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ぐーちゃんの七夕の願い

「これは、いぬうた市の、ぐーから、織姫さん、彦星さんへのご連絡です。今日は確か七夕さんですよね。ということはおふたり今日、お会いになるんですよね?その細かいスケジュールさんなどを、よろしかったら、ぐーに教えて頂けないでしょうか?」
と、七夕の朝、自宅のベランダから空を見上げて、
そうつぶやいた、ぐーちゃんです。
そうですね。今晩はたぶん雨は降らないでしょうから、
織姫と彦星は年に一回の逢瀬の日ですね。
でも、ぐーちゃん、そんな日になんで、
ふたりのスケジュールを知りたがっているんですか?
もしかしてふたりに会いたいと思ってるんですかね?
それはお言葉ですが、少々無粋というものではないですか?
せっかくの日なのですから、邪魔しちゃ悪いのでは?
と、ぐーちゃんに問うと、
ぐーちゃんはこう真剣な顔で言ったのです。
「違うのよ。ぐーは別におふたりの邪魔をしたい訳じゃないの。ただちょっとだけ会ってお聞きしたかったの。でも、ぐーは自由にはお出かけできないから、スケジュールさんの合間を見て、ぐーのおウチに来て欲しいのよねえ」
そうなんですか、ぐーちゃん。
でもそれだとますます難しいのではないですかね。
今晩の七夕は梅雨の時期の中では、
貴重な晴れだと思われますから、
ここ何年もおふたり会えてなかったのではないですかね。
だから話したい話も山ほどたまっているでしょうし。
すると、ぐーちゃんは言いました。
「そう、そこなのよ。年に一回しかお会い出来ないのもかわいそうなお話しなのに、お雨が降ったら、それも叶わないなんて、ちょっと酷すぎやしませんか?だから、ぐー、来年から短冊さんにお願いしようと思うのよ。織姫さんと彦星さんが雨でも会えるようになりますようにって。確か、年に一回、カササギさんがお天の川にお橋をかけるのだけど、これがお雨だとお川のお水がいっぱいになってお橋を渡ることが出来ないから、おふたりは会えないのよね」
確かにそうゆう話ですね。ぐーちゃん。
「だったらその時はお互い飛行機さんで来ればいいんじゃないかしら?もういい加減、カササギさんが作るお橋に頼っている場合じゃないと、ぐーは思うのよね。だからそのことを、ぐーは来年からママにお念力でお願いして、短冊さんに書いてもらおうと思う訳」
なるほど。だいたいの、ぐーちゃんの、
やりたいことは分かりましたが、
別にふたりに会わなくても、
お願いは出来るのではないですか?
何で忙しいスケジュールのふたりに、
聞く必要があるんですかね?
あっ、分かった。
もしかして、ぐーちゃん、本当はふたりは毎年、
お互い会いたいと思ってないんじゃないか?
と、そう疑っているんですね。
それで本当に毎年会いたいか?の確認をしたいんですね?
まあ、倦怠期というのは誰にでもありますから、
織姫と彦星だって、そうかもしれませんし。
と、この言葉に猛然と反発する、ぐーちゃんです。
「バカなこと言わないでちょうだい!ぐーはただおふたりが飛行機さんが大丈夫かを聞きたいだけよ!もしかして高所恐怖症さんかもしれないじゃない!だからお願いする前にそれだけは直接聞きたいの!」
と、ぐーちゃんの顔は実に真剣でした。
でもそれだったら、空に向かってスケジュールを、
聞こうとしたみたいに、
おふたり、高所恐怖症ではないですか?
と聞けばいいような気もしますし、
そもそも飛行機でなくて、
カササギにもっと立派な橋を作ってもらうとか、
いろいろ言いたいことはありますが、
それはまあ置いておきましょう。
本音は、ぐーちゃん、きっと織姫と彦星に、
会ってみたいのではないでしょうか。
今晩、ぐーちゃんの言葉が天に通じて、
ふたりが会いに来てくれるといいですね。
その姿を見てみたいものです。
織姫と彦星とぐーちゃんのスリーショットを。

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