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子どもたちとバレーボールの出会い

初心忘れるべからず

・何事においても、始めた頃の謙虚で真剣な気持ちを持ち続けていかねばならない

・なにかを始めたときの下手だった記憶や、そのときに味わったくやしい気持ちや恥ずかしさ、そこから今にいたるまでのたくさんの努力を忘れてはいけない

というような意味の解釈があったりするようですが、とにもかくにも、大事なのは、やり始めやビギナー段階でのモチベーションであるということなんだと思います。

「やってみよう」を妨げている大人たち

初心者、ビギナーという状態や過程と言うのは誰もが通る道。

その道の途中には、たくさんの失敗経験や挫折があって当然。

それでも頑張れるモチベーションの維持が大事ですよね。
初心者の「やってみよう」を妨げているのは大人であることが多い
ということは間違いではないようです。

バレーボールは素晴らしいスポーツ。
私もその何らかの魅力にとりつかれている一人です。
見る人にとっても、プレーする人にとっても、
コーチやレフリーなどをする人にとっても、魅力あるスポーツです。

 ですから、そんな自分たちが大事に思うバレーボールが、これから先も発展を続けてほしい。みんなでバレーボールで盛り上がりたい、楽しみたい。そう願っているのは間違いないはずです。

 大人たちは、今愛しているバレーボールでも、自分の過去の努力や苦労を思い出し、あたかもそれが避けては通れない道であるかのように、子供たちにその経験を求めようとします。だから、執拗に怒ったりハードワークを課すのかもしれません。

しかし一方で、バレーボールは、憧れるバレーボールができるようになるまで、いろんなスキル、しかも一朝一夕に習得できるものではない難しいスキルをできるようになってはじめて自らゲーム(試合)に対して操作できるようになっていきます。
 だから、試合を楽しむまでの、いろんな「楽しむ仕掛け」が必要になってくるのです。せっかくバレーボールをやってみようという子供たちに、できないから、言う通りにならないからといって、大人が叱責ばかりしていては、すぐに子供たちは楽しくなくなります。

 カナダのバレーボールでは、ロング・ターム・アスリート・ディベロップメントという、育成プログラムを策定していますし、ポーランドでもSOSプログラムというプログラムを策定しています。それぞれ、子供たちには、「勝つ以前に楽しむこと」を徹底的に普及させ、年代やカテゴリが上がってもそれが根底にある価値観とし、少しずつ勝利への哲学やモチベーションを学ぶようにプログラム化しています。

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「初心忘れるべからず」

 これからの時代、駆け出しの苦労や困難に耐えた経験を思い出せ・・・・ではなく、とにかくバレーボールを楽しもう、ほらあの時下手でも楽しかったよね・・・カナダではその基礎として「FUN-damental」と書いています。それだけ、失敗をも楽しみながら、バレーボールを楽しむことを徹底していくことがこれからの時代求められていくのだと思います。

それで・・・子供たちの年代から何を練習すればよいのか?

 FIVBワールドカップバレーボール2019が終わり、久しぶりにテレビでバレーボールの試合を、テレビではなかなか観れなくなった海外選手の迫力あるプレーを、そして日本代表男子の進化を観ることができましたね。
 これまで以上に日本国内でバレーボールへの関心の高まりを感じる中、「Vリーグ」が開幕しました。今シーズンは、「選手からの発信」と「にわかファン」あたりがキーワードになっているような気がします。ぜひ会場へ足を運べる方は生観戦を観戦を、、そうでなくてもテレビやネットで日本のバレーボール観戦をみなさんに楽しんでいただきたいです。

観戦の楽しみ方やファン拡大だけではなく、もうすでにバレーボールに関わっている日本のバレーボール選手やコーチも、今回のワールドカップから多くのヒントや教材を得なければならないと思っています。
「海外の選手・チームのゲームやプレーから何を吸収すべきか」
「なぜ今大会で日本代表は進化を遂げた姿を見せることができたのか」
など、メディアの情報も不足気味な中、
バレーボール界に関わる人々は、このせっかくの盛り上がりと注目度を無駄にしていけないと思うのです。

 今回特に考えたいのは、今回注目を集めたバレーボール日本代表男子の活躍をこれからさらに発展させ、一時的一過性のものにせず、発展的にレベルアップを図るために、育成年代、アンダーカテゴリの指導で大事になってくることを改めて見直す必要があるんじゃないかということです。

 まずは、「何をやるか?」の前に、「何を考えて」、「何を基盤として」アンダーカテゴリの育成にあたるべきなのか。についてです。

★チャレンジ精神
★バレーが好き、バレーが楽しい
★試行錯誤による課題解決姿勢
★遊びを見つける力、バレーボールで遊ぶ
★対話力と質問力
★他者理解、尊重と敬意、チームワーク
★自己管理能力
★成長思考(グロースマインド)


 例えばこれらは、日本のどこでも年齢やカテゴリの違いに関わらず、すべての子供たち、選手たちにもたせておきたい、育みたい資質だと考えています。
 残念ながら、日本のバレーボールにおいて子供たちを取り巻く環境では、近年指摘されている勝利至上主義などという風潮の中で、大事に育まれてきたとは言い切れない実態があることは否定しきれない側面があるんじゃないかなと思っているわけです。
 今回の日本代表男子の進化と活躍・・・石川選手や柳田選手、古賀選手などは海外でのプレー経験を有しており、さらに西田選手は日本のバレーボール界の一般的なキャリアとは一線を画す部分もあります。ですから、日本のバレーボールの伝統的にあった風潮や風習を断ち切った、メンタリティやマインドがあったことも、これまでの日本のバレーにはないものを多くの人が感じることができた一因になっているのではないかと個人的には考えています。
 もちろんどんなカテゴリでも、スキルアップして勝利を得ることで喜びや達成感を味わうことは求めるべきもの。しかし、その道のりにおいては、「勝つべし」によって、子供たちの将来につながる大事なメンタリティーを潰していいことにはならないはずです。ましてや大人の自己都合やエゴのために子供の主体性を犠牲にしていいはずがありません。将来の石川選手、柳田選手の出現を望むなら、すべての子供たちに育むべき世界に通ずるメンタリティーは絶対あるはずです。

そんなどんな子にも大切にしておきたいメンタリティーの土台の上に、世界の中でも熱心に行われている日本のバレーボールのアンダーカテゴリ(小中高校生)では、どのようなことに重点を置いて練習やトレーニングを重ねていけばいいのか。その取り組み方によっては、石川選手や柳田選手、西田選手の登場が偶然やレアケースではなく、彼らに続く選手がたくさん出現できる育成ができたらいいんじゃないかと思うわけです。

【具体的な練習すべきポイント】

① 身長の高低にかかわらずオールラウンドにスキルアップを
➁ 動きづくり(スパイクやブロックの動作)
③ 見る→動く(シー&リアクト)
④ 止まる→ボールコンタクト(インタイムプレー)
⑤ オーバーハンドパス能力(ハイセット能力)
⑥ 「ビッグサーブ」を視野に入れたミスを恐れない果敢なサーブ
⑦ リードブロックを基本としたブロック練習
⑧ ゲームライクによるポジショニング
⑨ レセプション(サーブレシーブ)
⑩ ネットから離れた位置でのスパイク
⑪ 「ボール」と「ネットの向こう」のビジョン
⑫ これらのスキルや練習の土台となすフィジカルトレーニング

一見すると「全部じゃねーか」と思えるくらいのリストアップになっていそうですが、でも「試合で勝つ」ということは挙げていません。「試合でミスしないように」ということも求めません。「たくましさ」も要求していません。即戦力になるかどうかよりも、とにかくじっくり継続して自分の身体に沁み込ませるように、いろんな練習メニューやいろんな運動の組み合わせの中で、これらをおさえて練習していくだけでも、一部のその時点で早熟な子供の生き残りではなく、すべての子供たちに、柳田選手、石川選手、西田選手に続く、未来のバレーボーラーになれる可能性を育むことができるんじゃないかと思うわけです。
ここでも幾度となく記事で言及してきました。大人が子供に強制的にメニューを与え、言った通りに動かし、限定的な「カタチ」にはめる。そしてそれができない子には叱責をし、その時点の早熟な子だけを吸い上げていく。できない子には「センスがない」「向いてない」などと扱い切り捨てる。勝利を目指すという題目のもと、そんなことを小中学バレーのアンダーカテゴリやっているうちは、突然変異的な選手の彗星のごとくの出現を待つしかないわけです。そうやって日本のバレーは世界の中で何十年も低迷をしてきたのです。もちろん、日夜子供たちのために地道な取り組みや、温かな目で見守る多くの大人がバレー界にもいることを知っています。でも、それでも、結局は勝たねば意味がない、実績がものを言うという論理だけがまかり通っているうちはダメなんです。

ここにあるようなバレーボールをやる子供たちの動画をみていると、胸がアツくなるんですよね。もちろん自分がそういうアンダーカテゴリの中で活動しているからが一番の理由なんですが、それ以上に沸き起こる思いがあります。
 どんな選手もみんな同じ道を歩んできた。いきなりバレーボールができた選手などいないんです。私たちがよく知るスター選手たちだって、絶対バレーボールに出会った頃は、ボールにもてあそばれているかのように、思うようにプレーをできないかったはずなんです。それは日本も海外も同じなんだと思います。もちろん、遺伝的な筋力や骨格の違いはあるかもしれません。でも、今の日本代表男子たちは、しっかり戦えているじゃないですか。
 やはり大事なのは、「すべての子供に」、「みんなで何を育むのか」、「どうやって彼らをしっかり見守っていくのか」・・・そういったことが足りないし、求められているのではないでしょうか?
 「僕、ヘタだけどバレーボール楽しい」、「わたしのチームあんまり勝てないけどバレーボールが好き」・・・観るのが好き、プレーするのが好き、応援するのが好き・・・。そういう中で北から南まで、大都市であっても地方の小さな町であってもみんながバレーボールの良さに触れることができる。私の抱いている夢は、子供たちに世界に誇れる世界に開かれたバレーボールの何かを日本で伝えることができないかということです。



(2019年)