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ふとんの中怖い

いぬうた市に、夜の帳が下りました。
それはそれはもうすっかり下りました。
なので、きゅん君と、ぐーちゃんはそろそろ、
お休みの時間です。
2階の寝室のベッドには、すでに飼い主は寝ていて、
きゅん君は、「ぐー、おやすみ」と当たり前のように言って、
飼い主のふとんの中に入っていきました。
それを見た、ぐーちゃんは、
ちょっと信じられない気持ちになりました。
「きゅんはまだ知らないのね。おふとんの中がどれだけ怖いところかっていうことを。ぐーもこの間まで、移転届を、おふとん中にしたい程、気に入っていたけど、まさか、まさか、あんなことが起こるとは。それ以来、ぐーはもう、おふとんの中はこりごりよ。ぶるぶるぶる。ああ、思い出しただけで、あの時の恐怖が甦るわ。だから、今の、ぐーの住所は、絶対おふとん中以外御中よ」
と、ぐーちゃんは、それを心の中で、言ったつもりでしたが、
思い切り声に出ていました。
なので、ふとんの中の、きゅん君に丸聞こえだったのです。
「何を長々とずいぶん怖いこと言ってくれちゃってんのさ。その怖いとやらの、ふとんの中に、今、僕はいるんですけど。しかも具体的なことは何も言わずに。だから物凄く気になるんですけど」
ふとんの中から、きゅん君の声が聞こえます。
「あっ、あれ。きゅん。聞こえてたの?それは失礼。ごめんなさい。でも今のは、あくまで、ぐーの独り言だから全然気にしないでいいのよ。あくまで、これは、ぐーの個犬的意見だから」
と、気にしないで。気にしないで。
を連発する、ぐーちゃんですが、
分かった。じゃあ、気にしないよ。
とはやっぱりならないようで、
「と、今更そんなこと言われても、それはもう無理だよ。気になって仕方ないよ。何があったか早く教えてよ」
と、きゅん君は、ぐーちゃんに実際何があったかを聞きたがります。
しかし、ぐーちゃんは何故だか、それを焦らします。
「きゅんは、おふとんの中で、丸まって、おまんじゅう気取りのおまんじゅうライフを満喫しているようだけど、本来おまんじゅうは誰かに食べられてしまうものなのよ」
この、さも意味ありげの勿体ぶった、ぐーちゃんの言い方に、
どんどん、きゅん君は、じれていきます。
「回りくどいこと言うな!何があったんだよ!早く核心を言ってくれ!」
それでも、ぐーちゃんは、
「きゅん、知ってる?おまんじゅうには味噌味のおまんじゅうもあったりするのよ。一方、脳味噌って言葉も味噌ってつくわね。果たして、これが偶然かしら?」
と、意味は分からないのですが、何やら不気味なことばかり、
ぐーちゃんは言うだけなので、
「何?何?何?何それ?ぐー、怖い!怖い!怖いよ。もしかして、ふとんの中にいたら、誰かに脳味噌食べられちゃうの?げげっ!」
と、まだ何にも分かってないのに、
どんどん恐怖が襲ってきて、
ふとんの中がだんだん怖くなってきて、
ぶるぶると震え出した、きゅん君です。

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