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継ぎ接ぎ練習だけではいけない

「スキルチェーン」と言われていますが、
バレーボールでは、

サーブ

レセプション

セット

スパイク(アタック)

ブロック

ディグ

セット

スパイク(アタック)

・・・・

と各プレー、スキルの連続でゲームが展開されていきます。

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この「スキルチェーン」を視点にベースにした練習が、これからはいわゆる「練習」とか「メニュー」とか「ドリル」というものが、該当するようにするべきだと思います。
または、スキルチェーンにおける、
1つ2つ「前」や1つ2つ「先」のプレーへの意識付けやフィードバックを持たせることが指導のポイントの主流になっていくべきだと思います。

例えば、従来の指導の視点ですと、

①ゲームをやってみます。
サーブミスの本数がセットの中で5本以上あったとします。
そこでセットを失った原因をサーブミスにあると分析します。
そして、その後サーブの打ち込みや、
ターゲットに狙ってサーブをコントロールする反復練習を行う。

②ゲームをやってみます。
相手のサーブをレセプションするも
なかなかセッターに返らず、相手にフリーボールで返すか、
返球まで至らず、自分たちのミスによる失点に終わる。
そこで、失点した原因をレセプションができないと分析します。
そして、その後、コーチや選手が打ったサーブを、
繰り返し、ターゲットを狙ってレセプションを反復する。

こういったことがいわゆる「練習」といわれるものの主流だったと思います。
ですが、「スキルチェーン」という視点を当たり前にすると、先ほどの2つの例にあてはめてみると、

①サーブを相手に向かって打つ。
→ 相手はレセプションをし、攻撃まで行う。
→ ブロックをする。
→ ディグを行う。

こういった流れまでを、「サーブ練習」のサイクルと設定するとします。
相手となるレセプション側の人数やブロック枚数は、レベルや個人、チームの課題に応じて設定します。こうすると、サーブの効果や成功を、単にサーブポイントやサーブミスだけの評価にとらわれず、相手の攻撃を封じた、弱めた、またはこちらの意図通りのディフェンスを誘導できた・・・ここまでをサーブの思考、評価に持っていくことができます。

②打たれたサーブをレセプションする。
  (練習課題に応じて人数を設定する)
→ セッターをする条件を設定し、スパイカーにセットする。
→ コート上にいる選手がスパイクを打つ。
→ スパイクに対するブロックを配置する。

こういった流れまでをひとつの練習過程とし、指導の重点化を「レセプション」に置くようにします。
つまり、指導者の指摘や言葉がけは主にレセプションに与えれば、それでレセプション練習になり得ます。
レセプションに付随する、セットやスパイクは、それ自体も練習になり得ますし、何よりも、練習の重点である「レセプション」の精度の評価材料になっていくわけです。
こういうセット、こういう攻撃になった、ならば、今のレセプションでいいのかどうか・・・
ということが明らかになります。
指導者が、ああだこうだと声を上げるよりも、ずっと建設的で、選手に主体性や思考力が生まれて、自分たちで修正の道筋を考えるようになります。

これまで繰り広げられてきた小中学生を中心とした練習の大きな特徴は、指導者自身が目指す方向性がないまま、積み上げ方式の「スモールステップ」練習と、今回取り上げた、練習視点の「点」完結、ミクロ完結ということが主体となっていて、評価の在り方は、常に外からの情報に依存してきた側面があります。しかもプレーの連続性や、応用力や対応力の評価までいかないことが多かったわけです。
ですから、例えば「Aパスでないといけない」という発想になります。
これがもう少し「スキルチェーン」で考えたマクロな評価になれば、
仮にAパスではなくても、目指す攻撃ができたとか、Aパスではなくても、オプショナルプランで得点できたとなれば、それ自体で、ディグやレセプションの返球は否定できにくくなるし、別のプレーの評価や対応力への評価が高まりますから、選手の意識は高まります。

簡単に言っちゃうと、いわゆる結合練習とか複合練習というものになっちゃうのですが、従来のそれは、結局視点が「点」の成否であることと、選手の「やらされ」感満載になっちゃう欠陥があったと思います。
最近言われている、
「ジブンタチノバレー」問題
「Aパスじゃなきゃ何もできない」問題
「スモールステップし過ぎ弊害」問題
「サーブミス敗因論」問題
は、日常の練習にこそ変えるきっかけがあるのだと思います。
いつも言っていますが、何もスモールステップが悪いわけでもなく、ミクロな練習が悪いわけでもありません。
選手の思考停止を生み出すような、やらされ練習になっていたり、本来見るべき戦術的な思考が奪われているような、練習構成や指導アプローチを見直そうということです。


(2014年)