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風のいろんな音を聴け

風が強い日の、いぬうた市です。
きゅん君と、ぐーちゃんは自宅の2階のベランダで、
風の音を聴いています。
よく耳をすますと、一概に風といっても、
いろんな風の音がするようで。
「あっ、今、風さん、ぴゅーぴゅぴゅぴゅうーって言ったわ」
ぐーちゃんが、吹いた風の音の再現をしました。
「ぴゅーぴゅぴゅぴゅうー。ぴゅーぴゅぴゅうー!」
と口を尖らかしてマネをします。
「それはちょっと冬の北風気味の風だね。今の季節の南風だと、そんなに突き刺さるような感じじゃなく、その代わりもう少し強い感じの音がするよ」
きゅん君、何だか風の評論家みたいですね。
「そうさ。僕くらいになると、そうゆうことはすぐ分かるのさ」
それは。それは。おみそれしました。
「何でも聞いてよ。風のことだったら」
あら、大丈夫ですか?大きく出ましたね。
ちょっと調子に乗ってませんかね。
すると、ぐーちゃんが、
「じゃあ、きゅん。次吹く風さんのマネをしてよ」
と、言うと、鼻息荒く、
「お安い御用さ。任せておけよ」
と、自信満々な、きゅん君です。
その時、強い風が吹きました。
さあ、出番ですよ。きゅん君。
今吹いた、風の再現をお願いします。
すると、きゅん君、ゴホン!の喉の調子を整えてから、
「ザザザザザザザァーザァーザァー!」
と一息で言い切りました。
そして、何故か得意顔です。
それらが大変に気に入らなかった、ぐーちゃんは、
クレームを入れます。
「きゅん、それは風さんに揺れる木の葉さんの音では?」
それを言われた、きゅん君は、ぎくっ!
と、
痛いところを突かれた顔になり、
これは、きゅん君をやり込めるチャンスとばかりに、
「えっ!どうなのよ?どうなのよ、そこのところは?きゅん。黙ってないで、はっきり答えなさいよ!」
と、詰め寄り、
きゅん君は、「いやあ。いやあ」
と、笑って誤魔化そうとしています。
そこに、また大風が吹いて、
その風の中に小さな小さな男の子がひとりいて、
「君ら、楽しそうだね。僕もその遊びに混ぜてくれよ」
と、言ったと思ったら、
「ぶろろろたったったー!」
今まで聞いたことのない風の音のマネをしたのです。
きゅん君も、ぐーちゃんも、その擬音に、
びっくりして、
「これは斬新だね。僕が聞いたことがない風の音だ」
と、素直な感想を言うと、
「風はまだまだいろんな音があるよ。これからも風をよろしく。一緒に遊べて楽しかったよ。またね」
と言って去って行ったのでありました。
その子は風に乗って、あっという間に見えなくなりましたが、
その子の行った先をしばらく、きゅん君と、
ぐーちゃんは不思議そうに見ていて、
「あの方はきっと風さんのお子さんね。ぐー、会えてよかったわ」
と、しみじみ言って、きゅん君も、
「そうだね」
と、言って、いぬうた市は夕方を迎えようとしていました。

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