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もしもゼロからチームをつくってみたら(2年半の総括)
バレーボールにおけるアンダーカテゴリの「育成」を目指し
2017年も終わりまでカウントダウンとなってきました。みなさんの今年のバレーボールは充実していたでしょうか?私にとっての今年、この1年は、新しいチャレンジのまとめの年となりました。中学生の子たちを集めて、チームを立ち上げ、練習環境もゼロ、子どもたちのバレー経験もゼロ、バレー用具もゼロ、先輩ゼロから始めた子たちが、中学3年生を迎え活動に一区切りをつける年でした。
この2年半チャレンジしようと思ったことは、近年世の中で言われてるところの情報を貪欲に取り入れて実践し、具現化してみようということでした。活動のアプローチ一つとっても、旧来的な指導や体育会系的な体質での活動ではなく、選手たちのモチベーションや試行錯誤に寄り添うような活動で貫こうと思いました。練習量も、毎週定休日は必ず入れますし、テスト前だけではなく、盆と正月、その他大型連休では、まとまった休養日を設定しました(自分のプライベート確保のためにも^^)。
それで結果は、やはりブロック大会や全中出場とまではいきませんでしたが、小学生バレー経験者いるチームにもいくつか勝てるようになり、ブロック大会出場チームとは互角に戦えるようになりました。平均身長は、170㎝あまりあったのも恵まれていたかもしれません。しかしながら、運動経験はあまりなかった子たち7人での実践です。
ポイントは焦らずじっくりと足し算方式で
バレーボールの活動方針や練習方針に関して、意識して取り組んだことは以下の通りです。
・休養日は年間を通じてしっかり確保する。
・他校、他チームを集めての講習会的合同練習を多めに行う。
・過度な体育会系の風習や上下関係はもちこまない
・保護者にも理解を得るよう、バレーボールの情報を通信で伝える
・外部からの指導者の招へいを積極的に行う
・朝練や夜の社会開放では、何も与えずバレーボールを自由にやる機会を確保
・発達段階や時期に応じて、対外練習や合宿、遠征を計画的に行う
・合宿や遠征では、交流も大事なテーマとし、旅のオプションや感謝の気持ちを伝える取組を入れる
・異世代、異カテゴリ、男女の垣根を越えて、練習や交流を行う
・公式大会出場は、9か月目(冬)から
・大会出場は、「不参加」、「全員出場」、「部分的全員出場」、「主力編成出場」などレベル設定をあらかじめ設定し、計画的に参加する。
次に、具体的なコーチングに関して、意識して取り組んだことは以下の通りです。
・スキルアップ、スキル習得は、数か月のスパンを待つ
・目標や練習内容の設定を段階的に行うよう事前に周知
・座学のミーティングは毎週入れる
・練習やミーティングでは動画を用いる
・練習は、必ずホワイトボードを用いて、説明をして行う
・全員画一的な「型はめ」を極力行わない
・早期のポジション固定化を行わない
・全員にすべてのポジションの練習行い、経験を積ませる。
・「~しないように」より、「~できるように」を目的にした練習
・試合のメンバーをなるべく固定化しない
・全体練習と個人練習を組み合わせる
・指導者が直接指導する場面と、選手同士で行う練習を同時進行させる
・違う練習メニューを並行させて行う。
・「思考錯誤練習」時間の確保
・「ブロック」、「オーバーパススキル」、「サーブ」を重点的に行う。
・スキルの習得、向上を数か月単位で見守るようにする
・初心者であっても、「ゲームライク練習」を行い、段階に応じたゲームライク練習を開発&実践する。
・スキル習得の個人差を肯定的に受けとめ、個に応じた練習計画を考える
・ウォーミングアップは、「スキルウォームアップ」を基本とする
・「ジャンプ負荷」を練習場面・練習計画で考慮する
従来のバレーボール指導の内容を見直して
次に、バレーボールの具体的な指導で、取り組んだことです。
① オーバーパス
・キャッチを取り入れる練習は一切行わない
・「カタチ」よりも「タイミング」や「イメージ」をフィードバックする
・セッターのスキルアップにつながるようドリル化する
・手だけの練習、足だけの練習とせず、一連の動作を確保しながら、ドリル難易度のスモールステップで行う。
② アンダーパス
・「正面で」、「腕を振るな」は一切求めない
・「カタチ」よりも「タイミング」や「イメージ」をフィードバックする
・ロングボールのコントロールを目標に練習を継続する
③ ブロック
・ステップやハンドワークの「使い分け」を理解させる
・跳ぶタイミング、ボールコンタクトのタイミングへの識別
・スイングブロックを積極的に行う
・アイワークの重要性を理解させ徹底する
・リードブロックを基本とする
・生きたボールでの練習をなるべく行う
・ブロック単独の練習だけでなく、他のスキルの練習場面でもなるべくブロックを行う状況にする
・空中での思考や操作を理解させる
④ レセプション
・「正面で」、「腕を振るな」は一切求めない
・「カタチ」よりも「タイミング」や「イメージ」をフィードバックする
・「個人のプレー」と「組織のプレー」の関連を理解して行う
・前後はチームで対処、左右は個人で対処
・「見る」ポイントと、「タイミングをとる」タイミングを理解させる
・「イン・タイム」プレーの重要性を理解させる
・飛来するサーブのボールへの判断を求める
⑤ スパイク
・歩数に制限されない助走からスパイクできるよう練習させる
・スパイク動作を過剰に細分化した分解練習を極力行わない
・ヒットポイントやスイングイメージを複数選択させ、選手に選ばせる
・バックスイング、ステップクローズ、体幹の向きや動きなど、スパイク動作の最低限の条件がそろっている場合は、ひたすら反復を見守る。
・クイックは、「ファースト・テンポ」を基本とする
・初心者や低身長選手こそ、ネットから離れたボールを打たせる
・バックアタックを標準化する
⑥ セッター
・全員に練習をさせる。試合も全員にセッターを経験させる
・あらゆるセット(サイドセットやジャンプセットなど)を練習させる
・カタチや固定化された体の向きよりも、「イン・タイム」プレーの重要性を理解させる
・ハイセット能力の向上と意識させる
・アンダーハンドより、オーバーハンドでのセットの有能性を理解させる
・ボールは、キャッチさせない
⑦ その他
・ディフェンスでは、返球がニアネットによるミスを一貫して指摘(「ネット中毒」)返球は高めにゆとりをもたせる。
・試合のフォーメーションを発達段階に応じて変化させる
6-6(S3で)
⇒ 6-6(S2で)
⇒ 6-6(S1で)
⇒ 6-2 ※対角を決め、対角ごとにポジションを入れ替える
⇒ 6-2 ※セッター候補を抽出し、ツーセッター
⇒ 4-2 リベロを指定し、ワンセッターで
・ゲームライクは、「キャッチ」を入れてでも初心者から取り入れる
⇒1stキャッチ
⇒2ndキャッチ
⇒3rdキャッチ&リリース
などを段階に応じて組み込む
・ラリー攻防練習に、ボールを2個用いて行う練習を取り入れる
・ゲームライク練習のバリエーションは豊富に
・ゲームライクの、パターン練習とランダム練習を使い分ける
・ゲームライクの、ラリー継続練習と得点奪取練習を使い分ける
味わったことのない境地に
【成果・収穫】
実質2年間半の期間やってみました。試合として仕上がった感があったのは、本当に最後の2~3週間であり、2年数か月の間は、とにかく選手も指導する側も試行錯誤。アハ体験のごとく、そう常に上達を実感することなどない模索の日々なんだということが改めて明らかになります。
旧来の「型ハメ」でしばる練習がなくてもバレーボールになる。従来はレシーブ重視の風土から、サーブとブロックを軸に指導していくと初心者でもいい試合ができる。
オーバーワークや不自然な動作強制による故障はほとんどなく、スキルの習得は当然のことながら個人によってスピードは違うと同時に、得意なスキルも個人によって違うため、様々な習得プロセスが見られました。
試合の勝ち負けだけで考えると、サーブとブロックの根気強い練習の蓄積はかなり効果絶大でした。
私は、数年前までは、声を荒げながら画一的な指導をしていたり、それこそ型ハメとよばれる練習に終始したり、ひたすらレシーブ練習で自分が汗だくになったり、とにかく練習量だと思って休みを惜しんで練習してきました。
でもそんなことをやらなくても、子どもたちはしっかりスキルアップを達成できることが改めて分かりました。
(2年半後ジュニア経験者チームに何とか勝利できるまでに)
日本の大会スケジュールや選抜強化システムのはざまで・・・
【課題】
いわゆる「勝てるチーム」とか「常勝軍団」にするには、限界があると感じました。全員がスキルアップを図れた一方で、個人のスキルの完成度にまだ粗い部分が残りました。顕著だったのは、セッター、ディグ、レセプションなどのプレーでは、その粗さがゲームの勝敗に大きく影響していたように思えます。特にボールコントロールやフットワークなどの「自動化」は、小学生バレー経験者を中学の2年半で追い越すのは厳しいと感じました。
いわゆる「型はめ」練習を全否定しません。むしろ「必要な時期」、「必要な内容」というものがあるように思います。ボールコントロールが比較的落ち着いて制御できるようになった時点で、セッターやレセプションのフットワークやフォームなどは、ある程度反復して浸透させておかないといけないなという反省も明らかになりました。
勝ち負けだけで考えると、早い段階で特定のポジションやプレーに特化し、限定的に完成度を上げた選手が、分業をしてチーム編成をしてくる方が、ゲームとしては強さを発揮しているように思います。まして小学バレー経験者を相手ではなおさらの差となります。
伸び代が大きく残ったまま活動を引退するも、結局は上のカテゴリにうまく拾ってもらえず、継続的かつ発展的な指導をその後も受けにくいという点も改めて突き付けられた課題です。大器晩成の実現ができるシステムがまだまだないということも感じます。
最後に改めて、この2年半の活動にご支援いただいたすべての方々、ボールを提供いただいたり、うちの体育館に来ていただいたりなど、本当に多くの方々のお力を貸していただけたことに感謝申し上げます。
(2017年)