なんでもかんでも二元論の危うさ
どうして、1か10か?白か黒か?って人は考えやすいのでしょうか?きっとわかりやすいからなんだと思います。しかし、すべてがそう分析できるとは限りません。バレーボールにおいても、
「高さ」 VS 「スピード」
「個人の力」 VS 「組織力」
「サーブ」 vs 「レセプション」
「フィジカル」 VS 「テクニック」
「上下」 VS 「左右」
「オフェンス」 VS 「ディフェンス」
すべては、反するものにどう対峙するか、または足らないことに対する、代替・対抗策として打ち出している構図になっています。そして「ないもの」「オリジナリティ」という言葉にすり替わっていきます。
ないと決めつけ、それに対しての二元論的なもう一方のアプローチを選択した時点で、それ以外にある、大事な要素やプロセスを見失ってしまうことが多いと思います。そもそも、あまたある事象に対して、1か10か、白か黒・・・とはならないはずです。局所的の部分にだって勝負のポイントはあるだろうし、グレーな部分で優劣を決するときだってあります。
ですから、特に、ゲームやプレーの分析をするときは気をつけなければなりません。安易な分析結果は、補うべき細かな点を見落とすことにもなるからです。または、もう片方のポイントの強化を捨ててしまうことにもなりかねません。「組織力」・・・まずもって、何をもって言うのか自体問題ですが、
「個人」のスキルやフィジカルを蔑ろにしてはなりません。
もちろん、曖昧にしたままでの危うさもあります。迷いや混乱を生むことだって考えられます。
でも、ズルい言い方ですが、何事にもバランスが肝要であり、中間部分や過程があるわけです。
たくさんの構成要素があります。
二元論的に説明がつくなら、これほど楽なことはありません。スポーツの複雑な戦術や決めごとなんていらなくなるわけです。かけ引きなんて無用になるわけです。スキル向上の練習だって、悩まずにやれるのだと思います。
むしろ「同時進行的に」ポイントを高めていくことで、上昇スパイラル的な進歩となるのだと思います。
レセプション(サーブレシーブ)が崩れることが目立ったとします。
展開として、セッターが定位置で上げれず、場合によっては他の選手が2段トスを上げる。
スパイカーは思い切り打ちきれず、ミスをしたり、打ちきれず相手に拾われてします。
そして相手のトランジションによって1点取られる。
確かに「きっかけ」はレセプションですが、
ではその後の「つなぎの力」、「打つ力」、「ブロックの力」をどう見ればいいのでしょうか?
敗戦の原因が「レセプション」というのは簡単です。仮に、レセプションを重点的に練習したとして、改善されたとしても、他のスキルは、いい状態の時でしか精度を発揮できませんから、即、勝因になりえないと思います。
「今日はサーブで負けた」、
「今日はレセプションがもっとセッターに入れば勝てた」、
なんかそれ以上の分析が自分はできればなと思っています。
一方でスポーツおいては、「見きり」や「割り切り」も重要です。何だか矛盾するかもしれませんが、
この場合は、強化方針やスキル向上の過程においてではなくて、あくまでも戦術的な側面における、思考についてです。
ディグで言えば、 「すべて拾おうとすれば、すべてが拾えなくなる」
ブロックで言えば、「すべて止めようと思えば、すべてが止まらなくなる」
という状態です。
こういったあたりで、「ここは逃さない」、「ここはやられてもしょうがない」というものがあり、お互いが連携することで、その後のリスクを補って備えることにつながります。スポーツの多くでは、「確率」の世界があります。何でもかんでも数値化してしまうと、選手のメンタル面の変化やゲームの流れや局面に気付けないこともあると思いますが、その「確率」を意識することで、逆に精度を上げることにもつながると思います。
ですから、「確率」を用いる時は、「○○から攻めろ」、「○○を押さえろ」、「○○をねらえ」・・・だけではなく、
「○○はやられても気にするな」、「○○は考えなくていい」・・・といった類の指示も重要だと思います。
選択肢は、多くなってくると、「決断」が必要になります。決断に迷いや遅れが生じると、遅れが生じてしまいます。バレーボールでは、相手攻撃の可能性、パターンが増えれば、それだけ相手からすると、ターゲットを絞りにくくなってしまいますから、対応が遅れ気味になります。
ファーストコンタクトから、セッターまでの返球に時間があり、その間に複数の人間にアクションが起こると、相手ブロッカーの「選択肢」が広がり、反応に遅れを生むことがあります。「テンポ」のバレーもそういった要素があるのだろうと思います。
しかし逆の「選択肢」もあります。トスをもらったスパイカーが、その後どのように打つのか。これしかないという打ち方、唯一のコースしか打てない選手、打ち方に工夫ができない選手は、「攻めの選択肢がない」ということになります。選択肢がないと、相手の思うつぼにはまってしまいます。ですから、個人技能として、選択の幅を広げることを教えなければなりません。スパイクで言えば、コース、ブロックアウト、軟攻、そして身体の使い方です。
選手を観ていると、もっと打つ手(利き腕)側の肩や肘がぐっと前方や中にねじり込む打ち方があってもいいのではと思う時があります。腕だけで真正面に叩きつけているように見えることがあります。
相手に選択肢の幅を意識させると、相手に反応の遅さが生まれる。一方で主体側が選択肢を持つことで、ギリギリの場面での打開策が見えてくる。矛盾しているようですが,意識レべルでは重要なことだと思っています。
(2011年)