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ミスありき、されどミスの差によって

「ミス」に対する考え方やとらえ方を変えるだけで、チーム作りや選手へのアプローチ、戦術の構築は変わってきます。

明らかなのは、「ミス」に対するハードルを上げる・・・
Aパスでなければならない、つねに低い返球でなければならない・・・
となれば、精神的なプレッシャーも大きくなり、難しい局面になればなるほど、ミスを生みます。

カテゴリが下げれば下がるほど、スキルのレベルは未成熟となります。
経験値も浅いので、ゲームに対する不安や自身の無さも目立ちます。そうなると、眼の前で繰り広げられる「ミス」が、スキルを伴っていない、または指導不足や練習不足によるものなのか、または、普段の練習や日常ではできていることが、何らかのメンタル面の狂いによって、実力を発揮できていないか・・・見極めが難しくなってきます。いろんな「ミス」が起こるのだと思います。

どんな種目でも「ミス」はつきものでありますが、同時に「ミス」がターニングポイントになったり、命取りになることが多いです。特に、バレーボールは、個人の「ミス」がはっきりわかる競技です。
自分自身が練習や試合で起こしたミスに対して、どうのように考えるか?
そして周りの人間は、ミスした選手に対してどう接すればよいのか?
いろいろ考えなければなりません。

私が見ているカテゴリにおいては、「ミス」が少ない方が勝ち・・・といった傾向が強いです。
特に、サーブミス、スパイクミス、レセプションのミスがほとんどだと思います。
これらが目立つセットは、必ず厳しい展開になります。
ゲームを見ていると、いろんなゲームの流れで考える時があります。
5・10・15・20・・・と5点スパンでいくとき、
10点・20点・・・とするとき、
序盤・中盤・終盤・・・8点、16点、それ以降とするとき・・・
いろいろあると思います。

ふと「テクニカル・タイムアウト」というものを考える時もあります。
これは、中学校のカテゴリには関係ありません。聞けば、テレビ放送時のCMを入れるために導入したルールだそうですが、中学生の試合を見ていて、テクニカルタイムアウトのタイミング・・・8点までどうがんばるか、先に8点取れるか、16までをどうするか、タイムアウトがなくても、結構大事だと感じる時もあります。

Vや世界大会などで、テクニカルタイムアウトの先取と勝率にはどのくらいの関係があるのでしょうか?調べた統計を見れていないのでわかりませんが興味があります。

テクニカルタイムアウトが入れば、その時点でリズムを変えるチャンスがあるかもしれません。
しかし、中学のバレーでは、そのようなものがありませんから、出だし、序盤に、リズムよく走れると、かなり勝率が上がります。
逆に相手に走られる・・・序盤に連続失点が重なると、かなりその後の展開は厳しいです。せいぜいその点差を詰めるだけで精一杯で力尽きることが多いようです。

1つのセットの中で、連続2失点が3回以上、連続3失点が1回、連続2失点が2回以上、1回でも連続4失点以上がある・・・
このような場合は、相手にリズムが行き、セットを落とす確率が大きくなるというデータもあるそうです。

また、「ミスによる失点」は、1試合に10~12点くらいを占め、失点全体の20%ぐらいをいくというデータもあります。
連続失点の要因の多くはミスによるところが大きいというところがわかると思います。
特に、20点以降でのミスの発生による1点の失点は致命的で、
さらにトップレベルでは1セットに5点以上のミスによる失点では勝ちあがれないと考えられることもあるそうです。
一概には、すべてにあてはまめることはできません。
カテゴリの違いやスキルレベルの違い、また対戦するチームの間で、力の差がある場合も、データ通りにはなりません。

しかしいずれにしても、今の自分たちのレベルを踏まえ、せめて最低限してはならないミスは設定できるはずです。レセプションでAパスに行かないことをミスとするか、しないかでも違います。
スパイクアウトも、失点と考えればミスですが、チームや選手の課題によっては、あってもやむなしのミスがあるかもしれません。ミスと課題の明確化によって、ミスでも選手の精神的負担が軽くできます。

とにもかくにも、中学バレーを見ていると、
「ミス」や「連続失点」にどう向き合うのか・・・それが重要なポイントとなります。

話は変わりますが、ミスの話にも通じますが、
例えば、Aパス(Aカット)は、何%ぐらいの割合を占めるのでしょうか?
おそらく、そんなに高くはないと思われます。
セッターの定位置から繰り出されるセット(トスは)どうでしょうか?
それも同じく、いつも同じ位置からは出てこないはずです。
そういったところにもトスやスパイクの練習のポイントが隠されていそうです。

何をもってミスとするか・・・その考え方はいろんな側面からできます。
また、そのミスにどう対処するのか・・・それもいろんなアプローチがあります。

チームが発展途上にあって、ゲームが「ミス」による失点や得点で大きく動いていきます。
ですから、練習や課題が個々の「ミス」をいかに抑えるかという点に視点がいきます。
結果的に、「ミス」による自滅型バレーが抑えられた方が、セットを獲ることがよく見受けられます。
そうなると、チェックポイントが、自分は、自分たちがどうだったのか・・・というベクトルに思考がいきます。もちろんそういった内省は大変重要です。
ですが、それだけではなくて、例えば、サーブをあそこに打ってしまった結果こうなったとか、セッターの選択肢がこうなった結果相手ブロックにこう付かれて、みたいに、自分のプレーの前の過程を考えた「ミス」というのもあるのだろうと思います。

いずれにしても、

「いかにミスを抑えるか」
「ミスを前提とした必要なプレー」
「ミスなどのリスクを背負ってのプレー」

こういったものが、いつどの段階でシフトしていくのか、
または、それぞれが分離しているのではなく、日ごろの練習の中で、どのように要素を織り込んでいくのか、そうすることも、
「ジブンタチノバレー」思考にさせないポイントがあると思います。

目標として、プレーの精度を上げること。
つまりミスを最小限にした安定したプレーを目指すこと
というのは、非常に重要なことです。
試合中においては、ミスによって得点が大きく動きます。
しかし、そのことと、実際の試合中の流れにおいて、ミスをどのように肯定的に対処するというか、ミスがミスを生み、相手に得点される展開をなくすか、敢えて言えば、ミスという自分たちの思考によって、次のプレーへのあきらめ的な、効果が下がってやむなし的な発想を自然としていないかという点は考えなければいけません。

端的なのは、
レセプションやディグのファーストタッチのボールが、セッターの定位置に返球されず、オンタイムやアウトオブタイムのプレーになると、その時点で想定された攻撃ができず、攻めきれない。という場面があるのだと思います。
ですが、攻撃は、その時点から組み立てられるものを即座に判断して、全力で仕掛けるというのが本来の姿。
仮にAパスじゃなくても、そこから出来る最大限の攻撃を、みんなで仕掛ければいいことになるはずだと思います。
「こうなったらおしまい」、「こうなったら無理」
こういった思考を、練習や指導者が自ら刷り込んでいることがたくさんあるんじゃないかと思います。
バレーにおいては、まずは自コートの床にボールを落とさないこと。
それが仮にコートのどこに上げようが、頑張ってボールを上げたこと自体はどの選手も評価されるべきです。そしてそこから想像力や発想を生かして、攻撃を達成したら、そこでも評価されるべきです。
「こうあるべし」が狭めていることはたくさんありそうです。

(2014年)