オンライン学習のいいところと、悪いところを教えてください。(オンライン学習を考える 第一回)
アダプティブラーニングに向いている
教育には大きくわけて二つの側面があると考えています。ひとつは、「知識の伝達」です。
たとえば算数を例にとれば、三角形の面積を求めるには、「底辺×高さ÷2」という公式をマスターすればよい。むろん、なぜこの公式ができたかという知識も大切です。
これらを伝えることは、オンラインでじゅうぶんにできます。
さらに、オンラインには、アダプティブラーニング(適応型学習)がしやすいというメリットがあります。
知識は、人によって理解度が異なります。三角形を例にとれば、「公式をようやく覚えた子」「じゅうぶんにマスターして、応用問題にかかってもよい子」「次の段階に進んでいい子」など、教室には、さまざまな子がいるのです。
従来の一斉授業だと、全員が同じことをしなければなりませんでした。しかし、オンラインなら、個別の課題を与えることが可能です。公式を覚えたばかりの子には、ひたすらそれを練習してもらう。応用できる子には、三角形をふたつ合わせたような図形の面積を求めてもらう。次のステップに進む子もいます。
オンラインは、個別の理解度に応じて学習の進度/深度を設定することが容易なのです。
オンラインとは孤独なシステムだ
とはいえ、いいことばかりではありません。教育にはもうひとつ、重要な側面としてコミュニケーションのがあるのです。オンラインではこれが薄くなってしまいます。
Zoomのようなシステムを使った場合、教室には自然に備わっていた子どもたち同士のつながりが失われてしまいがちです。教えたり、教わったりの関係も、教室なら自然に成立しますが、それも育ちにくくなります。先生からの個別のアドバイスやほめ言葉も得にくくなります。また、「自分は三角形の次の段階に入っている。それを自慢したい」と思っても、その機会が失われることが多くなります。ガヤガヤした教室は、それらすべてをはぐくんでいました。
オンラインとは、孤独なものです。
孤独であることが子どもに与える悪影響は、小さなものではありません。
たとえば、人はある程度の年齢に達すると、他人からの承認を必要とします。先生からよくがんばったねとほめ言葉をもらったり、こうするといいよとアドバイスをもらったり、友達がおまえすげえなと言ってくれることは、ことのほか重要なのです。それが自己の存在の肯定につながり、さらには「もっと勉強したい!」という気持ちをを抱くことにもつながります。
残念ながら、オンラインはこれを与えるのが得意ではありません。
どうすればいいか。数年前から、それを模索するようになりました。
(TENTO代表 竹林暁)
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