YouTubeのライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第162回『アイシャドウ 自衛官 地上』

YouTubeで行った
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第162回『アイシャドウ 自衛官 地上』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題は太字にしてます。
所要時間は約47分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓

↓使用させていただいたサイト↓
ランダム単語ガチャ
https://tango-gacha.com/

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「お前ら、アイシャドウはもう塗ったな?」
藤堂上官が言った。
部隊の自衛官たちはいっせいに互いを見合わせ、各々の目元にしっかりとアイシャドウが引かれているのを確認すると、「アイシャドウよし!」と、腹筋から張り出すような声が次々と湧き起こった。
藤堂上官は隊員を見回し、うなずいた。
こんな薄暗くて揺れている中じゃ、本当に塗られているか藤堂上官には確認できないんじゃないか。
隊員の一人であり、部隊の中で最も若い今田は思った。
窓から昼の光が差し込んでいるとはいえ、73式のトラックの中は明るいとは程遠く、藤堂上官には近くの隊員のならとにかく、全員の目元を確認するのは困難だっただろう。
しかし、藤堂上官の考えは違った。
彼は上官として隊員たちと、目と目を見合わせる必要があったのである。
何せこれから始まるのは訓練ではない。
本物の戦闘である。
それも地上戦だ。
犠牲は少なくないだろう。
一瞬の油断が死につながる世界である。
そして藤堂上官には作戦を成功させ、かつ、一人でも多くの隊員を無事に家に帰す義務があった。
だから今まで心を鬼にして、厳しい訓練を課してきた。
規律を守らない隊員には、厳しい罰則を科した。
それもこれも生き延びるためである。
そしてアイシャドウもまたその一つである。
これはもちろんおしゃれのためのものではない。
米軍が開発した最新の歩兵装備であり、これを塗ると目の付近での光の乱反射が減り、まぶしさが軽減するというのだ。
戦場で目をつぶることは作戦行動に支障をきたし、場合によっては死に直結する。

窓から見える真っ赤な夕焼けには目もくれず、今田は虚脱状態だった。
「大丈夫か。」
藤堂上官がトラックの揺れに任せている今田に水筒を差し出すと、彼はむさぼるように飲んだ。
「お前たちの活躍のおかげで作戦は成功だ。おまけに死者・重傷者もゼロ。俺はお前たちを誇りに思っているぞ。」
他の隊員たちも藤堂上官のその言葉を聞いて、ほほ笑みを浮かべた。
今田の脳裏には今までの様々なことがよぎった。
「いえ、この戦果は我々のものではありません……。これもひとえに、自分たちを訓練してくれた藤堂上官のおかげです……。」
今田の声はかすれていた。
しかしその言葉はどんな水よりも隊員たちの心を潤わせた。
それは藤堂上官にも同じだった。
藤堂上官は今田の首に腕を回した。
「ひとえにって、ばかやろう。お前のまぶたは二重だぜ。」

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~感想~
別のオチで書き進めていたのですが、ひとえにという表現が途中で出てきて、一重瞼のダジャレで終わらせる内容に変更しました。
おかげでお題である地上の使い道がなくなってしまい、しかたなく市街戦だったのを地上戦に変更しました。

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