家路にて
会社からの帰り道での出来事だった。
その日は土砂降りだったが、普段のように地下通路を通らず、地上を歩いて阪急梅田駅に向かっていた。(人混みが苦手だからだ。)
その道中に、JR大阪駅に繋がる長めの横断歩道があるのだが、信号待ちの集団に車椅子の人を見つけた。
傘を刺さず、眼鏡が濡れて前が見えにくい様で、仕切りに眼鏡をタオルで拭いていた。
私の帰路とは方向が違うので、最初はちらりと目に入った程度だった。
しかし、何かモヤッとした。
その信号待ちの集団は、皆傘をさしていた。
一人くらい、車椅子の人を傘に入れる人がいないのか。そう思った。
私は信号まで戻り、その人に話しかけてみた。
傘、入れましょうか?駅まで
話を聞くと、車椅子の電池が切れてしまい、両腕で車輪を回さなくてはならないから、傘をさせないでいた様だった。
結局、私が車椅子を押し、二人とも濡れずに移動できた。
そして、私は帰路に戻った。
信号待ちの集団は、ほとんどが会社員の様だった。
男女ともに、ちゃんとした服を着て、良い鞄を持って、時間的におそらく定時で帰宅しているであろう様子だった。
それほどまでに、余裕があるのに、なぜ傘に入れる程度のことができないのだろう。
数十人いて、一人も。
これは一例だが、通勤と退勤の時間だけでも、嫌というほど人の醜さを見て、感じて、悲しくなる瞬間がある。
同じ場面に、自分の彼女が遭遇したらどうするだろう?友達はどうするだろう?
そんなことを考える。
願わくは、私の大切な人達は、そんな醜さを許容しないでいてほしい。
そしてこれを読んだ人にも、同じ様な状況になったときに、躊躇わずに話しかけて欲しいと願う。
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