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私という男 #8東京サンレーヴス時代

私を拾ってくれた東京サンレーヴス

私は次のチームを探していた。
福岡が経営難に陥ってしまい、来シーズンの目処が経たない為、地元福岡を離れざるを得なかったのである。

私は当時エージェントを雇っていた。
次の舞台もB1でプレーすることを望んでいた為、エージェントにも「B1でプレーしたい」と伝えていた。

しかし、5月が終わり6月も終わろうとしていた頃、私はまだどこのチームとも交渉すらしていなかったのである。

エージェントからは情報が下りてくるものの、核心までは行けず話が流れたりと歯痒い時間が続く。

私がもっと密にエージェントと連絡を取れば良かったと今では思うが、当時はエージェントにも「信じてくれ」と言われていたので私はジッと我慢して待っていた。

しかし待てど暮せど進展もなければ連絡すらなかったので、私は痺れを切らしエージェントに一言断りを入れた後、自分でもチーム関係者に連絡を取り始めるようになった。

私がB2まで範囲を広げて連絡を取り始めた頃には、ほとんどのチームはロスターを固めており、

「もっと早く連絡して来れば......」

そういう声が続く。

私は焦っていた。
その間の生活は本当に生きた心地がしなかったことに加え、家族にも相当なストレスを与えていたと思う。

「もしかしたらこのまま引退してしまうかも」

その可能性が出てきた時には、妻は私の前で泣いていた。

それから私はエージェントにはもう頼らず、躍起になって知人に連絡し始めた。

訪ねる人、訪ねる人に

「え?まだ決まってないの?もうとっくに決まってるんかと思った。」

と驚かれていたが一向に進展はなかった。

そんな中、新潟で一緒にプレーしていた佐藤優樹が今季から東京サンレーヴスに行くことが決まっており、彼に事情を話したところ

「ちょうど今GMとかと一緒に居るから話してみる」

そう言って電話を切り、再び電話が鳴ったときには

「是非、来て欲しいです」

と話がトントンと進んだ。

そうして私は滑り込みセーフとも言えるほど、多くのチームが新チームで始動している中、

2019年7月19日に東京サンレーヴスに移籍したのである。

家探し

東京サンレーヴスにはホームコートも無ければ、固定された練習会場もない。

故に家を探すのも苦労した。

オフィスの拠点は「渋谷」と言ったものの練習会場は、

三鷹市
武蔵野市
稲城市

とバラバラにも程があった。

結局、悩みに悩んで三鷹市と稲城市に近かった神奈川県の川崎市に私は家を借りたのである。

そういう経緯でチームと合流したのは8月1日になった。


体育館は2時間まで

東京だからなのか、体育館はいつも2時間枠でしか取れなかった。

その為、荷物の運び入れから運び出し、練習する時間まで入れると、自主練する時間は殆ど残されていなかった。

ストレッチやダウンは通路でやっていたのだが、私は見られ方などを気にしていた為、そこに凄く違和感を感じていた。

今思い返すと、私が今まで経験してきた"プロ"という像とは少しかけ離れた環境だったなと痛感する。


駐車場代

東京サンレーヴスに移籍して一番最初に驚いたのは「練習会場の時間枠」ではなく駐車場であった。

私が練習に参加した最初の日、体育館に着き車を停めようと駐車場を探していたら、黄色いバーが入口を阻んでいた。

そう。
体育館を使うにはお金を払ってこの黄色いバーを上げなければいけないのである。

そもそも体育館に有料駐車場が併設してること自体、私は「マジか。」と思っていたが、

これも都会である"東京"に住む運命(さだめ)なのかと仕方なく駐車券を取るのである。

そしてこれがまた料金が高い。

2時間しか体育館の利用枠を抑えていないのに、終わって精算してみたら

「700円」

嘘でしょ。
私は愕然とした。

高い時には「1100円」もとられる日だってある。

これを毎日の練習で引かれていくと考えた時、私は眩暈がしたのを覚えている。

そして私は人生で初めて"プロ"なのに練習するためにお金を払う生活をこの日から余儀なくされていくのである。

驚くのはまだ早い。


開幕戦は自費で宿泊

開幕戦の会場は中央区総合スポーツセンターであった。

開幕戦の会場近くに家を借りなかったからだと言われたらそこまでなのだが、

調べると会場から我が家まで実に約1時間の距離があった。もちろんその間の高速代は自費である。

そこまではまだ文句もない。
しかし問題は開催時間にあった。

10月4日(金)に第1戦が行われたのだが、
その日のTIP OFFは19:00〜

そして10月5日(土)の第2戦に目をやるとTIP OFFが13:00〜となっていた。

一瞬、試合後に1時間掛けて帰って、次の日の11:00集合に間に合うよう家を出るかと考えたが......。

いやいや待て待て。

19:00から試合で終わるのが21:00だったとしてそこから家に1時間かけて帰ってご飯も食べてお風呂に入って洗濯もして......次の日は9:00には家を出る。

いやいや無理無理。
全然休めない。

そう思った私は仕方なく会場の近くにあるホテルを予約したのである。

もちろん自費で。


遠征は現地集合

最後にしんどかったなーと思うのは遠征の時の移動である。

今までのチームは新幹線なら新幹線でそこまでの行きをチームで移動するのが普通であった。
故に最寄りの駅までタクシーやらチームバスやらでまとまって動いていたが、東京サンレーヴスは違ったのである。

遠征時は現地集合。

この場合、新幹線に乗る移動なら我々は「東京駅八重洲中央口」に集合となる。

飛行機に乗る移動ならこの場合「羽田空港国内線第一旅客ターミナル2F出発ロビーCゲート近くの時計台②」が集合場所となる。

そしてこの場合も公共機関を使えばチームに経費精算として請求できるが、車で行くとなったら交通費も駐車場代も全て自費になる。

故に私は毎回家から
バス→電車で東京駅、羽田空港にはいつも高速バスで向かっていたのである。


ウエイトは各自

当時の社長は渋谷にトレーニングジムを運営していた。

その為、選手はそこを無料で使用できるのだが、我が家から渋谷に行くのはこれまた無駄に遠く、

ウエイトのためにわざわざ往復2時間もかけて行くのは効率が悪すぎた。

そしてこれは他の選手も同じであった為、トレーニングは各自に任せる方針になったのである。

また他の選手が日頃のウエイトトレーニングをどこまでしていたかは分からないが、私は必要な事だと思っていたので、家の近くにあった"NAS"のジムに月会費8000円を支払いながら通った。

しかし必要な経費と言えど「自分でお金を払ってウエイトトレーニングをする」という常識が私にはなかったので心境的には凄く複雑であった。


突如、練習に来ることになる誰かさん

このチームを語る上でもう一つ面白い事がある。
それはチームLINEで明日の練習スケジュールが送られてくる時に、

たまにだが、

「明日は◯◯が練習に来ます」

と送られてくる時がある。

たまにと言ってもシーズンを通して忘れた頃にこの案内が来るのだが、

ある時は「練習生候補の◯◯君が練習に来ます」

また、ある時は「◯◯大学の◯◯君が練習に参加します」

と連絡が入る。

ここまではまだ良くある事なので気にはしなかったのだが、

たまに訳の分からない理由で練習に参加してくる事がある。

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