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ミッション

「こちらポンタ、応答せよ!」
「こちらコンタ、まずいことになった。タンタが敵陣に一人で乗り込んだ」
「なんだって!?」
「すまない、俺が目を離したすきに...どうする?」
「大丈夫だ。作戦は遂行する」
「無茶だ!これは3人でのミッションだ。一人欠けた今、作戦は中止すべきだ」
「奴のことだ、黙って捕まるとは考えにくい...何か策があるのだろう...」
「策だって!?じゃあ奴はわざと突入したと言うのか?」
「ああ、きっとそうに違いない」
「おまえともあろう者が、えらく奴を信用しているじゃないか、奴は一体何者なんだ?」
「...草津で一緒だった」
「草津だと!?それじゃあ奴があの...」
「ああ...」
「そうか...そいつは驚いたな、奴が...。なら、はじめから俺らはただの見張り役って事か...」
「そういうことだ...すまんな、"脱衣のキツネ"のプライドを傷つけて...」
「フン!今日のところは奴に花を持たせてやる。"望遠のタヌキ"様のおメガネに叶った男の実力、しかと見届けてやるぞ!



2016年 -草津-

"ターゲットは草津。同志ヨ集結セヨ"

夏の終わりに掲示板に書き込んだ。私は新しいレンズを手に入れたばかりで、一刻も早く性能を試したくウズウズしていた。

-スペシャリストが必要だ-

あいにくキツネは湯布院だと言う。箱根の時のような息のあった連携を期待したが仕方がない。彼とは分野が違うが"脱衣"と言う部分では目的が一致している。彼は衣を、私は衣の中身がターゲットだから争う必要こともない。"競泳のブタ"や"糞尿のベビ"とは反りがあわなかった。

結局、私は掲示板で知り合ったタンタと言う男と組んだ。"名"はまだないと言う。腕前もわからぬ男と組むのは、いささか不安だったが、彼は真っ直ぐ澄んだ目をしていた。その眼差しに宿る熱意が決め手となり、我々は紅葉を待たずに秋の草津に集結した。


続く

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