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1日3~4本!アイデア続々!手間なく高頻度の動画配信を維持するコツ|原町みゆき保育園

東京都新宿区にある原町みゆき保育園。約160名の園児が通う同園の理念は「共に育ち合う~子育ての喜びを分かち会うために~」。2023年5月に「てのりの」の運用を開始し、園の様子を動画で配信してきました。その頻度は、各クラス1日3~4本。これまでにアップした動画は540本を超えます。今回の記事では、主任の伊山健志先生に高頻度の配信を維持するコツやそれによる変化を伺いました。

お試し感覚ではじめた動画配信が
保育ドキュメンテーションに

原町みゆき保育園が最初に「てのりの」で動画を公開したのは、2023年5月。遠足の様子を園長自らが撮影し、配信しました。

「こんなに簡単なら、行事だけでなく日々の保育の様子も保護者に届けられるかも?」

その手軽さから動画配信に対する期待が高まったと教えてくれたのは、主任の伊山先生です。その後、同園は行事の配信に加え、幼児クラスで子どもたちの日々の姿を配信することを決意。それまでエントランスに掲示していたドキュメンテーションの役割を動画に移行しました。

(伊山主任)「これまで大きな園行事(遠足、運動会、お泊り会など)はデジカメで撮影した動画を編集して、DVDに焼いて配布していましたが、日常の様子は写真を撮り、選んだ写真にコメントを添えて掲示していました。でも、動画の方が圧倒的に伝わる情報量が多いですよね。また、『てのりの』を使うことで、編集や掲示の作業をする業務負担が減り、その分よりタイムリーに、内容の濃いものを届けられるようになりました

今では、「園だよりやクラスだよりなど月毎のお知らせはホームページで」「日々の保育の様子は動画配信で」「写真は掲示はせず写真販売で」というように、情報発信の形を分けて運用しているそうです。

導入時の懸念は、保護者の反応。
動画配信に移行するうえで配慮したこと

しかし、いざ運用をスタートしようとしたとき、やはり気になったのは保護者の反応。伊山主任は、「今までどおり、写真を見たいという方もいらっしゃるかもしれない」と不安もあったそうです。

そこで同園は、「写真とコメントによるドキュメンテーションの掲示」と「動画配信」を並行して実施する移行期間を設けることにしました。

(伊山主任)「掲示をなくしてしまうと、保護者の方が子どもたちの日々の様子を知れる機会がなくなってしまうので。今後、動画配信に移行することをアナウンスしながら、移行に時間をかけることにしました」

この間に配信した動画は、3歳児が日常の様子、4・5歳児が行事の様子。
すると、日常の様子を求める保護者が多く、保護者のアプリ登録(※動画配信アプリのため保護者側のアプリ登録が必要)も予想以上に順調だったそう。行事の様子についても、お泊り保育をきっかけに保護者間で口コミが広がり、登録がスムーズに進んだようです。

(伊山主任)「ふだん見られないような子どもたちの姿やタイムリーに情報を届けられるところがよかったみたいです」

移行期間は、園として配信する内容の方向性を確かめる貴重な機会となったようです。

日常の何気ない一コマもタイムリーに配信

高頻度の動画配信を維持するコツ
「基本は一発撮り。尺は短く、カット編集のみ」

動画の撮影や配信を主に行うのは、クラス担任の先生たち。
各クラスに1台用意されているiPadで、撮影から配信までを行います。

驚くのは、その配信数。
1日に3~4本の動画をクラスごとにアップしているといいます。

(伊山主任)「基本的に『一発撮り』『短尺』です。編集が必要になると先生たちの負担になりますし、クラスによって偏りがあっても困ります。30秒から1分半、長くても2分以内で撮影するようにしています。内容を確認する上でも、保護者が視聴するうえでもちょうどよい長さだと思います」

◎高い配信頻度を維持!原町みゆき保育園の運用ルール

  • 一発撮りで、短い動画を撮影する(基本は30秒~1分半。最長2分程度に)

  • うまく撮影できなかった場合は撮りなおす

  • 複数の場面を1本の動画で伝えたい場合は、必要なシーンを細かく撮影し、編集の負担を極力減らすようにする

  • 編集はカット編集のみ。テロップは入れずコメント欄に説明文を入力する

  • コメントはシーンの説明や子どもたちの思いを補足する説明を入れる

  • クラス担任の裁量で配信可(園長・主任は配信後に内容を確認する)

クラス担任が動画を撮影・配信

しかし、編集をしていないにもかかわらず、同園のタイムラインはどこか目を引きます。

(伊山主任)「実は、サムネイルになる冒頭シーンを意識して撮っているんですよ」

まず「寄り」を撮って、そこから引いていく。たとえば、プールの活動を撮るときも、遠景で子どもたちが水遊びをしているシーンからではなく、子どもたちが水をかぶって笑っている表情から撮影します。

(伊山主任)「表情がわかった方が『見よう』という気になりますよね」

編集なし、けれど目を引くのには、原町みゆき保育園の先生たちの工夫が隠されていました。

製作に夢中になっているのがひと目でわかるサムネイル

子どもたちが保護者におしらせ!?
負担が少ないからこそ、次々にあがるアイデア

「1本30秒でよい」。
こうした緩やかなルールは、動画配信に対する先生たちのハードルを下げるきっかけにもなっていたようで、慣れてきた今では、先生たちから動画に関するさまざまなアイデアがあげられるようになりました。

(伊山主任)「おもしろいなと思ったのは、『子どもたちが保護者に向けて準備物のおしらせをする』という動画があって(笑)。『この日は○○があります。○○の準備をお願いします』『わすれないようにしようね』って子どもたちが言うんですよ。かわいいですよ」

そこに込められているのは、「楽しく伝えたい」という先生たちの思い
保護者の方がお子さんと一緒に準備物を確認する姿を思い浮かべながら、動画の仕立てを考えたそうです。

ほかにも、お泊り保育の様子を配信した際には、「いま到着しました!」と子どもたちの笑顔や様子をタイムリーに届けたり、お昼寝の様子をタイムラプスで撮影したこともあったそう。子どもたちが徐々に寝始めて、先生たちが子どもたちの様子を確認しながら室内をうろうろする様子はなかなか見られない保育のシーンで、斬新なアイデアです!

子どもから保護者さんへのお知らせ動画(イメージ)

半年足らずで540本もの動画を公開。
「癒される」「保育園に関する会話が増えた」

幼児クラスでの運用をスタートしてから半年。
クラスごとに配信する日常動画は、「今日のすみれ組」「今日のひまわり組」「今日のゆり組」にそれぞれアップロードしています。

これまでにアップロードした動画は約540本、1本あたりの再生回数も平均40回に上ります(1クラス24~30名のため、何度も視聴してくれている方がいるようです!)。

(伊山主任)「うれしいですね。けっこう反響もいただいていて。『保育園の様子がよくわかる』『仕事の合間に見て癒されている』『子どもと保育園の会話をすることが増えた』という声をいただいています」

◎保護者の反響(一部抜粋)

  • 「保育園の様子がよくわかる」

  • 「仕事の合間に見て、癒されています。がんばって仕事ができます」

  • 「子どもと保育園の会話をすることが増えました」

  • 「ふだん見られないような子どもの姿が見られてうれしいです」

特に反響が大きいのは、寝かしつけや食事、先生と子どもたちのやりとりの様子を伝えた動画。親子で一緒に動画を見ながら話すことで、会話が増えたり深まったりするといった声も寄せられているようです。

先生と子どもたちやりとりがある一コマ(一部加工)

数十秒の動画にストーリーがある。
表れる子どもの育ち、保育者のまなざし

動画配信によりドキュメンテーションにかけていた手間が減り、園の情報をより頻度高く、より濃い内容で届けられるようになった原町みゆき保育園。配信を重ねるなかで、動画のよさを実感する機会が増えたといいます。

(伊山主任)「動画のよさは、子どもたちのいろんな表情を見ていただけることなんですよね。たとえば、子どもたちががんばっている姿って、笑顔じゃなかったりする。それを写真で載せてしまうと、『楽しくなさそう』『保育者が悪意をもってその写真を掲示しているんじゃないか』と捉えられてしまうおそれもある。でも、動画ならその前後をしっかり見ていただける。『この子は苦労したけどがんばったよ』ということが伝えられるんです」

ある子がおもしろい顔をしている。でも、実はそれは泣いている友だちを笑わそうとしている瞬間だったりもする。その数十秒に、子どもたちの思いや意図、感情が垣間見えるといいます。

1日3~4本をアップ。半年ですっかり習慣化した動画配信

さらに同園では、動画配信へのシフトにより手間が減ったことで、保育者の意識にも変化がありました。

(伊山主任)「(情報発信やドキュメンテーションに対して)『やらなければならないこと』という意識から、『保護者の方に何をどう伝えようか』という意識に変わりました。それに伴って、その時々の保育のねらい・目的をより意識するようになりましたね。保育の質の向上にもつながっていると思います」

幼児クラスを担当する先生たち

同園では、今後、乳児クラスでも動画配信をはじめる予定です。
「楽しいです」と語ってくれた伊山主任の表情に、動画配信の楽しさやそれによる変化を見出し、職員間で創意工夫を重ねていることも継続のコツなのだと感じました。

ーー伊山先生、ありがとうございました!

◎原町みゆき保育園
東京都新宿区にある認可保育園。0歳児から5歳児まで定員160名の子どもたちが通園。理念は「共に育ち合う~子育ての喜びを分かち会うために~」。4・5歳児が1泊2日で千葉や長野で過ごすお泊り保育は一大イベント。ほか多彩な行事を企画し、異年齢間の交流に積極的に取り組んでいる。
https://haramachimiyuki.com/