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蛍と彼

とある平日の夜

あ、そうや!
ホタル見に行こうよ。

ん?今から?

うん。
見れるかな?
ホタルおるかな?

彼はワクワクしていた

地元でも見れるところはあるんだけど、私を連れて夜の町をドライブしたかったからしい

どこまで行くん?

姫路のほうやで
ヤマサキってとこ

知らんわ〜
ユメサキじゃなくて
ヤマサキ

宍粟市に
ほたるが出る里があって
キレイやから
一緒に見に行くねん

そうなん。
嬉しい!嬉しいんやけど
悲しいお知らせがある


虫めっちゃ嫌いやねん
光ってるのを遠巻きに
見るだけなら、、、

うん。
わかった 

彼とわたしは車の中で
たわいもない話をして
ふざけあって
一緒に歌を歌いながら
目的地に向かった

夜のドライブは楽しい
高速の街灯が流れてく
景色が街から山へと変わる

ホタルおるかなぁ?
彼はワクワクしながら言った


車を停めて
小川の近くに行った

真っ暗やん……


全然おらへん


彼の頭の中の映像はホタルだらけだったらしく、現実を目の前に、ちょっと悲しそうだった。

まぁ、こんなことも
ありますよね〜〜っ!
連れてきてくれて
ありがとう
わたしが
元気なかったからやろ


会えて嬉しかった


ぼくも
会いたかったし
ちょっとでも
元気でたらええなと
思ったんやけど
おらへんかったな


平日の夜に時間をかけて
ホタルを見に行ったら
1匹もいなかったことを
2人でくすくす笑った

重たい湿気とやわらかな空気、肌の汗ばみを感じながら、彼の腕に包まれた。


18年前の6月のおはなし。


#ホタルの思い出 #宍粟市#オモテタントチガウ




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