見出し画像

会社規程をChatGPT-4.0と共著する方法 (2023年4月版)

TL;DR

  • 本記事では、ChatGPT-4.0を活用した規程作成方法を紹介しています。

  • 対話型AIでの規程制作が所要時間短縮や体験向上に貢献するものの、制約も存在します。

  • 規程作成の新たな一助として活用を検討してみてください。

  • [AD]AI活用に積極的な会社TENTIALは積極採用中です!

はじめに

本ドキュメントの目的

ChatGPT-4.0(以下、ChatGPT)の応用範囲は広範だが、規程類の作成に関する言及は観測範囲では自分以外にはありませんでした。
その中、本ドキュメントを起点として、様々な規程作成のチャレンジが生まれ、ひいては私がもっと楽に規程作成できるTipsが登場することに期待しています。

なぜChatGPTで規程類を作成しようと考えたのか

筆者はスタートアップ企業のCFOであるため、会社の規程類を作成する仕事を担当しています。
また、ChatGPTを採用した、いくつかのエンジニアリングも行っている身であり、"可読性のある機械語の生成"という点でChatGPTが極めて優秀であると身をもって実感しています。

注意事項

  • ChatGPTの利用規約と、自社内セキリュティポリシーを確認して試してください。当社では、情報を何段階かに分類し、その中でも低位に位置づけられる情報のみをChatGTPに投入することができるとしています。すなわち、今回の取り組みで、

    • 個人情報や企業秘密はChatGPTに投入していません。

    • 開示可能な情報としての規程サンプル及び規程出力結果のみを投入しています。

  • ChatGPT-3.5と、ChatGPT-4.0で品質に一定の差があります。課金して4.0の利用をおすすめします。

  • 本ドキュメントはChatGPTの進歩等により、比較的早く陳腐化することが予想されます。

筆者が採用した共著の手法

概要

ChatGPTのWebUIから対話的に生成しました。
いわゆる「プロンプトエンジニアリング」は採用していません。
また、ファインチューニングも行っていません。なお、APIを通じたアクセスはChatGPT-3.5-turboが採用されるため、ファインチューニングが品質の向上に繋がるかはちと疑問です。

具体的なコミュニケーション

経営会議運用規定の作成を例に取ります。

あなたは優秀な企業内法務責任者です。
経営会議規程を当社向けにカスタマイズしようと思っています。
先ずは以下のテンプレートを理解してください。

[貴社内にあるテンプレートを挿入してください]
当会社の経営会議等はいくつか存在しており、以下にその分類(分解)を示します。
本規定では、各種経営会議である「XXX」と「YYY」を対象とします。
他にも経営会議等に含まれるものはありますが、この規程ではスコープアウトすることを何処かで明示すると良さそうです。

・経営会議等
  ・各種経営会議
    ・XXXYYY
・その他


次に、各種経営会議の概要等を示します。

▼ XXX[概要1][概要2][概要3]…

▼ YYY[概要1][概要2][概要3]

→ このプロンプトで一定良い結果が返ってきましたが、テンプレを守りすぎていました。更に良くしていきます。

ありがとうございます。規程のテンプレをかなり遵守してくれていますね。
ですが、規程のテンプレは、あくまで経営会議が1つしか無い時に便利なものになっています。当社は2つありますよね。
そのためテンプレを遵守しすぎるとわかりやすい規程にならないと思います。

ですので、一定規程テンプレを念頭に起きつつも、自由に規程を作ってみてほしいです。

→ このプロンプトのレスポンスでおおよそ自社向け規程になりました。最後個別の規程をリライトしてドラフトを完了させます。

良くなってきましたね。第2条 、第3条 で「以下の目的で設置される」とありますが、目的以外の事項も記載されているように見えます。この条をもう少し上手く書いてほしいです。

最後に手元にある生成済の規程を全て投げて、ドラフトをファイナライズしてもらいます。

ありがとうございます!良くなってきました。
あなたの現時点ドラフトを整理すると以下のようになります。
MECEを意識し、重複した記載事項などを削除して、ファイナライズしてください。

[これまで出力されたドラフトを記載する]

本手法のメリット

  • 作成にかかる所要時間は、0~30分、全工程の0~20%程度改善したと思います。

    • ChatGPTによるドラフトで30分程度を所要しました。

  • 自然な言葉で対話するので制作体現が良いです。

    • だれでも気軽に取り組むことができます。

    • 変に過集中に入らないで、ちょうどよいテンポで制作が可能です。

  • また、今回は違いましたが、全く手元にテンプレートがない際にゼロからテンプレを生成してくれます。そういった場合のプロンプトの例を示します。(規程というよりマニュアルレベルのカジュアルなものの方が得意です。)

これから、私の会社の規則を作ってもらいます。
お願いするのは、外部公開されお客様などの目に入る情報について、適切なレビューを経なければならないというルールです。
具体的には、以下のような掲載物が対象となります。
・ECサイトの内容全般
・広告のクリエイティブ
・広告のコピー

レビュー者と、レビューの観点は以下のとおりです。
1. マーケティング部門長による全般のチェック
2. 法務部門による薬機法・景表法など法令対応チェック
3. 顧客体験責任者によるブランド観点チェック

レビュープロセスは、BOX Relayやバクラクワークフローを用いますが、その限りでは無いようにしてください。

以上情報を踏まえて、あなたなりにも必要だと思う条項を追加しながら、5~10条程度で構成される規則を作成してください。

本手法のデメリット

  • 元の規程テンプレートが優れている場合は、あまり意味がありません。

  • プロンプト一発で完成せず、対話で完成させていくので、ChatGPT-4.0の利用上限(執筆時点で25回/3h)にすぐに引っかかってしまいます。

  • 生成を待つ時間が30秒程度存在します。積極的に過集中をしたいタイプには向いていないかもしれません。

最後に

筆者の使用体験を通じてではありますが、規程類のテンプレート生成や、一定の自社向けチューニングにおいて、大規模言語モデル(LLM)の活用は既に実用的であるとわかりました。
まだ規程作成工数の大幅な削減は出来ませんが、作成体験自体の改善は感じられます。

今後、ファインチューニングへの取り組みや、より高度なLLMが登場することにより、規定作成の分野、その作成体験は今後1~5年で大きく変化していくものだと考えています。

非エンジニアリングの領域では、法務・コンプライアンスは特にLLMと相性が良いはずですので、CFOから規程作成の仕事を奪ってくれることを期待しています。

もちろん、人間に奪ってもらっても構いません。
ぜひ、こんなコーポレート組織で働きたい方は、当社にご応募ください!
リクルートページ:https://recruit.tential.jp/

この記事は筆者のQiita記事の転載です。