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コーデュロイの隙間

慌しい正月5日目ともなると、一体誰に新年の挨拶をしたのか訳がわからなくなるのでお馴染みの接客業。
加えて記憶力は年々落ち、しないよりはマシか、と来客手当たり次第に挨拶をぶちかまし新年から適当な仕事にエンジンを吹かす。ブンブン

休日前夜、布団に包まった時の多幸感。
身体を自力で支えなくて良いという喜び、
明日への不安が無いまま真っ直ぐ睡眠へと落ちていける安心感。
ありがとう休日。

睡眠を貪り、起きて、着替えて、日焼け止めを塗っていたら、ポタポタと落ちてしまった。コーデュロイのズボンに。
4ヶ所なので正確にはポタポタポタポタである。どうでもいい。
慌てて拭いたが手遅れだ。
茶色い生地の凸凹の隙間に一瞬で入り込んだ真っ白な日焼け止めは圧倒的存在感を放っていたが、着替えるのが面倒なのでそのまま出掛けることにした。
「面倒=最強」なので仕方がない。

遅めの初詣に馴染みの神社へ。
梵鐘を鳴らし、音と振動を身体で感じ目を閉じると脳内で和田アキ子の「あの鐘を鳴らすのはあなた」が再生される。
単純な脳みそに失笑しながら鼻歌を歌い、階段を登り、無事に参拝することが出来た。

どうか今年一年、穏やかに過ごせます様に。

すぐに帰るつもりだったけどなんとなく街をぶらぶらと歩き、好きな喫茶店に久しぶりに行ってランチを食べた。
好きな喫茶店が在る事に幸せを感じる。

街の図書館もスーパーも通常通り開いていて、もうお正月の雰囲気はほとんど感じなかった。

私は家に帰り、コーデュロイを洗う。休日は終わり、当たり前の様にまた労働が始まる。面倒な日々を乗り越え、あっという間に2月になり、街はバレンタイン色に染め上げられるのだ。

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