見出し画像

ブロックは練習できているのか?

大事なのに疎かになりやすいブロック練習

「ブロック」を考えています。

 私自身、指導現場にいたると、どうしてもスキルアップの面で言えば、パスやトス、ディグやレセプション、そしてスパイクのプレー精度を上げることが、重要課題となっていて、ブロックやセッターにプラクティスについては、後回しになる傾向が強いように思われてなりません。大会というものにスケジュールが追われる中、そんな過程になってしまってきたのかなと思います。

 しかし、セッターを全員に練習させることや、身長の高低に関わらず全員がブロックのスキルを磨くことはとても大切だと最近特に感じます。ブロックやセッターというのは、時間がかかりますし、成果や習得の過程が見えにくいように感じます。それが影響し、自身も周囲も、そこにあまり時間を割いていないことによる、過程の不透明さが大きく影響しています。ブロックもセッター練習も、他のスキルと同様に、またはそれ以上に、練習の成果が出るものです。

 またブロックやセッターについては、カテゴリやプレーレベルが上がるほど、チームレベルに大きく左右するファクターだと思います。底辺を預かる時、どうしてもそこまでの余裕がないかもしれませんが、いつどのような素材と出会うかわからない、その時のためにも、しっかり分析はしておくべきだと思います。

ブロックの練習を大事にしよう

よく言われる、ブロックのテーマとしては、

◇ 相手のスパイクをシャットアウトすること
◇ 相手スパイクのコースを限定すること
◇ 自チームのフロアディフェンスシフトの基準となること
◇ 相手のスパイクに対し、ワンタッチをとってトランジションにもっていくこと
◇ 相手スパイカーに心理的な負荷をかけミスを誘うこと
◇ ダイレクト・ボールを制するなどネット上のボールを逃さない

などがあります。
個人や連携に対するスキルアップの留意点としては、

・横の動きが対応できるスムーズかつスピーディな移動
・高さを生かすジャンプ
・ボールを抑え込める空中姿勢
・吸い込みやブロックアウト防止
・コースを的確におさえる手の出し
・マークの配置やブロックジャンプ時の位置取り

・・・などたくさんポイントがあるかと思います。

しかし従来の日本では、例えば「ブロック時のwaterfall-ball(吸い込み)」を防ぐためには、構えからネットに身体を正対させ、そのままサイドステップでブロックジャンプまで行くという指導が長年なされてきました。
これでは、ブロックの異動スピードも上がらず、ジャンプの高さも制限されてしまいます。
 また、これ以外にも従来の指導では見落とされてきたものが多々あります。
◇リードブロックの土台となるアイ・ワーク
◇シー&リアクトスキル(シー&レスポンス)
◇ブロックジャンプのタイミングをとる
◇ブロックジャンプ後のスパイクコース判断
◇ブロックへのボールヒットのタイミングをアジャストする


どれもなかなか外から形としては見えにくいものですが、姿勢や形だというものよりもずっと大事な要素になります。いくら言われた通りの動きや姿勢ができても、上記に挙げた内容ができていなければ、決してブロックは機能することはありません。
この、認知や思考判断をともなう要素のトレーニングは、日々の練習の中で地道に継続していかないと実を結びません。

ブロック戦術に万能なものはない

ブロックは、
「全部止めようとすると、全部止まらなくなる。」という側面が、個の思考判断をもとにして行う組織において発生してきます。
 ですから、マークの仕方や配置、反応の方法が大事だと思います。ゾーンかマンツーマンか。リードかコミットか・・・最近では、バンチとかデディケートとかというシフトの名も言われていますが、それはゾーンブロックにおける分担の結果であって、その配置は微妙な変化を無数にみせるものだと思っています。

 また、しっかり跳べたとしても、個人の技能が未熟だと、まったく効果を持たない、逆に、ブロックは、その正面にまともに打ちつけたら、確実にシャットアウトになる壁となる・・・という域に近づかないと、戦術的に分析することは難しいと思います。

さて、どうしても 「常識」 という名のもとで、基本というものを見直すことができると同時に、見失うものもあるのかと思っています。

・着地の足はどうなのか
・リードかコミットか
・ブロックステップやジャンプの腕の振りはどうか

こういったものへの意見はたくさんあると思います。不思議なことに、どうしても、「どれがいいか」 とか 「唯一採用論」 が強いのは日本の指導現場だけでしょうか。

「バンチ・リード」といのがもてはやされると、どんな相手でもどんな局面でも、それ一変通りになる。
何だか絶対的なツールを求めがちです。でも、ブロックは理想は、スパイクの場所がはやく察知でき、そこに2~3枚の壁がしっかり飛べればいいわけです。「必殺バンチ・リード」ではないのです。

もっと場面場面、状況によって柔軟に対応させてもいいと思います。むしろ、それを教え訓練し、判断・対応させていくことが、スキルアップ、戦術なのだろうと思います。

かつて、クイック攻撃が生み出されました。
当然対抗策として、コミット的なブロックが出はじめ、今度はそれを欺くための、時間差攻撃や横位置差の攻撃が出てきます。そして、リードブロックが注目されていきます。ともすると、コミット禁止令みたいに誤解されることもあったようです。バックアタックが普通の技術となってくると、ブロックマークの選択の幅が増えるため、反応だけでなく、ブロックの配置にも考察が加えられてきました。
2000年代のブラジルバレーに代表される攻撃に対し、またブロック戦術の再構築が求められてきて、世界の勢力図が混沌としていています。

何がいいのではなく、様々な選択肢の中で、お互いがせめぎ合いを行う、そこにあるかけ引きが、ゲームなのだと思います。

また、指導では、その先の「当たり前」も意識しておかねばなりません。

空中では手が動く、
ブロッカーの横の連携、コミュニケ―ションの存在、
逆を突かれた時の動き、
オフブロッカーのしつこいカバーリング
アウトサイドブロッカーの積極的なブロック関与

こういったことも、練習の当たり前になればいいなと思っています。

「ネット上を制すれば、ゲームを制する」・・・

海外ではこう言われることもあるそうです。
ブロックも練習した分だけ、成果が出やすいものだと思います。とくに低身長なチームや経験の浅い選手が多いと、後回しになりがちですが、みんなで考えたいテーマのひとつです。
蛇足になりますが、あの有名な歌の歌詞には、なぜか「ブロック」が登場しないんですよね。(笑)
(レシーブ、トス、スパイク~♪)

(2012年)