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バレー男子日本代表にますます頑張ってほしいです

 バレーボールのワールドカップ2015が終わり、今ラグビーのワールドカップの話題で盛り上がっています。ラグビー日本代表は、格上の世界ランク3位の南アフリカを破って世界中を驚かせました。何せワールドカップで勝っていなかったのだから、その驚きは大変なものです。一方男子バレーは、あまり話題になっていないようですが、男子バレーも20年以上世界の中で低迷を続けています。ところが今の男子バレー日本代表の戦いを見ると、これまでにはない期待感をもたざるを得ない楽しみがあると個人的に思っています。

石川選手や柳田選手、出来田選手たちなど、楽しみな次世代の選手たちは今大会何をもたらしたのでしょうか?
これまで、世界のバレーに大きく溝をあけられてきました。しかし、今回は勝った試合のみならず、勝てなかった試合でも今後の期待が高まる内容が多かったように思います。

これまで、いや今大会の中継の中でさえ、海外勢の強さを「高さとパワー」と評し、日本はその前に力が及ばない・・・ということをずっと言ってきました。ところが、今回活躍した石川選手は191㎝、柳田選手にいたっては186㎝、出来田選手の200㎝だって珍しくはない身長です。にもかかわらず、今回の男子バレー日本代表が、何かを期待させられるいい戦いができたのはなぜでしょうか?

まず先に言えることは、長年言い訳のように評してきた「高さとパワー」で勝てなかったのではないということは間違いないと思います。

石川選手や柳田選手は、積極果敢に強力なジャンプサーブを叩きこんでいました。バックアタックもかなりチームの得点源になっています。出来田選手はブロックはもちろん、自分の打点を最大に生かしたフルスイングのクイックの破壊力はこれからも楽しみです。

昔は、「サーブミスで負けた」という評価がテッパンのようになされ、勝負どころではミスを避けたサーブが珍しくありませんでした。バックアタックも、かつてはあたかも攻撃専門の人がやるものという認識があったり、前衛のアタッカーが使えない時の緊急回避手段のようになされてきました。
しかし、現代バレーではそれはことごとく間違いであるということを、若い世代の選手たちは示してくれているのではないでしょうか?
まずは、サーブはガンガン攻めるもの、攻めてくるもの。したがって自動的にセッターが待つ位置に正確に返球するAパスとよばれるものには、幅がでてくる。そうなるとバックアタックはおろか、クイックでさえ、ニアネットでやるだけじゃなく、ネットからやや離れたところからでも叩き込んでくる。さらには、20点以降の勝負どころでも、ポイントゲットの有効手段として使ってくる。
そういった世界の傾向を把握すれば、必然的にセッターのセット(トス)はどんな性質がいいのか、ファーストタッチ(パス・レシーブ)の返球はどのようなコンセプトがいいのか、ブロックの対応や組織化はどのようにすればいいのか、・・・いろいろ変わってくるのだと思います。

今回のFIVBワールドカップの男子バレー日本代表の戦いに、新しい期待感をもった人は多くいるのだと思います。
 
 しかしながら、戦っている選手やスタッフだけじゃなく、見ている私たちも、幅広い視野で見ていくことが必要だと思います。新しい世代の選手の活躍は注目大です。しかし石川選手や柳田選手、出来田選手など特定の個人に、日本代表の躍進を背負わせてはいけないと思います。そのことで選手の将来性を狭めてはなりません。
特定の個人のすごさ以上に、チームとしてどう戦うことが必要なのか・・・戦術や組織論は、世界に対してどうあるべきか?それを考えるためには、世界のバレーの今の性質をあらいださねばなりません。

 サーブ&ブロック戦術・・・ハードヒットできるサーブと、相手スパイカーの助走経路を分断するコントロールショット、どちらかをしっかり理解してサーブはなされないと、今のより攻撃枚数を増やしてブロックの選択判断を分断しようとする世界のバレーには対処できません。だからサーブミスを敗因としたり、サーブミスにため息をつくようではまだまだです。ブロックは、相手攻撃の数的優位、つまりブロックは3人に対し、4人、5人と攻撃をしてくるものに最低2枚はつきたいことを考えると、どのような対処が必要なのか?そのひとつがリードブロックにあるわけです。
リードブロックでは、ボールの動きを起点に人間が動きます。ですからブロック3人だけではなく、うしろのフロアディフェンスも同様に連動することが可能であり、その方がより意図的戦略的に守備をすることができます。
前衛のスパイクだろうが、バックアタックだろうが、クイックだろうが・・・スパイクは、最高打点でフルスイングできる状況づくりができるかどうか。これによって、セット終盤でも積極的にクイックなどの中央攻撃をしかけ、相手に最後まで心理的負荷を与えることができるわけです。
こういったバレーの「基本」として「標準化」されている外国のチームの戦い方に、若い世代が貪欲に取り組んだ成果、近づいているということが言えるのかもしれません。あとはそれが個人の試作ではなく、全体の共有につながるか。これがこれからの課題だと思います。

同じ時期に、ラグビーの日本代表の活躍が話題になっています。
個人的には、ここからは選手の変革では、何といっても「意識改革」。
それでそれ以上に話題にしなきゃいけないのは、「体制」「組織」「サポート」だと思います。
世界のトップを知る外国人指導者はやはり必要です(日本人にいなければ)。その際は、彼らが最大限やりたいことをやれる環境作り、理想を体現できるサポートが必須です。呼ぶだけ呼んで、あとは丸投げではうまくいかないわけです。
ですから、日本の男子バレーも、ただ単に若い選手に期待を寄せるだけではいけません。そういった部分に対する声も上げていかなければなりませんね。あとは、毎回残念に思うのは、大会の総括です。日本代表の成果は何か?課題は何か?そして世界はどういった点で優れているのか?日本はそれと比較して、明日から何をしなければいけないのか。そういったものをしっかりやってもらいたいです。
オリンピックは来年です。のんびりしていられないと思います。

(2015年)