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シャンプー中逃走

「私はある日、ある罠にハマった。しかし私はその罠を見事にかいくぐり、現在、私は逃走中である。一緒に逃げた、ぐーと共に」
そんな、ちょっと映画やらテレビドラマの主人公に感化された、
いぬうた市は、きゅん君のナレーションで始まった、
今回のお話は、ドッグランでホコリだらけとなった、
ふたりを洗うべく、ママがお風呂場に帰宅後直行させ、
シャワーでお湯をかけかけ、シャンプーもかけかけして、
さあ、いざ!と、まずは、
ぐーちゃんのボディを泡だて始めた時、
きゅん君が、ぐーちゃんに集中していたママの目を盗んで、
ちょっと開いていた、お風呂場のドアの隙間から、
猛然と逃げ出したのでありました。
そして慌てるママの手を潜り抜け、
ぐーちゃんも素早く、きゅん君のその後に続き、
そうして束の間の脱走劇が開幕したのです。
「やったな!ぐー。僕たちはあの忌々しいシャンプーからお別れすることできたぞ!」
「ぐーはドライヤーさんの風と相性悪いから、シャンプーの泡だらけになのは、何とか我慢するー」
「大丈夫だよ。そんな泡は、走っていれば、いずれ吹き飛ぶ」
と走りながら、いい加減なことを言う、きゅん君です。
しかし、その走りは長くは続きません。
何故なら、きゅん君と、ぐーちゃんの家は、
そんなに広くないからです。
なので、行っては戻り、行っては戻り、を、
1階から2階にかけて、それを繰り返します。
しばらく、ふたりは家中を駆けずり回りました。
そしてママがそのふたりを追いかけます。
何しろ、ふたりは、びしょ濡れのまま脱走しましたから、
ふたりの行くとこ、行くとこ、水で濡れまくっています。
プラス、ぐーちゃんは泡まみれなので、
ところどころ泡が落ちていて、床はヌルヌルです。
飼い主はそれを拭いて回るだけで、
きゅん君と、ぐーちゃんを追いかけるのは、
ママオンリーです。
ママは時折、足を滑らしながらも必死で追いかけます。
しかし、なかなか、ふたりを捕まえることが出来ません。
とにかく、ふたりはすばしっこくて、やれやれです。
そのうち、ふたりの逃げる技術も巧妙になって、
やっと、ぐーちゃんを捕まえてたと思ったら、
それが泡だけだったという、分身の術を使ったり、
きゅん君は、近づいてきたママに、身体をブルブルして、
水滴を飛ばすという、目くらましの術を使って、
逃げおおしたりして、小一時間そんなバトルが、
繰り広げられたのです。
「どうする?ぐー、もうすぐ、ご飯の時間だ」
まだまだ逃げまくっている、きゅん君が、
ぐーちゃんに言いました。
このまま逃げていたら、ご飯がもらえないことに、
ふと気付いたからです。
「ぐー、めちゃんこ、お腹空いたー。それにもう逃げるのにも疲れたしー」
ぐーちゃんは、そう答えました。
きゅん君も全く同じ意見だったので、急に立ち止まって、
ママに大人しく捕まった、ふたりでした。
そうしてこれでもかというくらいママに怒られながら、
またお風呂に戻され、しばらく苦痛の、
シャンプーの刑を受けましたが、
その後は、めでたく釈放され、たんまりご飯を食べて、
ぐーすかと眠った、逃走犯きゅん君と、
ぐーちゃんの1日でありました。

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