「こどものとも」初期シリーズを149冊ぜんぶじっくり読んでみた①[1〜12号]
絵本研究家/ワークショッププランナーの、てらしまちはるです。
福音館書店の「こどものとも」シリーズは、いまや誰もが知る老舗の月刊絵本シリーズですね。初めて発行されたのは1956年、そのころの一冊一冊には、貴重な試行錯誤の後がたくさん見えます。「ああ、これが現在の日本の絵本表現につながっていったんだなあ」という足跡が、たくさんあるんです。
特に、福音館書店の編集者・松居直が直接手がけた初期の149冊は、戦後日本の絵本を語る上での重要資料です。ここでは、このかたまりに焦点をあて、筆者による私的な読後メモを一冊ずつ公開します。
個人のメモではありますが、絵本を知るためのきっかけとして役立ててもらえたらうれしいです。
※凡例などの注釈は、末尾をご覧ください。
時期1:試行錯誤の幕開け
1956年4月発行の創刊号から、1957年3月発行の12号まで。
*創刊号『ビップとちょうちょう』
内容には必然性を感じられない要素が見られる。ちょうちょうさん(町長さん)という人物が最初の場面から登場するものの、物語の本筋にさほど関係しない点などが、その例だ。文章には、どの登場人物の台詞かわかりにくい部分や、改行位置の都合で読みにくくなった部分がある。裏表紙の「幼い者とともに」と題する保護者へのメッセージを読まねば、本書のテーマはいまいち不明だろう。
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