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新社会人に向けて

パソコンでの変換に慣れてしまい、漢字が浮かばずに焦ることがある。細かく分けて形を覚えておくのが一つの手だ。恋の旧字。「戀という字を分解すれば、いとしいいとしと言う心」。そっとつぶやきながら、昔は筆をとったのだろうか。

ねこふんじゃったなどで知られる詩人の阪田寛夫さんは、挨拶という感じを「むやみに食った」と覚えたそうだ。手偏に「ム・矢・三く・タ」

その阪田さんに、こんな詩がある。「昨夜辞書をひいておどろいた/挨は押し合う/拶も押し合う/挨拶とは押し合いへし合いのことだった(略)今朝からぼくは押しくらまんじゅう/押されて泣くな、とがんばってる」

朝からバスや電車でもみくちゃにされ、たどり着いた教室や職場では、慣れぬ勉強や人間関係で頭がいっぱい。心が折れそうな新入生や新入社員は、この時期に少なくないだろう。本人に代わって退職の意向を告げる代行サービスが若者に人気だと、先日テレビが伝えていた。

自分の選んだ道は間違っていたのか、でも間違っだとは思いたくない。そんな感情には心当たりがある。配属されたばかりの初任地で揺れ動いた。

あすから大型連休。悩みをいったん脇に置くいいチャンスだ。好きな本でも持ってどこかへ出かけて、そこで誰かと言葉を交わす。目先が変われば、世の中、何も押し合いへし合いばかりじゃないと気付く。「天気がいいですね」でも何でもいい。ちょっとした挨拶で、一日が幸せな気分になることはあるのだ。

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