多嶋朝飛という男
彼は間違いなく努力家である。
まだBリーグに統一されていなかったJBLとbjリーグがあった時代。
当時8チームしかなかったJBLは本当に狭き門だった。
現に私たちの代では6人しかJBLに入れなかった。
そしてガードが豊作だったこの時代に「多嶋朝飛」の名前はなかったのである。
彼がその数年後に北海道に入団して躍進するまでにどれほどの努力をしてきたか私には想像できない。
悔しかっただろうし焦っただろうし自暴自棄になった時もきっとあったはずだ。
彼自身、当時の苦労は口にしないが高校、大学と学生時代に全国に名を馳せた凄い選手にも関わらず、腐らずに自分を信じ続け地道に努力を重ねてきた結果、今の彼があるのだろう。
そんな彼は今では"たんたん"という愛称で親しまれ、Bリーグ界で彼の名前を知らない人はいないだろうというぐらい人気者になった。
レバンガ北海道時代では8年間もの間、北海道の顔として、またアイドル的存在としてファンの心を鷲掴みにした。
大学時代、同期だった私たちはお互いに自分の世界を持っていたしプライベートで一緒に遊ぶということはあまりしてこなかった。
それはお互いに家族を持った今でも変わらない。
ただ、2人きりになるとバスケの話や家族の話、大学時代の話から将来の話まで、同じ歳だからこそ見える景色も似ているのだろう、肩を並べて話せることが私は嬉しかったりする。
朝飛は大学時代からそうだったがあまり感情の浮き沈みがない。それが故に彼が激おこプンプン丸ムカ着火ファイヤーになったところを私は見たことがない。
きっと育ちが良いのだろう。
休日の彼を想像しようとするとサザコーヒーでコーヒーを飲みながら本を読む姿しか頭に浮かんでこない。
そんな朝飛がいつか自分の子どもを持ったらどうなるんだろうかと今から楽しみで仕方がない。
最後に一つだけこの場を借りて朝飛に言いたいことがある。
既にお気づきの方もチラホラいると思っているのだが、彼はワンプレーワンプレー毎に終わったあと、必ず前髪をセットし直す癖がある。
そこでいつも私は心配するのである。
ドライブする途中に前髪が気になっていたらどうしよう。
ディフェンスで前髪が乱れないために首を振る回数を制限していたらどうしよう。
と。
だからそんな彼に言いたい。
「俺のヘッドバンド貸してあげようか?」
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