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ChatGPTにリース会計基準の先生が務まるか?

ChatGPTの利用が広がっています。会計基準の学習にも使えないでしょうか?


てりたまです。監査法人で30年強、うち17年をパートナーとして勤めました。
noteを開いていただき、ありがとうございます。

ChatGPTについて、これまでいくつか記事を書いています。

お読みいただいた皆さまからさまざまな反応をいただきました。その中に「研修に使えるんじゃないか」というご意見もありました。

ChatGPTに質問させて利用者が回答する、という使い方もできますので、リース会計基準(案)を使って試してみましょう。

ChatGPTのアップデート

ところで2週間ほど前に、ChatGPTの重要なアップデートがあったんですがご存知ですか? 「ブラウジング」と「プラグイン」というやつです。
今回、この機能を使いましたのでご説明します。「知ってるよ」という方は「ChatGPTのプロンプト」まで読み飛ばしてください。
なお、どちらも月額20ドル課金して使えるようになるバージョン(GPT-4)でないと利用できません。

ChatGPTのNew Chat画面

ブラウジング

ChatGPTは2021年9月までの情報に基づいて回答します。プロンプトの中に新しい情報を書くことはできますが、書ける量には限りがあります。これはChatGPTを使う上で大きな支障になります。
2021年9月以降の情報はインターネット上に大量にありますので、これが利用できないことはたいへん残念です。

「ブラウジング」とは、現在のインターネットを検索し、情報を追加した上で回答する機能です。
ただし次の難点があり、2021年9月までの情報と同じような具合にはいきません。

  • ChatGPTはプロンプトで指示を受けてから検索しますので、かなり時間がかかります。

  • 検索によって行きついたWebサイトの情報をだけを獲得するため、目的にぴったりの情報ではないかもしれませんし、最新の情報ではないかもしれません。

プラグイン

「プラグイン」は、ChatGPTの機能を拡張するミニプログラムです。ChatGPT上でインストールして使います。
論文を検索するプラグインもあれば、食べログにアクセスするプラグインもあります。
当初70個くらいありましたが、今数えると153個に増えています。すでに個人では試しきれない数です。

今回、その中で「AskYourPDF」というプラグインを使いました。
AskYourPDFは、PDFファイルのあるリンクを示すことで、その内容を読みに行ってくれます。

ChatGPTへのプロンプト

前置きが長くなりましたが、ここから本題です。
まず、ChatGPTに次のプロンプトを入れました。

以下のリンク先のPDFを読んでください。
https://www.asb.or.jp/jp/wp-content/uploads/lease_2023_02.pdf

ChatGPTはしばらく読んでいましたが、次のように回答してくれました。

PDFのダウンロードと読み込みが完了しました。この文書は、リースに関連する新しい会計基準の提案についてのFinancial Accounting Standards Boardからのリリースです。提案には、リースの特定、リース期間の決定、リース費用と負債の会計に関するガイドラインが含まれています。この基準は、知的財産ライセンスと無形資産のリースを除くすべてのリースに適用されます。企業は、これらのリースについては基準を適用しない選択肢を持っています。提案には開示要件も含まれており、2023年に有効となる予定です。

何か特定の質問がありますか?

なお、この文書はいつでも[こちら]から削除することができます。

これを見た瞬間は「おー、ちゃんと読んでくれた!」と思いましたが、おかしいところが二点あります。

  • リリース元が「Financial Accounting Standards Board」となっています。これだとアメリカの会計基準設定団体であるFASBです。

  • 「2023年に有効となる予定」に驚いて原文を見に行きましたが、公開草案の段階で適用時期は決まっていません。

不安を残しながら、先に進みます。
次に、以下のプロンプトを入力しました。

あなたは、企業会計基準委員会において「リース会計基準(案)」を作成したチームのリーダーであり、この基準に一番詳しい人です。しかも、会計基準を人に教える天才でもあります。

この会計基準を私が理解するために、あなたが「リース会計基準(案)」の重要な内容について問題を一つ出してください。私が回答を入力すると、正解か不正解かを答えて短く解説してください。これを5回繰り返します。
5回目が終わると、私の5回分の回答から、私がこの会計基準を十分に理解したか否かを判定してください。理解したと考えられる場合はおおげさにほめてください。そうでない場合は勉強しなおすためのモチベーションが上がるようなことを言ってください。

一連のやり取りが私にとってベストの経験となるように全力を尽くしてください。そのために、追加的な情報が必要であれば教えてください。もしベストな経験とならない場合は、残念ながらあなたの評価を下げることになります。

では、始めてください。

ChatGPTに思うように動いてもらうために、いくつかポイントがあります。

❶ ChatGPTの役割を定義する

あなたは、企業会計基準委員会において「リース会計基準(案)」を作成したチームのリーダーであり、この基準に一番詳しい人です。しかも、会計基準を人に教える天才でもあります。

「あなたは○○幼稚園の園児です」と「あなたは日本の総理大臣です」とで回答の内容は大きく変わるはずです(きっと)。
考えてみれば人間も、「会社における部長」「小学生の子を持つ親」「飲食店の利用者」「近所の草野球のメンバー」など複数の役割を使い分けて話しています。

❷ ベストを尽くすように指示する

一連のやり取りが私にとってベストの経験となるように全力を尽くしてください。

これがどう機能するのかよく分かっていません。
人間も力の入れ具合でパフォーマンスが変わるので、AIは適当に働くパターンも学習してしまっているのかもしれません。

❸ 追加的な情報が必要であれば聞くように促す

追加的な情報が必要であれば教えてください。

ChatGPTは、今ある情報で何とかしようとします。必要な情報がなければ捏造することすらします。
このため、何か必要な情報があれば聞くように促すことで、よりよい結果になる可能性が高くなります。
ただ、「こんな情報はないか」「もう少し詳しい情報はないか」としつこく聞いてきて面倒なこともあります。

❹ 期待外れの場合は評価を下げることを伝える

もしベストな経験とならない場合は、残念ながらあなたの評価を下げることになります。

ちょっとかわいそうな気もしますが、こんな言葉も入れておくと、さらにがんばってくれるようです。
確かに人間も、「評価に関係あるんだったらもっとがんばったのに。先に言っといてよ」ということがあります。

上記のほか、プロンプトに入れるとよい言葉として「ステップ・バイ・ステップで」もよく言われます。
一度にいろいろなことを指示すると、途中でやめてしまったり、途中を飛ばしたりすることがよくあります。これを避けるために、一つずつ会話しながら進めることで、思うような動きをしてもらいやすくなります。
ただ個人的には、丸投げしたら期待以上の結果を出してくれることもありました。
どちらも、部下に指示するときと似ていますね。

AIは人間の言葉から学んだだけに、よいところも悪いところも、人間の性質を引き継いでいるようです。

ほかの生成系AIではどうなる?

私はOpenAIの回し者ではないので、便利に使えればマイクロソフトのBingでも、GoogleのBardでも構いません。
ところが、どちらもPDFの読み込みのところでうまくいきませんでした。

まずBingに聞いてみたところ、このような塩対応。

マイクロソフトBingの画面

Bardは、堂々と間違えてくれます。

Google Bardの画面

調べてみると、「リース事業協会」のサイトに「リース統計(2023年2月)」というPDFファイルは確かにありました。数値も正確なようです。
「あ、知ってる」と早とちりしやすい人間に似てしまったのでしょうか。

おわりに

すいません! この先を続けると倍くらいの量になるので、次回に回します。
ChatGPTは指示どおり5つ出題し、私の回答を評価してくれました。
果たして私は合格できたのか、次回をお楽しみに。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。
この投稿へのご意見を下のコメント欄またはTwitter(@teritamadozo)でいただけると幸いです。
これからもおつきあいのほど、よろしくお願いいたします。

てりたま

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