戦争 ”あらゆる犠牲”(五話)
東京大空襲。
私の大叔母は、それを経験しました。
爆発音、断末魔、そして、死臭。
その真っ只中を、彼女は走りました。
後ろを振り返る余裕など、無い。
大人の叫び声に反応する余裕も、無い。
泣き叫ぶ子供を助ける余裕も、無い。
自らの命を、優先しなければならない。
爆弾が直撃して、一瞬にして亡くなった方。
火炎に巻き込まれ、声にならぬ助けを叫びながら亡くなった方。
煙に包囲され、息のできない苦しみの中で亡くなった方。
何もかもを、後ろに置き去って、走りました。
彼女を責めることは、できません。
しかし、彼女は今でも、自分を責めています。
死ぬまで、自分を責め続ける。
私は、そう思っています。
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