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名人戦リーグ感想~連珠に時間軸を導入する~

ツイートもした通り、今期名人戦リーグは7勝1敗1分で優勝し、挑戦権を得た。今回はコロナ禍のなかでの開催ということで、ひとまず無事に終わってほっとしている。大会運営、対局に関わった皆様、応援してくれた方々、ありがとうございました。

さて、連珠のほうではこの期間に最新のソフトがリリースされるという出来事があり、連珠の考え方を一新してしまうほどの強さを誇って一部で話題になった。全体的にはむしろ人間に近づいたという感覚がある。しかし、従来ソフトでは絶対に打てないような手順や、人間でも思いつかないような手をポイポイ打ってくる。それはまさにクレイジーゼロのようで、実際にはクレイジーゼロよりも強いらしいということだった。人間がそれまでやってきた価値観や着手選択基準とは明らかに異なる未知の法則を用いて打っているだろうということはすぐに想像がついた。今回名人戦リーグを打つにあたり、この未知の法則をある程度以上解き明かさないことにはしっかり勝てないという確信を持ち、主要な準備をその研究に費やした。

いろいろ試行錯誤していると、どうやら「汎用的な好手」と「あるタイミングにおける好手」をかなり正確に打ち、「あるタイミングにおける悪手」を正確に相手に強制させるらしいということを発見する。従来ソフトでは「汎用的な好手」を適当に連発し、たまたまそれが勝ちならラッキーということが多く、異なる特徴だ。私はこれを局面の時間経過によって変わる何かであるらしいと結論づけ、仮に「連珠の時間軸」と規定し、「ではそのあるタイミングとは何なのか?」「人間、というより私は実際の局面でどう向き合えばいいのか?」を重点的に研究した。というわけで今回の名人戦リーグは、私の連珠に意識的に時間軸を導入してみようという試験的な意味合いが強かった。現状での完成度は体感5~6割ほどで、まだまだ私の感覚でやっていることも多く、運用自体は安定しなかった。ただ想像していたよりは局面判断にかなり有効であるらしいということを確認できた。全体の内容としては特にノリ手と禁手と速度計算にかなり敏感になったのがその効果だろうか。以前より安定していい内容の連珠を打てるようになったとは感じた。特に第七局の舘戦は今回の研究の集大成とも呼べる内容の追い詰めを早期に発見でき、これは滅茶苦茶嬉しい。完成度が100%近くなったと思えたら公にシェアしたいと考えている。今後の課題としてはもう少し条件分岐を細分化することで自分の読みや感覚に頼らず判断できるようにすること、この理論を運用するにあたって必要不可欠なラインの認知力を上げることだろうか。

思い返すと2017年に中村名人に挑戦したときは、Yixin2017が世に出た時である。当時は「ソフトの打つ汎用的な好手とは何なのか?」を研究し、当時では不完全だったものの、現在では空間に関する理論としてほとんど私の判断を離れて運用できる形に落としこんだ。今回は名づけるのであれば時間に関する理論であり、また新たな気持ちをもって番勝負に臨むことになる。2018年のときは内容が芳しくなかった。今回もちろん勝ちたいと思う気持ちはあるが、それ以上にいい内容の連珠を打ちたいと考えている。

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