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皆、桜を待ち望んで

「やあやあやあ、僕、いぬうた市の、きゅんです。いぬうた市はここのところ寒い日が続いて、そのせいで、いぬうた公園の桜の開花が当初の予定より、大幅に遅れています。なのでこの間の週末の、いぬうた公園の様子といえば、寒空の下、それでも予定通り宴会を行う人たちが結構な数いて、お店なんかも花見客が来るのを見越して、気合い入っていたりして、とにかくみなさん、桜が待ち遠しいようで」
と、しみじみ客観的に、
ナレーションしている、きゅん君ですが、
そうゆう、きゅん君だって、
今どこにいらっしゃるのですか?
「僕?何を隠そう、いぬうた公園だよ。だって仕方ないじゃないか。飼い主もその桜を待ち望んでいるひとりなんだから。だから、今日は曇り空なのに、わざわざママと、ぐーも引き連れて、桜の様子を見に来たんだよね」
そうなんですね。
ぐーちゃんもご苦労様ですね。
「さっきの、きゅんの発言だけど、お正確には、飼い主は桜さんの様子じゃなくて、お花見客さんたちの様子を見に来たのよ。だから嬉しそうよ。結構な方たちが宴会さんしているのを見て。飼い主、ああゆう方たちを見るのが好きみたいよ」
あら、そうですか。
そんな変な嗜好を持ってるんですね。飼い主は。
「お祭りみたいで賑やかな感じが好きなんじゃない。全く、こちらとしてはいい迷惑だよ」
またまたー、きゅん君、きゅん君も嫌いではないでしょう。
そう言いながらも顔がにやけているではないですか。
「あっ、分かっちゃった。てへへのへ」
なんて、照れ笑いする、きゅん君です。
「それにしても桜の花さん、何でいらっしゃらないのかしら?」
それは、ぐーちゃん、先程、きゅん君がおっしったように、
寒いからですよ。寒いから。端的に言えば。
「えーっ?そうかしらあ?ぐー、それだけじゃないと思うんですけど」
何ですか?ぐーちゃん。
寒い以外に理由があるんですか?
「ぐーが思うに、桜さんとしては早く咲きたいのに、こんなにいっぱいの方々に見られて恥ずかしいのではないか?と思うのでありまっす」
恥ずかしいとな?
いやあ、さすがにそれはないのではないでしょうか。
と、きゅん君も、ぐーちゃんの推測に、
ちょっと納得なようで、
「確かにそうかもしれないよ。だってこんなに大勢の人の前で、僕だったら咲きたくないよ。
もっとひっそりと咲きたいなあ。僕だったら」
はあ、そうゆうものですかねえ。
でも仮にそうだとしても、
皆、桜が咲くのは口実に過ぎなくて、
ただただ宴会に夢中で、桜なんか誰も見てやしませんよ。
「本当だね。じゃあ、それを桜の木に言ってやればいいんじゃない。誰も見てないから、気にせず咲きな。大丈夫だよって」
きゅん君はそう言うと、桜の木を見上げて、
わわわーん!わわわーん!と吠え始めました。
すると続いて、ぐーちゃんも、
「ぐーも桜さんに教えてあげるー!」
と、わわわーん!わわわーん!わわわーん!わん!
と、吠えあげて、あっ、今、あの桜のツボミ、
ちょっと開きかけていませんか?
「どれどれ?あっ!」
きゅん君、ぐーちゃん、ふたり、声を合わせて、
「ああっー!」っとね。

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