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型にはめるより修正。カタチはできあがっていくもの。

ゲームセンス、ゲームシチュエーションの練習で

例えば、4人対4人でのそれぞれ4―4のシステムで
全員がすべての役割をやるよう、ローテのルールを相談してゲームをやるとします。
あと条件をつけたのは、フロント2、バック2、ブロックを跳ぶとしたらフロントのライト側の1枚、
という条件です。誰が何をするかとか、フォームや構えをどうしろとか、時間内ではほとんど指摘しません。しかし、頑張ったプレーや、想像力ある工夫には、必ず即座に「今のイイネ」と返します。

ベーシックに手取り足取り、細かく指示やアドバイスを与える練習もありますが、一見してこうして生徒に委ねる練習は、遠回りのように思えます。
確かに、1カ月とか2か月スパンで考えたら、なかなか成果は見えにくいこともあるかもしれません。
ですがどうでしょう?それが半年や1年のスパンで考えたときの、積み重ね・蓄積によるスキルやレベルの差はどうかなと思います。きっと、到達しているところは違ってるのだろうと思います。
多くの人たちにとっては、出場権やシード権、シードポイントなどに追われている大会が常に短い期周期やってくる環境においては、このような練習に時間を割くことは勇気がいるのかもしれません。

やっぱり教え込まれ型の選手とには、違う点が出るように思います。
まず、お互い相談し合います。プレー中もよくしゃべります。
プレーは、流動的で、いろんなことをやってみます。
自分でしっくりこないことは、自らアドバイスを求めてきます。
失敗を責めたり、追求されることはありません。
でも納得いかないものは、いつでもやり直しを要求します。
例えば先ほどの、4-4システムでの4人対4人のゲームでも、
やっていくうちに、セッターの位置づけや、コート上の位置取りに、少しずつ「秩序」が形作られていき、同時にイージーミスが減り、結果的に簡単にボールが落ちなくなります。
これも、最初から指導者によって位置取りを指示されていたら、どうなっているかな?と思ったりします。

木を見て森を見ず、魚の取り方を与えず魚を与えようとする

オープンスキルとクローズドスキルと言われていますが、
「オープンスキル」というのは、パターン化されていない状況に柔軟に最適な対応ができることです。

もうちょっと見方を変えると、ボールを処理しようとする選手の思考からすると、まず、「何をしてくるか」「どのように仕掛けてくるのか」というものを瞬時に感じ取り、思考から行動化します。
そしてすかさず、「誰が?どうやって?どこに?」という処理する人間の決定化を要し、さらには、次なるより適したプレーをどうつくりたいのか、というプレーに意図を持たせたものしなければなりません。

「何をしてくる」 →  「どうプレーする」 → 「それは何のため」
(相手:対戦相手)(自分:クローズド)(相手:対戦相手および味方)

こういった思考や経験の流れが、普段から行われて練習が成り立つと思います。
ですから、予測とか判断、反応とかと言われるものを養おうとして、実はそれが練習のための練習となってしまい「憶測」(ゲス)的な練習になってることも多いと思います。
応用練習とか、オープンスキル的に練習しようと、結合練習や複合練習、オーバーザネットペッパーの練習をしても、その内容が、限定的にパターン化されたものであれば、それはクローズされ練習といえます。なぜなら、あらかじめ予測せずとも決められたパターンを遂行すればよいわけで、逆にパターン外の状況では、ドリルが中断しちゃうこともよく見受けられます。
これでは、なかなかオープンスキルには広がりません。

練習の「観察」と「変数要素」

ゲーム練習をする際は、ただやらせるよりも、おおまかに目指したいものや方向性を確認したり、おおまかな条件や制限をかけることで、例え役割分担が偏ることを抑えたり、ラリーが生まれやすい状況に導いたり、コミュニケーションを引き出したりするなどができます。具体的な例のひとつに、スパイクミスや守備のミス・失点や勝ち負けを気にするな、自分の考えで積極的、能動的に動くこと、セットする人以外は攻撃参加、ということです。
また、安易なレフトオープンバレーや、ワンパターンなリズム展開にも工夫を入れるよう指示します。
しかしながら、使う場面やタイミングが、あまり効果を持たないものであれば、それはそれで、指摘をします。
常に、頭の中や選手同士のコミュニケーションが活性化された状況になればいいなと思います。
逆に個別な、パスが上手くなったとか、スパイクが上手くなったなど、そういったものは目には見えにくいですが、きっと長期スパンでいうと、得られるレベルアップは、大きいかもしれないと思います。
指導者が何でもかんでも、与える、やらせる、型にはめるじゃなくて、選手たちのアクティビティによって、自然と創造されていく、そういう過程で練られたものが、本当の意味で実戦力として身につくのだと思います。


(2013年)