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ライフエンディングサポート

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人生最終盤を社会でどう支えるかを考えたい。死に関すること、介護のことなどをテーマにした文書をまとめます。
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#葬儀

「家族に頼れない私」自治体が支えるエンディング

(*この原稿は、毎日新聞WEBでの筆者連載「百年人生を生きる」2019年5月10日の記事です) 一人暮らしなどで家族に頼れない高齢者が増え、入院する際の身元保証や葬儀、納骨や死後事務などをサポートする事業が広がっていることを前回「最期まで安心できる『おひとりさま』の身支度とは」で紹介した。今回は、市民の「終活」を自治体が支援する、新たなサポートの形を紹介する。神奈川県横須賀市が2018年5月に始めた「終活情報登録伝達事業」(通称「わたしの終活登録」)だ。墓の所在地や遺言書の

最期まで安心できる「おひとりさま」の身支度とは

(*この原稿は、毎日新聞WEBでの筆者連載「百年人生を生きる」2019年4月24日の記事です) 入院時や施設に入るとき、身元保証人を求められる場合がある。あなたには頼める人はいるだろうか。また、自身が亡くなったあとのさまざまな死後事務手続きや遺品整理などを、託すことができる人はいるだろうか――。こうした身元保証や死後に必要な手続きは、以前は家族がすることが当然と考えられていた。しかし、「おひとりさま」高齢者らの増加を背景に、それらを請け負う事業が広がりをみせている。「生前契

「小さな共有」と「大きな共有」 社会の根本が壊れつつあるのでは

新型コロナウイルスと社会に関して、7月5日、哲学者・内山節さんの講演をうかがった。概略をまとめつつ、感じたことを記す。 参列者のいない葬儀コロナ禍における葬儀の風景からお話は始まった。感染拡大防止の観点から参列者がほとんどいない葬儀が広がっている。葬儀は亡くなった人のためのものであり、他者によってその死が確認されることで初めて人の死は死として成立する。その葬儀が行われなかったり、人がいなかったりする現実。そのことを、内山先生は社会のありようが根本的に否定されている、社会が壊

afeterコロナに残る葬送の儀礼とは

亡くなった人を送る、弔う儀礼として、最終的には何が残るのだろう。新型コロナウイルス感染拡大の中で、お葬式が大きく変容している。葬儀・告別式という流れは、今回のことがなくても葬儀の縮小化の中で風前の灯だった。家族葬が一般化して参列者は減り、「一日葬」や「直葬」などの広がりで、通夜から告別式までして火葬という形の葬儀は減っていた。それが今回のコロナ禍でとどめを刺された。 火葬場での別れの重要性感染して亡くなった方は、志村けんさんに象徴されるように、感染防止のために遺族が最後のお

終活から集活へ。「人生会議」への期待もこめて

ここ3、4年ほど、講演会など、事あるごとに口にする言葉がある。「終活から集活へ」だ。 人と集い、語らい、交流し、縁を紡ぐ。それを集活と言っている。終活は大事だが、いま多くの人が関心を寄せる終活には足りない部分があると思っている。そんな私の思いをインタビューしてくれた記事もある。 終末期医療の治療方針をだれが決める? 足りないものは大きく分けて2つ。一つは集活で、もう一つは終末期(人生最終段階)医療の治療方針に関する事だ。実は2つは密接不可分、表裏一体だと思うので、後者につ

終活から集活へ ライフエンディングを支えるのは「つながり」

漠然と思っていたことや、なんとなくしていた行為、存在はしていも社会的に共有化された名称がないもの。それに、ある日「名前」が与えられる。 「そこの森で出くわした、立ち上がると大きさが2メートル以上もある、毛むくじゃらで鋭い爪と牙のある動物」「ええっと、いまこうした課題があるので、かくのごとき対策が求められていると考えて、このように動いているんです」――。「名前」がない時にはいちいち説明が必要だったものが、「名前」をかざすだけで説明の多くが不要になる。便利になる。 「終活」と

生前葬が話題になったときにすべきこと

「生前葬」が時々、メディアで話題になる。最近だと、建設機械大手のコマツの元会長・安崎暁さんが、新聞広告で自身のがんを告知し、生前に自らの葬儀をしたことが報じられた。 広がらない生前葬 なぜ? 日本で生前葬が注目されるようになったのは「ターキー」こと、水の江瀧子さんが1993年に生前葬をしたのが契機だった。ちょうど、型にはまらない「自分らしさ」を生かした葬儀が注目され出した時期だ。その後、一般向けに生前葬を売り出した葬儀社もある。メディアで話題になるたび「いいかも」と、葬儀社

「忌引き中出勤」への違和感

死者のホテル  「死者のホテル」という言葉が使われ出したのは2010年。遺族が葬儀の段取りなどを決めるまでの間、遺体を冷蔵設備の備わった施設で預かる事業だ。それ以前も、葬儀社などには冷蔵設備があって遺体を預かることはあった。だが、専門施設を設け、それを「死者のホテル」とキャッチーなネーミングをしたことで、俄然世間の注目を集めるようになった。  近親者の死で混乱する中、慌ただしく業者や段取りを決めてしまうことで、葬儀をめぐるトラブルにつながることがある。だから、「死者のホテル」