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藤井風、日産スタジアムでの奇跡

夏の終わりに、藤井風のライブをみた。新横浜から少し歩いた場所に、たくさんの人だかりが見えて、ここが会場だとすぐにわかった。
熱気を喜び、調和に溢れた雰囲気は、藤井風が創り出す独特の音楽に通ずるポジティブなオーラに包まれていたようだ。
アリーナのきゅうり、と名付けられたエリアから、僕は藤井風のライブを初めで体験した。
自慢じゃないが、内外の数えきれないほどのライブを、これまで見てきた。
その中でも、藤井風のライブは僕にとって異質の雰囲気をもつものだった。
藤井風はシンガーソングライターである。つまり、音楽家だ。しかし、彼のライブは、音楽と演奏、そしてパフォーマンスを見せる従来のものとは違う、なにか儀式のような雰囲気があるのだ。
日産スタジアムの音は、決して良いとは言えない。あの広さと設計では音楽の細かい機微など聴かせることは不可能である。それはわかっていたが、藤井風が歌いだすと、会場はまるで、彼のメッセージを受信するかのように、音響という概念など飛び越えた、不思議な雰囲気に満ちていたのだ。
言っておくが僕は藤井風のファンはない。好きな曲はあるが、熱心に追いかけてはいない。とんでもない才能の持ち主、という認識以外、それ以上の感情はもっていない。しかし、会場にあの溢れる温かさに、圧倒された。
藤井風は音楽家ではあるが、きっと人間にとって大切やメッセージを伝える表現者なのだろう。鍵盤は媒介する為のツールであり、歌は彼の言葉を広めるためにあるのだ。
まだアーティストとして完成には程遠い藤井風が、この先、表現者としてどんな奇跡を見せてくれるのか、楽しみで仕方なくなった。

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