ラリーを制する見どころ~何を詰めるか?何が詰められているか?
バレーボールの試合を見る面白さや醍醐味にはいろいろありますね。きっと、両チームの攻防の中で1点をもぎ取った時の喜びや、決まりそうで決まらない粘りの応酬によるドキドキ感、さまざまなファインプレー・・・そういったものにエキサイトすることも多いでしょう。
そんなハラハラ、ドキドキ、ワクワクするすごいプレーやラリーはどうやって生み出されているのか?・・・もう少しだけ詳しく考えていくと、視点のひとつに、そのワンプレーのすごさに対しての注目だけではなく、「思惑」とか「かけひき」、「ねらい」や「思考判断」など、ともすると外からは見えにくい、プレーとプレー、ボールの状態が示す因果関係やシナリオに注目するとさらに見る側も面白くなるのではないか?ということです。
バレーボールって、当たり前ですが、ネットを挟んで対戦相手がラリーの応酬、攻守の応酬を繰り広げていきます。そこで、そんなラリーを見ていると、どちらかが「優勢」になっていることがお分かりになると思います。例えば、片方が十分な状態から攻め続け、他方は防戦になり、ボールを落とさないまたは相手に返すことで精一杯な場面があります。こうやって、ラリーが続く中でミスが出たり、ブロックでシャットされたりすると、個人のプレー以上に、それまでのラリーの中で起こったいろんな「負荷」が作用していると考えることができます。
迫力十分に攻めるのもひとつですが、コントロールサーブや、軟打アタックであっても、次第に相手の陣形やシステムが狂い、その後に相手のミスが発生したり、ブロックでしとめたり、またはここぞという時に最高の攻撃を繰り出す・・・。そういった「展開」というのは、意識的によく観ておかないと見逃しがちになるのではないでしょうか?ただ個人ががんばった以外の部分を読み解くことって大事なのだと思います。だからそういった部分への「解説」というのは重要なんだと思います。
ラリーの中で決まった、この強烈な一撃、または見事なブロックのシャットアウトに至るまでに、どんな布石や駆け引きがあったのか・・・。中には、駆け引きよりも個対個の打ち合いというものも少なくはないですが、長いラリーの中では、ある意味、優勢と劣勢の分岐点みたいな瞬間もあるだろうし、布石となるような細かいプレーもあるでしょう。詰将棋のように、手を打ち合い、片方が手詰まりになって相手の術中にはまってしまうことだってあると思います。
バレーボールの面白さは、「粘り」や「力の真剣勝負」も醍醐味がありますが、それぞれのプレーの意味づけや、効果、詰め方・・・そういった部分を見ていくと、より面白いし、プレーヤーや指導者にはいい訓練になると思います。
こういう視点は、「データの活用」にも影響が広がると思います。
単に、Aパス返球率やサーブミス本数、被シャット本数というのは、選手個人のひとつのパフォーマンスの結果になると思います。しかし、その数字を出しているラリーが仮に長ければ長いほど、いろんな要因が絡んでいるだろうし、影響がおよんでいるのではないでしょうか?
個人的には、バレーボールのラリーでは、
いかに相手の陣形やシステムを崩し、こちらを整えていくかの攻防、
シンプルに守るようにし、多彩に攻めることができるようにする、
相手の手数を減らし、こちらの手数を確保する。
相手のシステムの変更ができないよう追い込み、こちらは変更の余地を残す。
こういったことって、勝負に大きな影響をおよぼすものだと思います。
そういうことにもっと焦点がいくといいのではないかなと思います。
攻撃を決めさせてしまうブロック、攻撃を決めさせてもらえないブロック
セッターが繰り出すセット(トス)のボールのスピードが高速、
または、セッターの手からボールが離れ、スパイカーがヒットするまでの時間が短い・・・
これらは、確かに、見た目では追いかけにくい部分もあると思います。
しかし、見た目からでは・・・ですから、観客だけじゃなくて、相手ブロッカーにとっても目で追いにくい。そしてそれだけじゃなく、味方のスパイカーにとっても同じなわけです。スパイカーにとってもじっくりは見れるものでは決してありません。
セッターがセットしてから、スパイカーの手によってヒットされるまでの間に、いくばくかの時間があるのに、ブロックがノーマークになる、ブロックが跳べないのはなぜでしょうか?もちろん高速トスではありません。
そこには、相手ブロッカーとの、「判断のかけひき」、「思考のかけひき」があるからです。
意表を突く、裏をかく、判断を遅らせる、迷わせる・・・そういったことが、話題としてたくさん出るような試合観戦や、実践現場であったらいいなと思います。
特に現代のバレーボールのブロックのスタンダードトレンドは、「リードブロック」です。下の映像は、ちょっと古いものですが、リードブロックというものに対して、相対的に攻撃側が繰り出すスパイクのほうが「はやくなっている」と言えます。
ボールの球速も速いわけですが、それ以上にアメリカのブロックの反応が遅れている状況になっています。
話題がブロックに逸れてしまいましたが、ネットを挟んだ攻防、ラリーの応酬がなされるバレーボールにおいては、「ブロック」がどのような機能、どのような効果、どのような影響を、そのラリーやポイントに関与しているか、そしてラリー中における両チームの優勢・劣勢のターンオ-バーがどこで発生したのかなどを見る大事な視点になってくるはずです。
(2015年)