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目指す方向性と「練習のための練習」(コンテスト練習・セレモニー練習)

「無知の知」とか「暗黙知」というものと、子どもたちの実態についてが気になってしょうがない日々です。

さて、練習にはいろんな考え方があるのだと思います。
例えば、「できるようになるまで」 とか 「徹底して」 という考え方です。
オーバーパスができるようになるまでは、徹底して、練習を行う。
などといった考え方です。

逆に別のアプローチとしては、「習うより慣れよ」的な考え方。
とにかく反復練習や変化のある繰り返し、または様々な結合練習やラリー形式の練習によって、個々のスキルの会得を目指すという考え方です。

これらは、学習の側面で言うと、「全習法」 「分習法」 ということになります。

 学習法は課題をどのように分割するかによって、「全習法」と「分習法」に分類されるます。

 「全習法」とは、学習や学習課題について 最初から全体をひとまとめにして練習し、それを何回も反復練習する方法のことです。この方法は全体的な活動、またはまとまりのある単位を学習する方法です。

 「分習法」は全体を個々に区切ってその各部を学習してそれを完成させ、 最後に全体として学習する方法です。

 どの方法をとるかは個人の能力、 課題の種類や難易度によって異なります。

 だから、どちらのやり方がいいのか・・・どちらが、間違っているか。そういう発想自体が意味を持ちません。ただいろいろ気をつけなければならないことがあると思います。

例えば、オーバーパスの習得をしっかりさせる。
分習法的なアプローチで行くと、
子どもの練習に飽きが出たり、バレーボールというゲーム性へのモチベーションの低下が懸念されます。
しかし、分習法的なアプローチは、スキルで上手くいかない部分での、修正や矯正の機会になります。

特に、カテゴリが下での練習・・・子どもたちの練習においては、外国はわかりませんが、私たちの身の周りでは、個々のスキルに対し、たくさんの指導者たちが、長年の実践と研究を通して、技術や指導方法が細かく分類、系統化されています。
小学校で指導していただいた選手は、中学校からしてみれば、とてもありがたいですし、中学校で頑張った子たちは、高校で活躍して欲しいものです。

ただ、スモールステップの育成でもうひとつ考えなければならないことがあると思います。
私は、そこが決定的に足りないと思っています。それは、ひとつのステップと次のステップへの「移行」の在り方です。何だか、ぶつ切りのステップ方式に思えてしょうがありません。
その最たる例が、オーバーパスのキャッチから、飛ばす、ハンドリングへの転換、または、スパイクの助走の練習の在り方、
などです。

どうしても私どものカテゴリの練習では、基本練習、基礎づくりと称し、それぞれのスキルを細かく分解し、スモールステップで段階的に行う手法が多いです。
また、指導する側のストレスとして、スキルが伴わない状態での、応用練習や実戦に不安やいら立ちを覚えることが多いからです。
しかし、選手からすれば、「何のための練習か」という全体像がつかめていないと、練習を行う意味がありません。ともすると、
パス練習は、パスコンテスト
ディグ練習は、ディグコンテスト・・・などのように、
他にもレセプションコンテスト、スパイクコンテスト・・・
練習のための練習に、やり切れた感を置いてしまうこともあるようです。

分習法だけでは限界があり、弊害が出てきます。
でも全習法だけでも限界がありますし、スキルアップのスピードは鈍いです。
相互のスパイラル的な向上を目指すのがいいのだと思いますが、
そういったスキルの習得過程や、指導段階の育成の在り方、
小学校~中学校~高校それぞれでやってきたことを生かしつつ、どのように、転換をはかるか、その「周波数調整」・・・こういったことへの研究というか、系統化されたものが出てくるのも面白いと思います。
例えば、細かな部分練習や反復練習のあとには、
必ず、ゲームの全体像をつかむ練習を入れています。
重要なポイントは、「すぐに移行する」です。
部分練習から、のんびりと全体練習へ移行しないことに重点を置きます。
そのサイクルをひとつのユニットとして行い、
その後に休憩、そして次の練習へと進むという形です。
これで集中力の持続もなされるのではないかなと思います。

「基本」というか「ファンダメンタル」というか、それらの定着というのは、中学生レベルではとても重要です。
でも、何をもって「基本」とするか、何を指して「ファンダメンタル」とするかは、いろいろな考え方があろうかと思いますが、必要だと思うことは、毎日短時間ずつでもいいから、「ルーティーンワーク」化し、しかも日々の練習において、そこには最大の集中力と注意力をもってあたることが、とても重要だと改めて感じます。
よく、基本を習得するまでは、とことん基本練習と呼ばれるものに、時間をかけひたすらやる現状が見られますが、それよりも、短時間のパッケージとして、それを毎回の練習で必ず行うものとする方が、意識の面でも習得の面でも効果が上がりそうです。

コート上では、誰か一人だけ理解し頑張ってもうまくいきません。パサー、セッター、スパイカー・・・
それぞれが戦術やコンセプトを理解し、互いに確認し合い働きかけ合ってはじめて成し得ることがたくさんあります。
例えば、展開の中でセッターはクイックを使い、相手の注意や意識を向けさせたいと思っても、
パサーやスパイカーのその意識が薄ければ、できません。その逆もまたあり得ます。まさに、シナジー、協同が求められるわけです。

バレーボールは一見、攻守が常にいったりきたりしているように見えます。ネットを挟んでの攻防ですから当然そうなります。
しかし、選手の思考やメンタルは、「攻め」であるべきです。言いかえるとなるべく「想定内」に持ち込むべきですし、なるべく「意図的」な状態を維持すべきです。仮に相手からサーブを打たれても、
こちら側は、そのサーブにどう対応するかを、選手が思考し、相談し、能動的に動く・・・そこには「受け身姿勢」はないわけです。相手からのスパイクに対しても同様に、ブロックシステムへの思考と、フロアディフェンスの構築・・・こういった思考を維持できれば、積極的な「攻め」の姿勢を保てるわけです。
でも中学生は、えてしてそういった点が脆弱で不安定になりがちです。なので「自滅」とか「大崩れ」といった状況になりがちです。こういった側面からも「やり方」以上に「考え方」を浸透させることは大事だと思います。

現状を見て回ると率直に言って、女子よりも男子の方が、選手の育成やチーム作り、戦い方においては、目指すビジョンみたいなものが明確なような気がします。
よく「女子は筋力がないから」とか、「女子はラリーが長いから」などのように、漠然とした経験則的な理論が先に立ち、それがあたかも前提のように、極端なスキル論や練習のアプローチがなされているような現状には残念ながら疑問を呈さねばなりません。バックアタックの話をすると顕著で、それは男子だから・・・という言葉をすぐに言う女子バレーのコーチって、どういう根拠で言っているのか首をかしげます。そもそもやらせたことがあるのでしょうかね?

その他にも、男女関係なく、
落下点に入り静止を確保してボールを処理することは大事です。
「サーブ&ブロック」、
「ブロック&フロアディフェンス」、の考え方、
「ブレイク」の意識と方策からゲームを把握する、
スパイクは全力助走、全力ジャンプ、最高打点で打たせる、
相手への対応力を磨く、
こういったことは、当たり前であって、
それが、女子だからとか、中学生だからという理屈で
犠牲になっていいとはならないと思うのです。

だから、カタチを整えたり、練習を上手に流れるようにやる力も大事ですが、
だからといってそれが試合に直結するとは言い切れないのです。


(2012年)