映画館、エンドロール、その後

私は時々、映画館で映画を観る。
大きな音と大きな画面で映画を観るのって最高だ。
手軽に感じる事ができる非、日常感を求めて映画館に足を運んでいるところもある。
大体の映画はエンドロールまで観る。
そして上映が終了し、ライトがつくと各々がゆっくりと席を立ち出口へと向かう。
そう、その時だ。
今回はその時の話。

映画を観終わり扉を開けたそこでどんな顔をすればいいのかわからない。

エンドロールまで観終わりスクリーンを後にし、出口へ向かうと大体の場合は扉が開かれていて、そこには劇場のスタッフさんが待ち構えている。
それは私たち客が出したゴミを回収し、見送る役割なのだが、
その場面にいつも困る。

どんな顔をすればいいのかわからない。

私は感動するであろう系の映画を観ると泣いてしまう事が非常に多い。
自分の感情が表に漏れてしまっているところに半強制的に対面せざるをえない商業という名の超現実。
先に述べたように私は直前まで非日常の中に居たわけで、なんならものすごく泣いていたし映画の世界にどっぷり浸かっていたのに急に現実世界になんて戻れない。
この感情をどうしろというのか。
トイレに行きたいくらいの感情は別として。

出迎えてくれるスタッフさんは大抵の場合「ありがとうございましたー」という軽快な言葉とともに我々のゴミを回収してくれる。
実際にその時わたしがどうしているのかというと、妙にニヤついてうつむき加減に軽く会釈をする。

なんと気持ちわるいことか。
嫌なのだ。そんな自分の姿が。

そう思っていた。ずっと。

でもこの間、違う気持ちが芽生えた。

「劇場スタッフになりたい」

映画を観に来る人、それぞれの人生でこの映画を観たいと思い今日という日に足を運んできた客たち。映画を観終わりそれぞれが抱える感情をその内側に隠せないまま見せるその顔、現実世界に戻っていく去り際の背中。

想像するだけでゾクゾクするのだった。


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