感じる「集団解決」にする

「個人思考」で把握した子どもの実態を踏まえて,構想した指名の順番やタイミングで子どもの考えを取り上げていく。

考えの取り上げ方には以下のようなものがある。

➀ いくつかの考えを並列的に取り上げたあと「どの考えがよいか」と話し合う
② 誤答と正答を取り上げたあと「どちらが正しいか」 と問い,続けていくつかの考えを立場を明確にして説明させる
③ 最初に誤答を取り上げて間違いと明確にしたあと,いくつかの正答を取り上げ「どの考えがよいか」と話し合う

「途中まで」や「つまずき」を積極的に取り上げ,それらを生かしつつ,複数の考えを比較してみんなで解決していく。

これにより,「わかった!」「できた!」「なるほど!」「すごい!」 などの声がこだまし,「自分たちで見つけた」と感じる授業にすることができる。

また,教師は「どうして?」「本当に?」 などと問い返すことを基本としたい。

子どもが「だって」と言いたくなるように仕向けるのである。

さらに、
➀ 本時の目標の達成にかかわる子どもの発言を強調したり,確認したりする。「えっ,今なんて言ったの!」「何,何,もう一回言って!」など
② 一人の説明を,その子どもだけで終わらせない。「○○さんの考え分かる?」「同じ考えの人いる?」など
③ 教師が適度にとぼける。「先生には分からないな」「へぇー,それでいいの?」など
のような教師の働きかけも有効となる。

上記のような集団解決場面では,子どもたちの意見の相違点や共通点を探すことで,多様な考えをまとめていくことができるのだ。

8 「終末」では確認問題や練習問題もしっかり行う

授業のまとめの前には,「確認問題」を解くようにしたい。

確認問題の活用の仕方は,
➀ 多様な考えを「教師が本時でねらう考え」に収束させる
② 1つの図形で考えたことをより一般的なものにする
③ 子どもたちの理解の程度をより確かなものにする
④ 考え方を説明し合う機会をつくる
のようなものがある。

まとめの後は「練習問題」を行い,本時における理解を一層確かにしていく。

このような確認問題や練習問題は,本時の目標と正対していることが重要である。

また,終末に「確認問題」を位置付けることで,「集団解決」の際に「他の考え方はない?」とか「他には?」のような発問を繰り返す必要がなくなり,集団解決で出なかった意見の補足にもなるのだ。

9 授業内容と関連した「評価問題」を工夫する

このポイントは,いわば「パフォーマンス課題」を付与することを意味する。

一問一答ではなく,「理由」や「説明」を求める問題にすることが重要となる。

10 考えつづけることを促す「板書」を意識する

板書には以下のような機能がある。
①目的意識の持続
②考える過程の把握
③思考の促進

「式や計算など結果や結論しかない板書」では,ノートは計算練習帳のようになってしまう。

そうではなく,上記の3つの機能が生じる板書を心がけるようにする。

みんなで考えながら気づいたことなどを「吹き出し」で示したり,教師の発問や子どもの問いを板書したり,矢印や囲みを書き加え「強調」と「確認」をしたり,「考え方のキーワード」を板書したりするのだ。

11 考えた足跡が残る「ノート」指導に努める

ノートには以下の3点を書くようにしたい。
①自分の考え
②友だちの考え
③授業中の気づきや思い

板書と連動させるように,「気づきや思い」を残すことで,あとで見返したくなるノートになるのだ。

12 必要感のある教科書の活用をする

 教科書は以下のような場合に活用させるとよい。

① 問題提示として
② 確認として
③ ヒントとして
④ 別解として
⑤ 例示として
⑥ まとめ(の参考)として
⑦ 練習として
⑧ 宿題として


以上が、「問題解決の算数授業」の12のポイントである。

明日からの算数授業の実践に活かしていきたい。

では。

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