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監査品質との向き合い方【監査ガチ勢向け】

監査の道を歩む以上、監査品質と向き合うことは避けられません。


監査法人で30年強、うち17年をパートナーとして勤めた「てりたま」です。
このnoteを開いていただき、ありがとうございます。

会計士noteクリエイターの同志である闘魂さんが「監査道」に凝っておられ、Xのスペースなどで巻き込んでいただいています。
おかげで「監査が目指すところ」「監査のあるべき姿」について考える機会が増えました。

監査について考えるときに、「監査品質」は避けて通れません。
われわれは監査品質にどう向き合えばよいか、をここで考えてみたいと思います。



いわゆる「監査品質」というもの

皆さんは、「監査品質」という言葉を聞いて、どんな感情がわきますか?
つらい、しんどい、やらされてイヤ、聞き飽きた、面倒など、ネガティブな気持ちになることが多いかもしれません。

ちょっと監査を離れて「品質」を考えてみましょう。

映画やゲームの制作会社に勤めている人が、自社の映画やゲームがおもしろい、楽しいと評判が高いと、きっと誇らしく思えるのでしょう。
BtoBのメーカーで製造現場にいる人も、自社製品の品質について語るときは熱が入るのではないでしょうか。

自分が関わっている会社や事業の品質は、本来はポジティブなもので、もっとワクワクしてもよいはずだと思います。

では、監査品質はなぜ違うのか。
理由は二つあると思います。

一つは、社会のインフラだから

監査は社会のインフラと例えられることがあります。
典型的なインフラ、例えば電力事業で言うと、必要な量を発電し、必要な家庭や会社に切れ目なく届ける。これが品質だと思うのですが、あまりワクワクしそうにありません。
監査も、「よし、これで投資家保護は万全だ!」とアドレナリンが噴き出すことはないと思います。

もし品質が低く、インフラの役割を果たせないときには、社会に混乱を与えてしまいます。
電力で言えば、電気の供給が安定せず、停電が頻発する場合。監査では、監査の失敗による事故が多発する場合。

そんな問題を発生させない仕事をして、社会の安定に貢献しているのは間違いありません。
それをモチベーションにするためには、想像力が必要なんだと思います。

もう一つは、監査品質のハードルが上げられ続けているからです。

監査の失敗による事故は、監査が行われている数を考えると多くはないと思うのですが、それでもときどき起こります。
その都度、監査の強化が求められ、監査手続が増やされてきました。

また、事故がなくても、JICPAの品質管理レビューやCPAAOBによる検査で指摘があると、対象業務以外にも横展開して監査手続が強化されます。
さらには、内部検査(定期的な検証)も厳しさを増し、共通するような指摘事項の横展開が行われています。

「ここまでやれば十分だろう」という相場が毎年のように上書きされ続けているわけです。
前期まで信じていたことが「不十分」だと何十年も言われ続けていれば、自信喪失し、人手不足とも相まってイヤにもなってしまいます。


監査品質との向き合い方

そんな監査品質に、われわれはどうやって向き合っていくべきか。
二つの提案をしたいと思います。

❶ 監査品質にもっと自信を持っていい

確かに事故は起こるし、検査を受ければ指摘もされます。
それでも、大きな事故が今の数で済んでいるのは、監査が機能している証拠です。
そして、それを支えているのが、毎年ハードルを上げられながらも、それを超えようと現場でがんばっている監査人です。

監査法人退職後、優良企業を何社も経験された、かのモニスタさんも、こうおっしゃっています。

❷ 監査品質に謙虚になる

とは言え、今も事故は起こっています。そのたびに資本市場は混乱し、監査への信頼を失墜させています。
また、事故に至らなくても、監基報違反はいわば監査におけるヒヤリハットです。

事故の発生ゼロを目指す必要があり、そのためにヒヤリハットにも謙虚に対処しなければなりません。

「自信を持つ」と真逆のことを言っているように聞こえるかもしれませんね。

これまで監査が歩んできた道を振り返って、よくぞここまで来たと自信を持つ。
そしてこれから進む道に視線を向けて、まだ仕事は終わっていないことを思い、この歩みを止めないぞと覚悟する。

これが監査品質への正しい向き合い方だと思います。


おわりに

「監査品質」という言葉、すっかり耳タコですが、あまりちゃんと考えたことがありませんでした。そもそも「監査品質」とは何なのか、だけでも話し出すと長くなり、しかも結論があるのかどうか分かりません。

そこで「向き合い方」を軸に、短めにまとめました。
実務の役には立たないと思いますが、明日の監査に向かわれる際の参考になれば幸いです。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。
この投稿へのご意見を下のコメント欄またはX/Twitter(@teritamadozo)でいただけると幸いです。
これからもおつきあいのほど、よろしくお願いいたします。

てりたま

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