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リトル・マーメイドの1と2を見た

はじめに

先日、必要に迫られて「リトル・マーメイド」を観ました。
タイミング的に丁度実写版の公開時期だったのですが、そちらとは特に関係なく、でもそんな時期だからレンタル多分狩りつくされてるだろうなーと思ってディズニープラスに入りました。クリミナルマインドが全話あって大変良いサービスですね。そういえばDVDを再生するとシンデレラ城が出てくるタイプの作品だった。

1については小学生の頃に一回観たことがあるのですが、その時も必要に迫られてだったので、追い詰められないと「リトル・マーメイド」を見ないというところについて全く成長してないなと思いました。なお当時は雑なハッピーエンドと雑な悪役にバチギレした記憶しかなく、作品の詳細についてはあまり覚えていませんでした。
原作であるアンデルセンの「人魚姫」については、クソ辛気臭い話だな、という認識で、あんまり好きなわけでもなかったのですが、おとぎ話にしては「悪役」がいないところはかなり良いと思っていたので、魔女を悪い奴にして倒して終わりにしたところが当時はすごく嫌だったんですよね……だって原作の魔女はそういうのじゃないじゃん……
でも成長した今になると、あれをそのまんまアニメ化されたらそれはそれでちょっとなーってなるのも分かるんですよね……すごい魂の話とかしてくるし……

2は存在と概要は知ってたんですけど観た記憶がないです。3とテレビシリーズは存在も知りませんでしたが今回は必要なかったので観ていません。たぶんまた追い詰められたら観るのではないでしょうか。

以下はなんか感想とか思ったことをダラダラ書きます。


感想

原作

オチがハッピーエンドとか悪役云々はド今更なので気にしないことにして触れないのですが、改めて見たところ、記憶よりも原作を踏まえた描写が多くて少し驚きました。
大きいところが全然違うので、最早「人魚が地上に行って王子と色々する」くらいしかなぞってない認識だったのですが、細部が案外原作を意識してるんですね。逆に細部が省略された小さい子向けの絵本版とかだとあんま掠ってない感じになってしまう。

原作はここから読めます。

王様の髪に刺す花が赤っぽいのは原作から拾ったのかな、とか、王子とアクティブにお出かけしたりとか、お出かけ中に小鳥たちが歌ったりとか(これは単にいつものディズニーな気もする)。魔女の住処や王子のお城など、場所の外見描写も確かにこれを映像化するとああなるのかな、という説得力があります。

例えば王子の城の描写はこうなっています。

その御殿は、クリーム色に光をもった石で建てたものでしたが、そこのいくつかある大理石の階段のうち、ひとつはすぐと海へおりるようになっていました。

映画の城も、海に直結した階段がありました。まあ話の展開の都合上必要というのも大きいと思いますが。

そういえば人魚姫の名前をアリエルに設定してる時点でアンデルセンを通り越してパラケルスス(からのシェイクスピア)※まで意識してるような気がします。この名前でオチが原作通りなら出オチもいいところでしたね。

※16世紀の医師・錬金術師パラケルススは「妖精の書」で、地、水、空気、火にそれぞれ精霊を置き、水の精(ウンディーネ)については人間に愛されれば魂を得ることができると書いた。フーケの「ウンディーネ」やアンデルセンの「人魚姫」、ドヴォルザークの『ルサルカ』はこの設定に基づいている。人魚姫は結末で空気の精(シルフ)になるが、シェイクスピアが「テンペスト」で空気の精の名前として設定したのがAriel(エアリアル・アリエル)である。産まれたばかりのオーロラ姫に百年寝太郎と名付けるようなネーミングセンスをしている。

テンポ感

この辺りはさすがというか、短い尺でガンガン音楽入ってガンガン話進むなーと思いました。悪い奴が変装して出てくる場面とか時間的には本当に短いんですね。
同じくディズニーのシンデレラは延々ネズミがなんかしてる場面とかけっこう長く感じて苦痛だったのですが、こっちは大体メインキャラが画面にいたので比較的観やすく、そういう意味ではよくできた作品なと思いました。制作年が違いすぎるからこっちの方が現代人向けの波長で作られてるだけかもしれませんが。

地理

昔見たときはみんな涼しそうな服だし魚も色鮮やかだし暖かいあたりが舞台?って思ってたんですけど、王子の名前がエリックで、エリックって北欧らへんの王家に多い名前っぽいので、アンデルセンの出身地であるデンマークらへんが舞台なのかなーと思ってるんですけどどっかに設定出てるんでしょうか?
2だとめちゃくちゃ寒いあたりの海とそこまで遠くなさそうだったのもやっぱ北欧なのかなーと思ってる理由の一つです。
でも王様の名前トリトンだからギリシア神話なんだよな……全海域の王様だからそこはあんま気にしなくていいのかな……

体形

長さ計ったりしたわけではないので気のせいかもしれないんですが、人魚の下半身が人間の下半身より短い感じがしました。変身シーンのように、尾鰭の先までで足先までの長さになるという解釈なんでしょうか?人魚の下半身って人間の脚を収納して余りある長さに描かれるイメージがあったのでちょっと意外でした(着せ替え人形とかだと尻尾状のスカート着脱させるからこういうバランスにはなってないですよね)。
膨らみの頂点も尻より下だと思うので、意図的に人間の下半身っぽく見えないシルエットにしてるのかな?
すごいどうでもいいんですけどディズニーストア覗いたらユニベアシティの「リトル・マーメイド」シリーズがわけわからん生物になっていて不覚にも欲しくなってしまった。鵺とかそっちのジャンル?

物理特攻

一番驚いたのは1の悪役を倒す方法が王子の物理特攻だったところでした。
いや……けっこう全編マジカルな感じでお話進んでたじゃないですか……なんかとりあえず鉾でシュピッとしたら何とかなる感じだったじゃないですか……鉾を手に入れてすごい最強の存在みたいな雰囲気出してたじゃないですか……それでも船が刺さると死ぬのか……
この王子、2でもそれをやろうとしていたフシがあり、割と脳筋バカの印象になりました。つまり好印象です。
たぶん王子は船破壊ノルマを持っている。

色ボケ

アンデルセンの人魚姫は人間になりたがる理由に宗教的な側面が大きく、この作品はそこを回避するのに気を使ったんだろうな、と思います。その辺りを人間世界への強いあこがれに絞ったのはうまい改変だなと思います。
また、受け身でない積極的なプリンセスを描こうとディズニーさんなりに頑張ったんだろうな、とも思います。
でもその結果ちょっとアリエルちゃんだいぶこう……彼ってハンサムね!よっしゃ3日以内にキスや!は積極的っていうか何かこう……
まあ……謎に制限時間のついた原作よりハードモード設定ですしね……ガツガツいかないとね……
王子はコンプラがちゃんとしているのでそう簡単にキスしたりしないのが救い……いやキスしろの曲終わり邪魔されなかったらやってたなこいつ。

マグダラのマリア

ラトゥールのやつ。
あっこれダヴィンチコードで読んだやつだ!ってなりました。
よく見たらある、みたいな感じじゃなくてこんなに堂々と映ってたんですね。しかもけっこうそのまんまですね。この作品のキャラクターは割とデフォルメがキツいほうだと思うので並ぶとちょっと違和感はある。

天国と地獄

全く記憶になかったのですが、1作目・2作目ともに、カニと料理人が追いかけっこする場面で、オッフェンバックの『天国と地獄』が引用されていましたね!
この曲は無声映画の時代から追いかけっこシーンに使われていたと聞き及んでいるので、伝統に則った選曲ですね。
料理人のこの……フランス人のステレオタイプ的な描写というかは特に問題にならないんだろうか……という笑いづらさを感じてやまなかったのですが、フランス人キャラだからオッフェンバックが流れること自体は理にかなってはいる。

警備

2でとみに思ったんですけど海の方の国は警備ガバガバすぎませんか?
性善説は結構なんですけど2ってなんか割と緊迫した状況続きじゃありません?
あとトリトン王はもう即オチ2コマ王とかに改名してください。そして鉾を常に持ち歩いて夜も一緒に寝ろ。

報連相

お話にこれを言ったらおしまいなのは分かってるんですけど2はあまりにもちゃんと話し合え!という感情が抑えられなかった。
まあ1は王様聞く耳持ってないから仕方ないと思うんですけど、メロディちゃんに出生を秘密にする理由がよく分かりませんでした。なんかありましたっけ?話の展開の都合上?全部説明しておいた方がよくないですか?
というか城の立地が悪すぎてそこまで秘密にしたいならもう山奥とかに引っ越した方がいいと思う……原作に忠実な海直結階段がマイナス要素すぎる……

被捕食関係

これについてはすごい個人的な趣味の問題なのですが……

わたしは幼い頃、人魚は主に魚を食べていると思っていました。
そこに疑念が生じたのが、東映アニメ「アンデルセン童話 にんぎょ姫」を観た時です。この人魚姫、原作にはない要素として、お友達のイルカを傍らに連れています。会話もします。
親の趣味で「ジャングル大帝」漬けで育てられていたわたしは、この作品を観た際、会話可能な知能レベルのお友達をそう簡単に食べるわけにはいかないだろう……じゃあ何を食べて生きてるんだ……と悩み、その後同じく親の趣味で観た「バンダーブック」で一つの結論に至りました。命を奪わず、尻尾だけ貰って食べればいいんだと。魚の尻尾なら多分再生するだろうと。お友達のイルカからもすごく食料に困った時には分けてもらうのだろうと。
家で飼育していたエンゼルフィッシュが喧嘩してすごいことになってたけど隔離したら再生したのを見て、魚のヒレは復活するイメージが強かったのもあります。イルカは無理だと思う。
もう少し大きくなってから、イルカは魚ではなく哺乳類だということが分かったので、じゃあ哺乳類はお友達だけど魚類は食べているのかもしれないと考えなおしました。

問題が再燃したのはその後何年かして「リトル・マーメイド」を観た時です。
「ジャングル大帝」と「ライオン・キング」なんかはこう色々言われていますが、「リトル・マーメイド」もまた東映の「にんぎょ姫」の描写をいくつか清々しいほどそのまんま引用しています。
ディズニーさんはこう……先行作品を非常によく研究していらっしゃって……ヤバい。
いやこれ個々の描写に更に共通の元ネタがある可能性もあるのでなんともなのですが。人魚姫は派生作品が多岐に渡るため全く網羅できておらず、これ以上の言及は控えます。

まあともかく、こっちの人魚姫もあっちの人魚姫と同じくお友達を連れてるんですよ。でもなんかオリジナリティが発揮された結果なのか、こっちは哺乳類でなく魚類なんですよ。
じゃあやっぱ魚類食べることに問題が生じるじゃん……
とか思ってたらカニが直接的に「人間は魚を食べる野蛮な生き物」とか言い出しました。人間は魚を食べて人魚は食べないのか……人魚何食べて生きてるんだろう……
ワンチャン人魚は食事をしないファンタジー存在なのでは?って思ったんですけど2でめちゃくちゃトリトン王の食事の支度されてました。じゃあ駄目だ。

幼少期「リトル・マーメイド」をまあまあ観ていた妹に「小さい頃人魚が何食べてるのか問題気にならなかった?」って聞いたら「めちゃくちゃ気になってた」って返ってきたので割と全人類ぶち当たる疑問だと思います。

「リトル・マーメイド」の人魚が魚を食べないのは明言されているのでそこはこれ以上特にどうこう言うことではないのでしょうが、気になるのは人間が魚(カニ)を調理し、食べるというのがギャグとして処理されているところです。
意思疎通可能な生物同士の被捕食関係を扱うならめちゃくちゃガチでやらないとすごい怖いことになるなあと思っているので、なんかその辺がこう……面白ギャグみたいになってるのが……

その上で気になるのは、人間になったアリエルとかその娘メロディは魚を食べているのか?というところです。2はその辺かなり濁されてるなーという印象を受けました。お料理シーンがケーキだったり。
別にあの城の中の人たちは人魚が来てからは魚を食べない方向にしている、とかは有ると思うのですが、立地的に漁業が盛んで庶民はみんなだいたいお魚食べてるだろうなーとも思うので、2のラストの壁が取り払われて人魚と人間が交流してみんな仲良し……みたいな感じにされるとその後漁業関連やり辛そうだなーと思ったりはします。人魚と仲良くなっても魚を食べることについてはあんま気にしないのかな……

1と2を比較して素晴らしい進歩が見られたのは、虹の向きです。
虹って基本的に内側が紫で外側が赤なのに、ラストにトリトン王がかける虹が逆になってるのが気になって仕方なかったのですが、2だとちゃんと正しい色になっていました。
これは海の上に出ることを禁止していたトリトン王が海の上のことにちゃんと興味を持って、本当の虹を見るなどして学んだ結果が出ているってことですよね?そういうことにしておきます。
地上と海の間で相互理解が深まって本当によかった……

おわりに

改めて見たら記憶の中のイメージよりだいぶいい作品でした。人気作なのも頷けます。
幼い頃は原作と違うから悪!くらいにしか思っていなかったのですが、色々な派生作品に触れた今となっては、ちゃんとエンタメしててすごい!くらいに自分の視点が軟化していました。年齢を経た方がディズニープリンセス映画を素直に見られるようになるという新しい発見。
次は10年くらい前に開始2分地点でナレにキレて見るのをやめた「ラプンツェル」などに再チャレンジしてみたいと思っています。

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