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この星の物質は限られていて

今夜の、いぬうた市の夜空には、
いつもよりだいぶ多く星が見えている、
大サービスの夜で、そんな不思議な夜に、
きゅん君は、ひとりベランダにいて、
空を見上げていました。
賑やかな星々のキラキラ輝く姿に、すっかり、
きゅん君はいい気分で、しばし鑑賞を続けています。
そんな折、ふとベランダの端っこを見ると、
夜空の星々にも負けない程に、
キラキラ光るモノを見つけた、きゅん君です。
「あれは何だろう?一瞬、雪かと思ったけど、それには季節がだいぶ早いからね」
そう、独り言を言いながらも、それを見ていると、
それは、きゅん君に近づいて来るではありませんか。
「えっ、どうゆうこと?」
きゅん君、びっくりしていると、それは突然喋り始めて、
きゅん君、更にびっくりします。
「ご心配なく、私はここのお宅のホコリクズを回収しに来ただけですから。何、すぐ終わりますよ。でもここのお宅は、わんこの毛が多いですなあ。何しろ回収のしがいがありますよ」
よく見ると、それは小さい小さい人間の形をしていて、
しかも作業服を着てるではありませんか。
きゅん君のびっくりは続きます。
「いろいろ聞きたいことはあるけど、どうしてそんなモノを回収してるのさ?」
きゅん君の質問に、小さい人は答えます。
「また使えるからですよ。これらを私たちがある程度集めて、天に浮かべれば、蒸発したり、塵になったりするんですよ。ほらこうやって」
小さい人はそう言うと、その小さい手のひら、
いっぱいになったホコリクズを、ふっー。と吹くと、
みるみる天に舞い上がって行きます。
「でも、それが蒸発したり、塵になったからって何で使えることになるの?」
きゅん君の質問は続き、小さい人は答えます。
「巡り巡って、またいつか新しい命になるんです。この世のモノは、どれも全く消えて無くなる。っていうことはなく、この星を循環を繰り返しているだけなんです。その中で、くっついたり固まったりして新しい何かになって、そしてまた分解して、別のモノとくっついたりしてるだけなんですよ。だから大きく言えば、皆ひとつの命なんです」
きゅん君は、その大きい話を小さい人から聞きながら、
だんだん眠くなってきました。
意識が遠ざかるのを感じます。
いや、もしかしたら、もうちょっと、
前から眠っていたのかもしれません。
そして本格的に夢の中に漂い始めて、
そんな頭の中で、起きたら、この小さい人から聞いた話を、
ぐーちゃんにもしてあげようと思っていたのです。
「ぐーの奴、この話を聞いたらどう思うかな?さぞ、びっくりするだろうな」
と、くすくす笑って、きゅん君はそのまま、
ベランダで眠るのでした。

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