連珠における「乾燥機のまな板理論」
乾燥機のまな板
乾燥機のまな板を置く専用の場所にまな板を置こうとすると「こっちの方がいいよ」と母親がまな板を皿を置く場所に置いた。なぜ専用の場所があるのに置かないのか聞くと「専用の場所やとまな板の真ん中らへんが乾かんやろ」と言われた。そしたら皿を置く場所に皿を置けなくなると言うと「そしたらまな板を置く場所にまな板を置けばいい」と言われた。
この会話を通して自分は連珠石さんの記事の内容を思い出した。
この記事は最新ソフトについての話で、引用した文は価値観や着手選択基準とは明らかに異なる未知の法則を解き明かそうという流れの話である。あるタイミングで変化する好悪手の正体について考察している。この実践例として連珠石さんは似た内容をツイートしている。
このツイートでも「今打たないと一生打てず」という言葉があるようにタイミングについての話をしている。連珠をある程度しているとこのタイミングに関する感覚は分かるのではないだろうか。先に三引きを入れないといけないとか、攻め続けるのではなく一旦連を止めておくとか、実感することは多々ある。
では、このような現象と乾燥機のまな板がどう関係しているのかというと、乾燥機のまな板がいい例えになると思ったからだ。まな板をどこに置くかのメリット・デメリットをまとめると以下のような表になる。
皿を置く場所が空いてるなら、専用の場所に置くより皿を置く場所に置いた方が効率がいい。けれども、皿を置く場所に置けないときは専用の場所に置く方が効率が良くなる。仮に専用の場所と皿を置く場所を盤上の地点A・地点Bとする。あるタイミングのときは地点Aよりも地点Bが優れる。しかし、条件によっては地点Bには打てなくなるので、それまで次点だった地点Aの方が優れる場合がある。
以上の「乾燥機のまな板」の例えから得られる教訓は二つある。一つは、地点Aが最も効率良くなるタイミングを考えること。もう一つは、地点Bが優れているタイミングを見逃さないことである。
このことを上記のツイートに置き換えて考えてみる。下記の盤面がツイートされた盤面だ。この盤面において、bは白18のタイミングでしか置けず、aは後からでも置ける。このときbは「乾燥機のまな板」でいう「皿を置く場所」であり、aは「専用の場所」にあたる。皿が何も置かれていないタイミングなら、まな板は皿を置く場所に置いた方がいい。それと同様に、このタイミングなら、bが置けるうちに、aではなくbに置いた方が効率がいい。
そうして白18をbに置き、黒19で連を止めながらミセ手を作られた。この瞬間、さっきまでただの剣先を止める手だったaが相手のミセ手を止めるための手に変化した。自分の手番を消費して剣先を止めたのではなく、自動的に剣先を止められる手に昇華したのだ。いつでも置ける場所だけれども、その場所が最も効率良くなるタイミングはいつになのか、どのタイミングだと一番輝くのかを意識する必要がある。
このようなタイミングに関する考察を「乾燥機のまな板理論」と題して、より突き詰めていきたい。この理論を通して棋譜に落とし込むことが出来れば、無駄のない美しい棋譜になる。もちろん、連珠の時間軸やタイミングに関しては今回の例だけではく様々なパターンがある。何か自分の中で発展があれば、その都度まとめて記録に残していきたい。
※原稿が書き終わってから気づいたが、連珠石大先生の記事で『好点のケア』がある。最初はこの記事とも関連させながら書こうとしていたが、完成してから修正するのも大変なので紹介だけでもしようと思う。
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