高円寺上京ものがたり(四)
先日、久しぶりに羽光兄さんにお会いした。しかも、東京ではなく、北海道で。
北海道は落語芸術協会さんのお仕事。私だけが大阪からの飛行機で、他の方は羽田から新千歳空港へ行くことになっていた。
台風の関係で、前日に到着していた芸協のNさん、お囃子のいずみさん、そして羽光兄さんが、駅で待っていてくれて、三人中、二人が初めてお会いする方だったのに、なぜかちょっと泣きそうになった。
飛行機の出発も到着も遅れたし、結構揺れたし、やっぱり、飛行機の気圧が負担で途中、気持ち悪かったし、無事に到着してホッとしたせいもあるかもやけど。
成金メンバーの落語会に勉強へ行ったあと、江戸で上方落語を喋る方がいることを知り、地元が関西なので、京都で会をすると言うことでそこにも勉強に。
その時の上方落語の兄さんが、笑福亭鶴光師匠のお弟子さんで、羽光兄さんだった。
兄さんののおかげで、神田・連雀亭の二つ目メンバーに入れてもらった私。
兄さんのおかげで、東京で落語会を開催してくださる世話人の方も見つかり、年2回ぐらい上京して、四日ぐらい滞在することが多くなる。
じゃらんで、できるだけ安いビジネスホテルを検索すると必ず出てくる南千住。
浅草から近いし、いいやんいいやん!と定宿にしてから、大阪の西成っぽい場所だと聞く。
まあまあ、経験を積んだ大阪人やし、バストイレ共同ではあるものの、宿泊は女性フロアを選んでいたので、特に問題なく、なんなら、自宅はものが多いので、マットレスだけのシンプルな空間に憧れたりもした。
ただ、ある日のこと。
落語会の打ち上げに行き、終電で部屋に帰った私はそのまま部屋で爆睡してしまった。
起きたら深夜の二時を回っていた。
共同の大浴場は、深夜一時まで。
「しまった…。汗くせー…。けど、とりあえず、化粧落として、歯磨きしよう」と廊下に設置された、蛇口が五つぐらい並んだ共同洗面所で顔を洗い、歯磨きをしていた。
「明日のネタ、なにしようかな」とか思いながら、水を流して歯磨きをしていると、ふと目の前の鏡の、私の後ろに見知らぬ女性が映っている!!
歯磨きをしていたおかげで、叫びはしなかったけど、恐怖漫画の「ぎええぇええー」みたいな気持ちであった。
その女性は韓国の方っぽい髪型をしていた。
が、一切、言葉を発することなく、私を睨んでいる。
「え?え?これ、私にしか見えてへんの?」とも思ったけど、「もしかして、蛇口の水を出しっぱなしで、その音がうるさくて怒ってる?」とも思ったので、二回ぐらいサッと口を濯いで、歯磨き粉が若干残る爽やかなお口で自分の部屋にそそくさと戻った。
いろんな意味で怖すぎ。
そのあとも、共同のお手洗いに行くのが怖すぎて、リスぐらい素早く静かにトイレに行き、部屋に戻る。(リスが静かなのかは知らんが)
連泊だったので、翌日もビビりながら、そそくさと歯を磨いてできるだけ部屋から出ないようにしてたけど、その女性に会うことは無かった。
めちゃくちゃ怖かったので、以後、そのホテルに泊まることはなくなる。
そして、高円寺の蕎麦屋さんを紹介してもらうこと…
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