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緑が進む時間軸

暇が好きか嫌いかと聞かれたら、どっちでもない気がしてきた。
東京で会社員をしていた時は、休みの日に予定を入れずにダラダラと過ごすと、時間を無駄にしたかのようで損をした気分になっていた。じゃあ、島に来てから予定が沢山入っているのかといえば、むしろダラダラしていることの方が多い。ダラダラというよりかは、目的をもって動くことがなくなったという方が近いのかもしれない。5年も住んでいると、島内のお店のメニューはほとんど制覇してしまっているだろうし、道がある道は一度は車で走っている。「あぁ、行くとこないな」というのが、怠け者の1日の始まり。

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とはいえ、家でじっとしているのは苦手で、中途半端に外に繰り出す。
今の季節は「緑」がバッと目の中に飛び込んでくる。どこもかしこも「緑」。桜の花が散る頃くらいから、どぎつい位に視界を覆ってくる。
「あぁ緑が元気だな」と、なんのひねりもないことを考えながら車を走らせていたら、ふと今まで行ったことのない場所を見つけた。

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普段は、小学生くらいの子供達が遊ぶ、お山の教室みたいなところ。集団行動が自粛されているせいか、子供たちの気配もなく、絡まれる心配もないので入ってみる。こんな場所で遊ぶ子供は、野生化が進むんじゃないかという位に険しい道だった。でも、自分が子供の頃はこれが普通で、難なくこなしていたような。オフィスワークばかりの生活をしていると、実は猿よりも退化しているんじゃないかと、これまたしょうもないことを思ってしまった。

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山の中をなんとなくうろうろしながら、ちょっと海の方を眺めたり、誰もいないブランコに乗るか乗らないか迷ったりしていたら、ものの見事に滑ってしりもちをついた。

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そしたら、今まで緑しかないと思っていた場所に、落ち葉が敷き詰められていることに気付いた。まだ新しい落ち葉だ。触るとかりかりと音を立てる。緑しかないと思っていたところに、なにか違う時間軸で動いているものを見つけた気分になって嬉しくなった。牛のいないエサ場だけを見ると寂しい景色だけど、きっと見えないどこかには牛のいる時間が流れている。

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小さな発見で休日を満喫した気分となり、もう家に帰ろうかなと思った矢先に、「暇してたらコーヒーでも飲みませんか?」と、みかん農家からLINEが入った。相手は男だし、暇していることがバレても恥ずかしい年頃でもないので、素直に「暇だから行く!」と答えた。帰り道には、新芽も紅くなることに気付いた。気のせいか、秋の紅さよりも柔らかく見える。

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夕方少し前に、みかん農家の家に着いて、コーヒーが淹れ終わるまでの間に本を読ましてくれた。「なんで、ブラジル?」というつっこみに、みかん農家男子は生真面目に答えてくれる。聞いた内容の細かいことはもう忘れてしまったが、、。また、今度コーヒーを飲みにいった時に教えてもらおう、気が向いたら。

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(文:島食の寺子屋・受入コーディネーター 恒光)