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人生最終盤を社会でどう支えるかを考えたい。死に関すること、介護のことなどをテーマにした文書をまとめます。
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2020年7月の記事一覧

「正しさ・正義」の危うさ感じる ALS患者嘱託殺人事件

「ALS女性患者安楽死」事件と呼ばれるようになるのだろうか。京都のALS患者を、宮城と東京の医師2人が殺害した嘱託殺人事件のことだ。この事件には医師の傲慢さと共に、やり方もあまりに乱暴な印象を受ける。殺されたのがALS患者で、殺害したのが医師であるというだけで、SNS上での自殺幇助依頼に対して見も知らぬ他人が報酬と引き換えに引き受けて実行した、これまでにもあった殺人事件と本質はなんら変わらないように思う。だが、安楽死の問題としてメディアでは論じられるだろう。安楽死に関して思う

「命の選別」発言 優生思想の恐ろしさに対する想像力がない

れいわ新選組・大西つねき氏の発言に驚いた。発言の全文を荻上チキさんが文字起こしまでしてくれたので読んだ。 内容は端的に言えば、高齢者を「死にゆくままにせよ。介護も医療も無駄だから。それが社会のためだから」と言っているようにしか読み取れない。それを政治家になろうとする者が平然と口にする。つまり、政治によって、権力によって社会をつくりたいと考えている人物が、だ。 想像力や共感力の欠如に愕然とする。この発言に賛同する人たちに対しても同様だ。なぜ、そんなに簡単にいのちを切り捨てら

「小さな共有」と「大きな共有」 社会の根本が壊れつつあるのでは

新型コロナウイルスと社会に関して、7月5日、哲学者・内山節さんの講演をうかがった。概略をまとめつつ、感じたことを記す。 参列者のいない葬儀コロナ禍における葬儀の風景からお話は始まった。感染拡大防止の観点から参列者がほとんどいない葬儀が広がっている。葬儀は亡くなった人のためのものであり、他者によってその死が確認されることで初めて人の死は死として成立する。その葬儀が行われなかったり、人がいなかったりする現実。そのことを、内山先生は社会のありようが根本的に否定されている、社会が壊