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「脱ジブンタチノバレー」のはずが・・・それでも型にはめたい?

「戦い方」とか「勝利の原則」とかって何でしょうか?
私たちは、よりよい方法や過程を求め、考えます。
それしかやらない、それしかできないというのが、
「ジブンタチノバレー」と称される、
型はめ遂行タイプ、練習再生タイプのプレーです。
これではいけなくて、
思考力を発揮し、相手に柔軟な対応力を持って、
選択肢を広げた中で、最善をチョイスできる判断力で、相手を上回り翻弄する・・・
これをバレーボールのゲームで目指そうというわけです。

情報の拡散が思考力を奪う?

しかし、
ファーストテンポ、
リードブロック、
pipeやbick、
ゆったりしたセット
脱Aパス至上主義などと、
これらができる、取り入れなきゃという話になってくると、
今度は、それらが「そうするべし」「しなきゃならない」的になり、
そうじゃないものが、あたかもNGみたいに言われることが、
自分は違和感を持ちます。
選手が思考力を持ち、リスクを計算したうえで、
敢えて状況に応じた意図を持って、プレーするのであれば、OKなはず。
ネット近くに返球したり、セットしたっていいわけです。
低めにセッターに返球したっていいわけです。
マイナステンポの攻撃や時間差をやったっていいわけです。
積極的勝負コミットを入れてもいいわけです。

「敢えて」
意図的に、time lag attack(時間差)を仕掛ける
意図的に、3枚ブロックを仕掛ける
意図的に、コミットブロックを仕掛ける
意図的に、マイナステンポのスパイクを仕掛ける

こういうことをやってくる相手って、とてもコワい(強い)と思います。
その前提となる「ベース」があるから意図的にとなるわけです。
ファーストテンポの攻撃がベースにあるから、
意図的マイナステンポの攻撃が効果を発揮する。
相手のブロックがリード主体になっていないから、
時間差攻撃が効果を出す。
どんなプレーにも一長一短があるわけだし、
それは状況によっては逆転もするわけです。
そういった因果関係やシナリオの中で選択判断される、
オプションやツールの一つしかないということです。
それ自体がいいか悪いか・・・それじゃ、
結局「ハウツー」や「特効薬」「必殺技」探しに戻っちゃうわけです。

バレーボールに必勝法はあるのか?

トップ選手のプレーを観ていると、
何か一つのコンセプトや原理に縛られているのではなく、
バラエティさ、多様性の中から自在に選択、仕掛けているのがわかります。
これこそ「脱ジブンタチノバレー」ですよね。
選手一人ひとりに、プレーの幅や使い分けがあれば、それはそれで脅威です。
でもそうじゃなくても、チームで戦っていれば、
ある程度の選手の持ち味や特性を尊重しつつ、
それぞれのスタイルを発揮させ、それらを組み合わせるという意味での
「トータルでの使い分け」「マクロな多様性」というものを
構築したり、コーディネートしていくことが、
求められているものなんじゃないかと思うのです。

1か10か、白か黒か、全か無か、表か裏か・・・
どうしても私たちってそういう思考に傾きやすいです。
だってわかりやすいからです。答えがはっきりしているからです。
ファーストテンポが注目されているのは、
スパイカーの最高打点フルパワーが引き出しやすいからです。
だからマイナステンポを否定するものではありません。
マイナステンポだって、最高打点で打ち切れることだってあるわけです。
結局私たちはどんな新しい手法を提案されても、
油断していると「ジブンタチノバレー」「型はめバレー」に
陥りやすいということを心に留めておくことは大事だと思います。
どれが正しいかという正解結果主義に走りすぎず、
こちらの選択肢は多く持てるようにし、その中から必要でないものは敢えて使わず、
使えるもので意図的にプレーしていく、そういった「考え方」の最善を目指すべきです。

コーチにとって、「これをやればいい」「こうすれば勝てる」というものがあった方が安心できるんだと思います。でもそれを求めれば求めるほど、選手の可能性を狭めてしまっている側面もあることを認識しておかねばならないのだと思います。


(2014年)