天油

中性のバイ。エッセイと、半分フィクションの小説。LGBTQの話がほとんど。

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中性のバイ。エッセイと、半分フィクションの小説。LGBTQの話がほとんど。

最近の記事

あの時間はきっと花園だった

 10年ほど前、僕は中学生の女の子だった。大嫌いな制服のスカートに足を通し、大して楽しくもない学校へ向かう毎日だった。  僕は今でこそ自分がバイセクシャルであることを自覚しているが、そんな言葉が聞き慣れなかったあの頃、周囲の好きな異性の話に辟易していたように思う。そういうお年頃だから、求められるのは恋バナばかり。  嫌気が差した僕は、ずっと仲の良かった男友達に告白されて、なんとなく付き合った。好意を寄せられることは嫌じゃなくて、むしろ心地よかったから。  それでいて、自分が

    • お兄さんですか。お姉さんですか。

       その日は、ひとりで大好きなポケモンの映画を見に出かけていた。僕はいわゆる引きこもりで、目的を持って出かけることはなかなかないのだけど。  僕は自分の性別がわからない。戸籍上は女で、恋愛対象は男女共。小さい頃から漠然と違和感を持っていたのだが、大人になってもやっぱりわからないままだ。強いていうなら、ずっと子どもで在りたかった。性的な特徴が訪れる前の、少年の姿で在りたかった。  男になりたい、とはまた違う気がする。でも、女にもなりたくない。膨らんだ胸がいつだって憎かったし、伸

      • 少年

         懺悔。 ーーー  初めて身体を売ったのは大学生の時だった。大して栄えてもいない古い町に住んでいた私は、出会い系サイトに張り付いて初めてその相手をようやく見つけた。    金銭的にも、精神的にも、余裕なんてなかった。薄暗いパチンコ屋の駐車場に停めた車で、生きるための費用と引き換えに、女を売った。緊張したような気もするし、そうでもなかった気もする。よく覚えていないまま、またねと笑って知らない男の車から降りた。  そこからはよく覚えている。行為の最中は何も思わなかったはずなの

      あの時間はきっと花園だった