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あなたが監査法人のトップになったら?

監査法人の中にいると、「トップは何やってんだよ」という愚痴が聞こえてきます。監査法人の外にいても、思うところがいろいろあるかもしれません。それでは、あなたがそのトップになったら、どうしますか?


監査法人で30年強、うち17年をパートナーとして勤めた「てりたま」です。
このnoteを開いていただき、ありがとうございます。

X(Twitter)でこんな質問をしました。

30人近い方から回答をいただきました。
ご協力いただいた皆さま、どうもありがとうございます。



監査法人の最大の課題は?

最優先で取り組むべき課題としては、
「監査業界の将来を担ってほしいSS~M層が多く退職していること」(サラリーマン会計士さん
「シニアスタッフ、マネージャーの離職が心配になる水準」(畠山謙人さん
など、退職者の問題を挙げる方が大勢いらっしゃいました。
CPA学院の国見健介さんにも
「優秀増の退職」
を挙げていただいています。
(それぞれ、お名前のリンクからX(Twitter)の投稿に飛ぶことができます)

また、
「資本市場や社会が要求する保証ニーズ(会計、サステナ、サイバー等)が拡大し続け、既存リソースでの対応が不可能になりつつある」(Odagiriさん
といったリソース逼迫を挙げていただいた方もいらっしゃいます。

退職とリソースの問題は互いに関連しています。
退職者が多いからリソースが逼迫する。
リソース不足で忙しすぎることも、退職の原因となっている。

次に、この退職とリソース問題にどんな手を打つべきか、ご意見を見ていきましょう。


退職/リソース問題を解決するための施策とは?

退職者が多く、リソースが逼迫する現状を打破するために、どんな施策が考えられるでしょうか?

給与アップ

まずは分かりやすく給与水準を上げよう、という施策です。

「給与1.3倍」(畠山謙人さん
「給料は外資IBD(せめてFAS以上)に揃える」(七宮智音さん
「監査部門の税務・コンサル・FAS部門並みの給与引き上げ」(Alhassanさん
といったご意見をたくさんいただきました。

そのほかの労働条件の改善

「労働環境、労働条件を大幅に改善(労働時間、給与面、福利厚生面、自由な働き方、裁量含む)」(サラリーマン会計士さん
というように、給与に加えて条件の改善を求める声もありました。

ユニークだったのは
「各自が望むやりがいを1つ叶える。不人気な仕事も割当てバランスを図る」(畠山謙人さん
というご意見。あれもこれもは難しいので、一つだけかなえてあげましょう、ということですね。

若手パートナーの積極登用

優秀な人は早くパートナーに上げよう、という意見も何人かの方からいただきました。
「完全実力主義の給料体系に変更して、若手の優秀層を10年でパートナーに」「毎年評価の低いパートナーは降格する」(国見健介さん

降格ではおさまらず、退任していただく、という声もあります。

監査報酬アップ

給与を上げるにも、原資が必要。
「4大監査法人で結託して、監査報酬の引き上げを行う」(オカピさん

「リスクレベルと単価の組み合わせを公表して契約見直しを迫ります」「以前ヤマトが大胆な見直しをした時のように社会問題化させるために単価公表」(まことさん
と、具体的な進め方も提案いただいています。

監査報酬を上げることは、昇給の原資とするほかに、監査契約を減らしてリソース逼迫を緩和したり、収益性が向上するのでチームメンバーの教育に時間をかけやすくなる、との指摘もいただいています。

監査業務の効率化

効率化について、いくつか提案をいただきました。

まずは、品質管理部門を巻き込んだ効率化。
「品質管理と効率化を両立をさせるために品管部門に効率化の目標も」(河村浩靖さん
「品管が主体となって以下のことをします。
・不要な手続を徹底的に減らす
・手続を標準化して誰でも考えられて、誰が考えても同じ結果になるような手順書を作成して監査チームに展開する」(Yukimuraさん

次にAIの活用。
「工数インパクト大、実現可能性高、リスク低の領域に生成AIを適用しつつ、その実績を基にAI監査のムーブメントを業界団体で盛り上げます」(Odagiriさん
「AI(GPT)を会社の証跡毎にカスタムして、資料提供→必要情報の抽出を自動化」「生成AIで文書化、虚偽チェック」(NFSQさん

海外の利用

そのほかにはこんなご意見も。
「オフショア活用によるレバレッジ追求」(Alhassanさん
海外のリソースを活用することで、国内会計士がボトルネックになっているのを解消しようということです。

さらに、「DX投資はグローバルで成果出た領域以外凍結」(Alhassanさん)。
DX投資に限りませんが、グローバル組織と国内とで似たようなプロジェクトが走ることがあります。
日本からグローバル組織に人を送り、グローバルの予算と他国の人員を使って日本に合うITツールなどの開発を目指すことが考えられます。

トップコミュニケーションの改善

トップの顔が見えないと、帰属意識が希薄になります。そこで……
「分かりやすい言葉で情熱を持ちしっかり伝えるつもりでスピーチする、従業員と対話する。元気よく挨拶する。謝らないといけないことは逃げずにしっかり謝罪」(岩橋さん

さらに具体的に、こんなご意見も。
「定期的な理事長ライブ配信ですね。自分の言葉で課題認識や考え方を語り、質問に答え、理解を求める部分は説明し、至らない部分は詫び、改善を約束できる/できないを明確にする」(闘魂告知ボットさん
ライブ配信も見てもらえないようなトップは、身を引くべきだ、ともおっしゃっています。

会計制度改革

監査法人の中で努力するだけでなく、業界の外に向けて働きかけよう、との声も。
日本公認会計士協会前会長の手塚正彦さんです。「上場会社について会社法と金商法の一元化と株主総会の分散化を目指します。サステナ保証が導入される2026年あたりがチャンス」


そのほかの課題とは?

退職/リソース問題以外にもさまざまな課題を挙げていただきました。
二つご紹介します。

経営陣の多様性の欠如

「同質性の高すぎる業界の行く末はあまり明るくない」(きよすけさん
「多様性が~ってアドバイスしてる割には自分たちの多様性は全然ない」(七宮智音さん
対策としては、執行部における公認会計士の割合を減らしたり、高給で他社から引き抜いてきたりといったことが挙げられています。

金融庁ほか監督関連官庁との関係構築

morningstarさんが「金融庁ほか監督関連官庁との関係構築、改善」を挙げておられます。
銀行がかつて「MOF担」を置いてエリートを配置し、監督官庁との関係構築を図っていたと比べると、監査法人の対応はあまりにピュアではないかと指摘されています。


おわりに

以前、X(Twitter)でこんな投稿をしました。

監査法人が直面するたくさんの課題の中で、何を優先し、どのような施策を打つべきか。なかなか難しい問題だと思いましたので、皆さんのご意見をお聞きしたいと思いました。

したがって、「てりたまさんが導かれたいコトが気になります」(フェノさん)というコメントもいただきましたが、皆さんをどこかに誘導する意図はありません。

ここに紹介できなかったご意見も多数ありますので、ぜひX(Twitter)上で私の質問を起点にしたツリーをご覧ください。
皆さんご自身でもご検討いただき、ほかの方のご意見を参考にしていただいて、監査法人内の組織運営などの参考にしていただければ幸いです。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。
この投稿へのご意見を下のコメント欄またはX/Twitter(@teritamadozo)でいただけると幸いです。
これからもおつきあいのほど、よろしくお願いいたします。

てりたま

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