見出し画像

その指導、本当にそうですか?と思うこと

バレーボールのコーチ・・・特に中学生の指導に携わってきました。それだけでなく、おかげさまで、小学生、高校生、大学生・・・いろんなカテゴリの指導者の方々と、交流させてもらう機会がありました。
指導の考え方や、方法などには、意見が分かれるものもたくさんあり、そういったものは、一方が一方の考えを批判とか否定するのではなく、それぞれが、思うようにやってみればいいのだと思います。
ある程度長期間の運動の積み重ねによって、その議論の問題は、大した問題ではないことも多いように感じます。ただ、長期間やって見た時に、故障を生むことだけは避けなければなりません。
しかし、その故障も、偶発性のアクシデントによるものなのか、オーバーワーク、疲労によるものなのか、フォームなどの欠陥によるものなのか、筋力や柔軟性などフィジカル面によるものなのか・・・。しっかり見極めなければならないと思います。

ぱっと見て、これでは故障を生むからフォームを変えなさい・・・。
ただ、特にバレー経験や運動経験自体が少ない中学生の場合、ぎこちない動きをする子どもはたくさんいるわけで、選手の思考錯誤の機会を奪ってまで、「強制」的に矯正するのがいいいものかどうか。いずれにしても、しっかりと指導者側が、根拠、論拠のある眼を持たねばならないと感じています。

自分が指導されたこと、聞いてきたきたことを見直す

オーバーパスの指導の導入では、
例えば、手でつくられる三角形、腕でつくられる三角形をつくって・・・
と聞くことがありますが、どうでしょうか?別に三角形でなくてもと思う人だっていると思います。
特に腕の場合、肘の曲げ伸ばしによってボールを飛ばすのは、優先順位としては最初ではないように思えます。実際の中級上級者のパス・トスを見ても、明らかです。
ルール上、ボールを持ってはいけないことになっているのに、ビギナーにはボールのキャッチ&リリースを反復して手首の柔らかさがハンドリングとするせいで、キャッチ癖のついた小中学生が量産されています。

セッターのステップは、足は右からか左からか・・・その違いによって、どの程度プレーの精度に差が出るのでしょうか?右軸か左軸か、どちらか一方に矯正される必要があるのでしょうか?

ディグの時の構えや腕の面の角度は・・・。よくハンズアップより中段・・・ハンズミドルで構え、オーバーレシーブと、アンダーとどちらにも対応できるように、面が視界に入ってし、ボール処理がしやすいように・・・それって本当でしょうか?
オーバーカットへの速度の違いを調べたのでしょうか?運動感覚の話を知っているのでしょうか?

インタイムをしない走り抜けのランニングレシーブの練習や、コート内をかけずり回るスリーメンの練習には、どのような考えを持ってやっているのでしょうか?

ただただ、強豪校の指導者がやっているからとか、何とか先生から教わったからだけではなく、しっかりと自分なりに検証することも求められる時代なのだと思います。

「スモールステップ」の練習過程においても、何でもかんでも細分化すればいいかと思う時があります。
セッターでは、例えば、指の形とか手の形、足の運びの一歩など、本当にさまざまなアドバイスを見てきました。
ただ私個人的にストンとこないのは、例えば、「セッターの○○選手の指や手の形はそうなっているから、こうだ」といった説明です。
セッターに限らず、スパイクもレセプションも何でもそうですが、トップレベルの選手といえども、いろんな個性があります。細かいこと言えば、筋力や柔軟性、競技経験などのバックグラウンドなど様々違うので、スタイルにも微妙な違いがあると思います。
私は、セッターの手や指はその範疇にあるのではないかと思います。

逆に大事になってくるのは、個々に共通した、プレーの基本というものにつながる、外せないポイントを、どのように見つけるかです。
これは、指導マニュアルの作成、もっと言えば、ナショナルチームを頂点にした一貫指導において、
必要になってくるものだと思っています。

例えば、セッターで言えば、どんなものがあるのでしょうか。まずは

◇落下地点への入り 
は手や指の形の指導以上に重要だと思います。
これは、その後のトスのボールコントールや制御に大きな影響を持つだけでなく、
スパイカーにとっても、しかける起点・基準としても重要です。

◇セット時の姿勢 
これも、ハンドリングとトスのボールの軌道に大きな影響を与えると思います。
特に51のように、アンテナ付近にボールを伸ばし、
かつアタッカーの最高打点を生み出すようなボールを出すためには、
絶対必要だと考えます。

レセプションやディグにおける「正面」指導にも自分は疑問を感じます。
「正面で取れ」って何でしょうか?身の回りではおおよそ、「へその前」でボールを捉えるべし、という指導がなされていることが多いです。でもそれが第一優先事項でしょうか?
結果、そう指導されている子どもたちは、言われたとおりに指示を守って「正面」でボールをとらえようとします。そうすると、ボールが自分の左右前後に揺さぶられた際、子どもは最後の最後までボールを追います。ボールを追うため落下点にいたる最後まで動きが静止することがありません。いわゆる、とらえる「間」がない状態になります。
実際のプレーやいいプレーヤーのプレーを見ていても、へそ前以外でボールをとらえることなんていくらでもあります。ですから、「へそ前正面」はそれ自体は悪いことではありませんが、へそ前以外ではダメということにもならないということです。
この「へそ前正面」を正面としちゃうがゆえにどんなスモールステップが起こるか。
ボールの落下点に合わせてボールを股の間にくぐしたり、両手に板みたいな器具をつけて当てさせたり、へそ前でキャッチさせたり・・・
こういった練習は、へそ前に合わせる練習にはなりますが、ボールの落下点で「間」をつくることにはならないどころか、その「間」の感覚を奪ってしまうことになるのです。だからみんなレセプションが苦手になっちゃうのだと思います。

見直すべきものは技術だけではない

ちょっと話は変わりますが、特に日本では、ファーストコンタクトの精度アップ、つまり「Aパス」の追究がなされてきましたが、逆に、セッターの普遍的な必要十分条件を満たすような指導だとか、重点化がなされてきたのだろうかと思います。
仮に、Aパスではなくても、これらポイントを基本とすることで、むしろ、バックアタックをしかける現代のテンポの概念が生み出されるのだと思います。
セッターについてはその他にもいろいろあろうかと思いますが。
指導やプレーの分析にいて、枝葉の見極めやスモールステップのし過ぎによって、本質を見失ってしまうこともたくさんあると思います。

(2012年)