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思考を「つなぐ」もの

勉強で成績を上げたいとか、仕事で成果を出したいとか、バレーボールがうまくなりたいとか、チームを勝たせたいとか・・・いろいろなものを考えるときに、私たちは、様々な可能性や要素を分析したりします。

「心・技・体」、「知・徳・体」、「知・情・意」
そういったくくりもあります。
「メンタル・テクニカル・フィジカル・メディカル」
という、分析の眼もあると思います。
「オフェンス・ディフェンス」というくくり方もあります。

バレーボールでは、
サーブ、レセプション、セット、スパイク、ブロック、ディグ、スパイク・・・
などなどをチェックしながら練習を考えたりします。
そこでどうでしょう?
ともすると、私たちは「点と点」による分析や行動はよくします。
メンタルが弱いから、メンタルトレーニング的なものを、
サーブミスが多いから、サーブ練習を、
スパイクの威力がないから、筋力トレーニングを・・・
などといった具合にです。

最近、もっと取り入れた方がいいのは、個々の「点」に対する手当てだけではいけないだろうということです。
「心・技・体」でいえば、例えば、「心と技」とか「技と体」などといったくくりで考えてみるのです。
同じように、
「サーブとブロック」、「ブロックとディグ」、「ブロックとスパイク」というようにくくって考えます。
そうすることだけでも、従来の指導現場の常識や、指導観は大きく変わってくると思います。
ここで言及しておきたいのは、
いわゆる「複合練習」というものを、取り入れればよいという話ではなく、分析や視点を、関連付けたり、関係性をもって考えたり、見ようということです。そうすると、指導する側もかんり広い視野で、ストレスが軽減された中で、指導ができ、いわゆる指導の幅がでてくるんじゃないかと思います。

ともすると、どうしても「点」での指導や対策になりがちです。
ですが、物事、何事にも因果関係や関連性があるわけです。

個人のスキルは、たった一日や二日で眼に見えるような劇的な変化はとても難しいことです。しかし、心持ちや視点が変わることはできるだろうなと思います。
例えば、サーブとブロックの関連性・・・特に、サーバーの意図やサーブの効果を、味方ブロッカーが把握して、対応する、そういった習慣づけが挙げられます。
サーブは、「相手を崩す」と言って終わるのではなく、その先をどうシナリオ化していくか。
サービスエースに近いものを狙うのか、
相手の攻撃を限定してブロックする展開に近づけるのか、
そういった意図を持つことも大事です。
後者の場合は、「相手を崩す」というよりも、
「相手の攻撃を遮断する」 とか「相手スパイカーの動線を断つ」
という表現で考えることもいいと思います。

フロアディフェンスにおいては、特定の位置やポジションの弱いところが現れることがあります。
第一に、その特定の部分を何とかしようと考えます。選手個人のスキル・・・または思考や判断が適正かどうか。そして修正や反復練習を加えると思います。
しかし、それだけではなく、例えばライト側のディフェンスのディグに不安定な要素がある時、実はバックレフトの選手の位置取りや判断の曖昧さが影響することもあり得ます。
そこから糸でつながるようにして、ライト側の位置取りや守備範囲の把握が微妙に狂うことで生じる、守りの不安定さも出ると思います。
同様に、逆にオフ・ブロッカーの位置が、シフト全体に与える影響も大きいです。
ですからこのあたりは、何となくではなくしっかりとしたミーティングによる共有は大事だと思います。

とにかく、ミクロな気づきと、マクロな気づき・・・
両方ともその感性は研ぎ澄ましていきたいなと思います。

二つ目に「点」での思考からからより視野を広げたいと思うことに、時間軸での考え方です。
今のカテゴリや一年スパンを「点」とするならば、そうではなく、より先を見据えたり、個々の指導ポイントの行き着く将来性を見据えての指導というのも、必要になってくるんだと思います。
目の前にいる選手のカテゴリだけではなく、それまでに至る過程となる発達段階としての前のカテゴリのディベロップメントへの理解が必要です。
そして、もっと大事なのは、次のステップ、その先のカテゴリで求められる資質を理解し、今のコーチングに「余白」を残しておくことです。

三つ目には、プレーや運動にはやっぱり「ダイナミック」さというのは大事にしたいということです。
それは、プレーの質もそうですし、練習の組み立てについてもです。
ともするとバレーの基本スキルは難しいという思いから、練習の段階を細かく慎重に一段一段進めることが少なくないです。
ですが、必ずしもそれがすべてではないということがあります。
むしろ、慎重に少しずつ行うことで、本来個々のプレーが生み出す「ダイナミック」な動きというものが、出しにくくなってしまうことや、結果的に大きなタイムロスを生んでしまうことがあるんだと思っています。
「思いっきり打つ」、「とにかくボールを床に落とさない」・・・こういった部分で「思い切りを確保」し、プレーやゲーム、練習の視点として、時々原点に帰るような気持ちで、分析にフィードバックしてみるといいと思います。そうすることで、何かこだわり過ぎていた部分や、不必要な無駄とか、消極性を生み出す原因とか・・・そういったことも見つかってくることがあると思います。

とにかく、指導者として一人で悶々と苦悩せず、いろんな人と議論や交流をしていきたいものです。

(2013年)