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なぜ「声を出せ!」と言いたくなるのか?

よくバレーボールの指導者は、「声を出せ!」というフレーズが好きなよう?です。
やたら言いたがります。しかも怒鳴り気味で言うことが多いです。
でも、なぜ「声を出す」ことが必要で大事なのか、声が出る状況にするためにどんな工夫があるか、声はなんでそれほど重要なのかわかりやすく説明できるか、そういったことをしっかり言える人は少ないようで、とにかく「声を出せ」!となります。

一方、言われた方は、何をどのように声にして発せば良いかわからないので、
(仕方なく)とりあえずの声を出すようになります。
「こいっ」 「いけっ」 「あげろっ」 「ナイサー」
 「カットーっ」 「集中っ」 「一本っ」
こういった類の叫び声に近い声が充満していきます。
こういうの良さそうで、ゲームの中で重要なことなんだろうかという疑問をもっています。
冷静に考えてみると、「声」「言葉」って、コミュニケーションの手段です。ですから、言う側以上に、言われる側や受け取り手の効果を考えなければなりません。
上記のとりあえずの声を練習や試合で、言われたから出されて、プラス効果になるのは、どの部分のどの人間か?いないと思います。強いて言えば、「声を出せ!」と言った指導者が、活気ある雰囲気を感じることができて少しいい気分になるだけだと思います。

じゃあなぜバレーの指導者は「声出せ!」なんでしょうか?
自分もそれだったので、振り返りますと、まずは、指導者もきっと過去にそういった経験をして乗り越えてきたみたいな自負があったからだと思います。そしてそうさせることが選手たちが一生懸命「なように」見えるからだと思います。必死さみたいなものに「見える」からです。また、プレーヤーとしての経験がなくても、強豪校チームがそういうふうにやっているので、「そうあるべし」になっているのだと思います。

確かに声が出ていないと活気がなく、空虚で無機質です。
選手も張り合いがなく、動きに緊張感もスピードも生れにくいと思います。ですが、ワーキャーとただ「いけっ」「こいっ」と叫んでいるのも、どうなのかと思います。

「声」、「言葉がけ」、「コミュニケーション」は必要であり、重要です。
・サイキングアップ
・リラクゼーション
・指示
・確認
・意思表示
・状況判断
・情報伝達

それはパフォーマンスにおいては、瞬間的なパワーを生み出すことにもなりますし、大きく瞬間的な声は、火事場の馬鹿力のように、メリットは、パワーや瞬発力を生み出しやすいように思います。いわゆる、覚醒とか心頭滅却、「サイキングアップ」の側面が強いのだと思います。
でもデメリットは、冷静な思考や分析の余地がなく、コミュニケーションを停止することになってしまいます。

一方で、大きい必要性のない声も必要です。
逆に、ゆっくり小さな声で言葉を発することでコミュニケーションをすれば、互いの注意力が高まり、集中力やリラクゼーションを生み出すことだってあります。

また、コミュニケーションとして、思考を整えることにも使います。
確認、指示、指摘、激励、意志表示・・・
そういったものが戦術的に必要なものだからです。

何か何でもかんでも悲壮感必死感ただよう「声出し指導」をそろそろ卒業できないものかと思います。よく練習会では「ハイ!」「コイっ!」「あげろっ!」「イケっ!」という言葉をNGワードにして練習させることがあります。そうすると、選手たちは何も言えなくなるんです。でも、「レフト!」などのように位置を言うこともできますし、「3枚!」など味方や相手のブロックの状態を言うこともできます。「もっと高く」などと要求もできます。
そういう「必要な声」を、しっかり説明して、理解させ、レディネスが整ったうえで、「声を出せ」というのがあるべきプロセスなんじゃないかと思うのです。

声は、そもそも(強制的に)「出す」ものではなく、(自発的に)「出る」ものである。
大人が「声を出せ!」と子供に強要するのは、子供たちが頑張っている活気ある状態がほしくて、それで安心できる大人側の事情です。
大事なのは、
・なぜ声が必要なのか?
・どんな声が必要なのか?
・声が出せる段階や心理状態になっているのか?

などであって、
それらを、気合いだのやる気だのといった問題で片づけないでほしいです。
ですから、「声だせ」指導は、
指導者の、指導力不足・・・言語化できない、問題の所在を分析できていない、改善策を提示できない・・・そういったものを映し出しているはず
です。

こんな言葉を聞いたことがあります。

「ダメ指導者8ヶ条」
1、すぐ怒る
2、暴言・暴力が多い
3、えこひいきする
4、暗い、古い
5、クドクド話が長い
6、技術を教えれない
7、精神論ばかり
8、練習がワンパターン


「監督の向上8ヶ条」
1、身体メカニズムを知りたい
2、故障させずに上達させたい
3、選手個人を尊重したい
4、怒る指導は卒業したい
5、いつも笑顔で指導したい
6、常に新鮮な気持ちでいたい
7、目先の一勝より選手の一生
8、子どもの未来を考えたい


(2013年)