海外MBAは人生の夏休みか?ポエム

じょぶん

2021年6月、コロナが長引く某国を身が引き裂かれる思いで去り、日本に帰国。同国事業を日本から担当していた頃は、出張で行っても渋滞に巻き込まれるのが常で1日の半分は車内に閉じ込められる故余り好きでなかった地ではあったが、結果的に去るのが寂しいと思える地になって良かった。ベーグルを縦に半分に切ろうとして案の定自分の指を盛大に切り、余りの出血に気を失ったところ駆けつけてくれた親友たちには感謝しかない。

翌週新卒以来世話になった職場を訪れ、最終出社を迎えた。入社早くから海外研修に出してもらい、研修終了後はほぼ横滑りで国内事業投資先に出向、そしてそのまま海外出資先へ出向したものだから、本社を訪れること自体がそもそも新鮮であった。最後の挨拶には世話になった方々が海外からも顔を出してくれた。慣れ親しんだものから一歩踏み出すのは何時も寂しい。の割には次の日スキップで髪の毛をブリーチしてとってもハッピー。中二病が尾を引いている。

そして21年8月に渡米。
アメリカに降り立ったのは幼少期が最後。古いものが大好きな動物占いたぬきなので、アメリカとは相容れない、ヨーロッパが大好き、と思って生きてきた。とはいいつつも、折角MBA行くなら本場のアメリカでしょというノリでアメリカ校のみ出願。正直記念受験であった学校に拾ってもらい、目出度く進学。(ほぼ)はじめてのアメリカ。はじめての東海岸。Uberを使うすらほぼはじめて。こちとらGrabとgojekしか使いません。アプリ、緑じゃないな、黒くて洒落てる。。。というところから早ほぼ3年。

長い前置きでしたが、MBA不要論が定期的に話題にある昨今、米東海岸MBAを卒業して1年が経ちそうな立場から、いろいろ思うことを振り返ってみました、というポエムです。筆者は似非帰国子女→私文(留学1年)→商社(駐在3年)→米東海岸MBA→米西海岸就職という経歴です。志は低めです。

けつろん

私にとって海外MBAは人生の夏休みを送ることが目的であったし、結果そうだった。然しながら、この人生の夏休みは必ずしもキャリアの停滞や逆戻りとはならない。プラスやチェンジするチャンスはある。ただこれは自己責任。誘惑ばかりの環境で努力する必要があるのに加え、結局はMBA進学前の経歴が最も重要であるし、MBAは不況等のマクロ要因には勝てない。

自身の現在地を認識して、MBAへの期待値を適度に設定、MBAに費やされるお金と時間とのバランスを見極めて、海外MBAが果たして必要なのか考えることが必要と思う。


そもそも何故海外MBA?

MBAという学位に興味はなかった、が留学したかった。

学部時代に1年交換留学を経験したのだが、今でも1年に1回は会おうとする親友が複数人できたくらい、本当に良い経験をさせてもらった。ただただ、もう一回留学をしてそんな楽しい時間を過ごしたかった。そして行くなら2年。交換留学の1年は短すぎた。

商社でキャリアを築いていく事に不安があった。

商社あるあるである。私は今でも前職に悪い記憶があるわけでない。大変色々な方に世話になったし、キャラクター的にも向いていた自負があるし、醍醐味である海外駐在も早い段階でさせてもらった。ただ以下3点の漠然とした不安を常に抱えていた。
1. 扱っている商品に興味が持てなかった。あと30年、引退するまでこの商品についてずっと考えていくのかと思うと鬱々とした。所謂配属リスクというやつである。商社あるあるである。
2. 東京本社勤務がどうしてもしたくなかった。本社から5年程離れていたので、次は本社と予想していた。国内海外問わず出向先でずっと仕事をしていたかった。商社あるあるである。
3. 自分で自分の人生に責任を持ちたかった。商社勤務の醍醐味である海外駐在も、今後自分の行きたいタイミングで行きたい国に行ける保証は全くないことに不安があった。結局会社がこうといえばこう。自分自身で住む場所、仕事を決めれるようになりたいと思った。

あと~30年ノンストップで働くことに絶望を覚えた。

上述2. の懸念点に鑑みると、転職でもよいはずである。ただそれは断絶のないキャリアを意味する。あと~30年月曜日から金曜日毎日働くのかと思うと絶望した。小休止したい。

以上3点を統合して、海外院留学が最もしっくりくると思った。但し、私には学の専門性はない。多額のお金と時間がかかるのだから、自分のキャリアにポジティブに働く確率の高い学位にした方が良さそうだ。(似非)帰国子女なので英語はどうにかなる。幸いにも算数に苦手意識はない。コロナでGMATに費やす時間もできた。MBAはありかもしれない。そして最後の一押しとして当時の交際相手に挑戦を強く勧められたのである。ちょろい。多額の投資のくせしてそんなレベルの決意である。ただし円は2024年現在ほど安くはなかった。
2.の通り辞めたいという気持ちが強かったので、社費は検討しなかった。お金、なんとかなれー!

アメリカに志望校を絞ったのは、1. MBAといえばアメリカというイメージが先行、2. 周囲の尊敬するMBAホルダーが軒並みアメリカ校出身、3. 英語を伸ばしたいのでネイティブに囲まれたい、4. アメリカを避けて生きてきたのでここで行かなければ一生アメリカに行かない気がした、5. 2年留学したい、そんな適当な感じ。

受験自体には初IELTSから合格まで約1年なので、振り返るとすんなりいった方。詳細についてはこちらにあるので割愛。
受験相談は僭越ながら度々乗らせていただいておりますが、どちらかというと現在地が近い方、詰まり(似非)帰国子女や商社出身の方のお力によりなれるかと思います。老婆心乍ら、受験相談される際は自分と似たプロフィールの方を参考にした方が再現性が高くて良いと思います。

海外MBAで何がしたかったのか?そしてその結果。

友達を作って遊びたかった。

前述通りである。私は人生の夏休みを謳歌する為にMBAに進学した。
結果)達成度1000%。遊んでも遊んでも足りないもので、一生遊べるなと思った。MBA、めちゃめちゃ楽しいですよ。大人になった高校生っていう感じの毎日を本気で送れる。人生ではじめて、お金も(これ実際は架空だけど)時間もあるという日々。人生の夏休みである。人生の充実度が深まった。楽しい仲間たちと旅行して、パーティして、程ほどに勉強して、お互いの夢をサポートして、料理して、カラオケして、川沿いでのんびりするのである。
又、同級生たちは色々なところに羽ばたいて行くので、色んな業界の話をフラットに出来る頼れる仲間が世界各地に出来るのは結構本質的なメリットだと思う。特にアメリカ内では大都市ならどこにでも知り合いが出来るので、アメリカに腰を落ち着けるのであれば、良い選択肢な気がする。彼ら無しでの現在地での生活はとても孤独だったろうなと思う。

アメリカで就職先を見つけたかった。ついでにキャリアチェンジしたかった。

真面目な話。後ろ髪を引かれる思いがありながらアメリカに引っ越したのだ、ここまできたらアメリカで働いてみたい。アメリカはビザが色々大変なので、アメリカで働きたいなら卒業して直ぐアメリカで職に就くのが一番。職種は出来ればStrategyからキャリアチェンジしてPM。
結果)達成。PMにキャリアチェンジしたいという希望はMBA出願時から初心一徹していた。軸がぶれがちな人が多い(別に悪いことではない)MBAの中で、集中して就活に打ち込めたのは結果論良かったと思う。無事サマーインターンから内定という形でアメリカでお仕事を見つけた。前職からいきなりアメリカでこの仕事に辿り着くことは無理だったと思うので、これはMBAのおかげであるともいえる。幸運なことに、インターン就活をしていた2021-22年は未だテック不況が巻き起こっていなかったことも奏功した。(サマーインターン就活記はこちら

英語(喋り)もっと上手になりたかった。

幸いにも英語に不自由はないが、鍛え上げ似非帰国子女英語の為、もうちょっとだけ上手になりたかった。英語第一言語話者、第二言語話者のレベルは比較対象にすらないと理解していたので揉まれたかった。
結果)達成。さすがに上達したと思う。特にテストで計る積もりも気力も無い。TOEFLという地獄は2度と目にしたくない。英語試験からの解放というのが、現地に根差して生活を始めることのメリットの1つかと思う。英語レベルを確りあげたいなら欧州やアジアではなく(probably 除くイギリス)、アメリカMBAが一択と思う。ネイティブに囲まれるのが良薬である。口には苦い。

ゼルダ BoWを終わらせたかった。

結果)未達。かなりやったけど、終わらなかった。アクション難しいのよ。

そしておまけで得たもの。

  1. 在学中に大谷君のファンになった。
    2022年5月のレッドソックス3連戦。投げては7回無失点11奪三振、打っては2安打の試合を三塁側最前で観た。ファンになるしかなかった。特にWBCの生観戦は一生の思い出になった。当然ながら授業はサボった。

  2. フットワークの軽さ。
    アメリカ国内は近所に思える。

  3. なんとかなる精神。
    人生、多分なんとかなる。ただインサイダー取引はしないどこう。

海外MBAに行って失ったもの。

得たものばかりを話してもフェアではないと思うので失ったものにも焦点を当てる。

お金

言わずもがな。私の場合はMBA1年目は未だ円安が始まっておらず、円安インパクトは2年目だけ。2年で実際にどれくらいかかったかは(悲しくなるので)計算していないのだが、学費(奨学金deduction)+ 生活費 - サマーインターン収入で当時の大体の為替を当てはめると1,900万円くらいと見ている。150円でhypothetically計算をすると、2,600万円くらい。痺れる。また、これにこの2年間の機会費用と、前職を続けていれば購入出来ていたであろう持株分を考慮すると相当体調が悪くなる。
MBAをROI観点から見れば私の場合現状正直微妙である。そもそも前職の業績が余りにも良すぎるのが問題(渇いた叫び、FIELD OF VIEW)。そして卒業後の就職先次第でもある。但し、MBAの価値は金銭リターンだけではないし、その金銭リターンも短期間で計るものではないので。

日本の趣味との近さ

これはMBA関係なく海外に住む影響であるけども、もろもろの日本のIP達が大変遠くなってしまった。コナンの映画だって、ハイキューの映画だって、なかなかみれない。オーガポンのぬいぐるみだって、すぐ買えない。日本式カラオケだって、なかなかない。昔海外暮らししていたころに比べると、相当便利にはなったけど。

日本の家族、友人たちとの時間

これもMBAは関係ないし、駐在もしていたのでMBA行ったからと変わったわけではないのですが。家族の緊急事態にもビザの問題で間に合わなかったり、友人の子どもになかなか会えなかったり、お付き合いしていた人とうまくいかなくなったり、まあ色々あるよね。

もう一度MBAに行く理由

さすがにもうない。もう人生の夏休みがないかと思うと絶望。

海外MBAを志す乃至は進学する前に。

以上考慮したうえで、私は矢張り海外MBAは人生の夏休みであったなと思うし、それが目的であった。ただ、キャリアにマイナスにはならない夏休み。プラスになるかどうかは自己責任。お財布は間違いなくマイナス。

期待値を適度に設定すること。

  1. キャリア
    MBAは就職予備校である。但し、どんなトップスクールに行こうが、MBAはキャリアの妙薬ではない。もちろん、キャリアチェンジがperfectlyうまくいく人は一定数存在する。ただそれはその人が努力した且つ市況という運が良かったのである。この努力がなかなか難しいのである。少し話が逸れるが、米MBAに多様性はあるか?という議論に数時間は容易に費やせる自信があるのだが、とりあえずある程度の多様性は存在するという仮説で話を進める。ご家族が大変リッチな方、社費で来ている方、起業一本の方、この方々に就職活動という文字はない。そして遊ぼうと思えば遊び尽くせるようなこんな環境下で、就職活動に真剣に向き合い努力するのは意外にも難しい。就職予備校なのに。その実、多数の同級生は遊び尽くしている影で確り努力しているのだが、その努力は余り表面化しない(弊学では優秀で要領の良いタイプが多いように思えた)。如何に自分を律し、努力出来るかが肝要であろう。
    また、MBAに行くと、自分には無限大の可能性があるように思えることがある。頑張れば如何なるキャリアチェンジも出来るような幻覚が見えることがある。これは幻覚である。MBA就活は前職の経験ありきであり、学校のネームバリューではない。新卒就活でないのだから、MBAで頑張ったことなんて聞かれない。前職経験だけ。弊学ではこれを少し勘違いした同級生が、"私はこの学校を出ているのだから就職先は引く手数多"と傲慢にも信じ込んでいるケースが散見された。このマインドセットに不況が重なり、結果彼らが就職活動に苦労したのは言及する必要はないだろう。

  2. アカデミック
    どのインターネットでも言ってますが、グロービスで学べるよ。アカデミックのintenseさは本当に学校によりけりで、金曜日がデフォルトでお休みの学校もあったり。ケースメインか講座メインかでも全然違う。出欠の有無。私は記念受験で受かったところに進学したので、選ぶも何もなかったけれども、結果ケースに日々追われて意外にアカデミックにも時間を費やす羽目になった。それはそれで良い訓練になって良かったけれども。ここの期待値設定は大事。

  3. ネットワーキング(友人関係)
    マンモス校や都市校かによってネットワーキングへの期待値は可也変わると思うので、学校選びのクライテリアの1つとして考慮するのが良いと思う。弊学はマンモス校だがロケーションはまあまあなので、生徒が殆どキャンパス内乃至は周辺に住む。マンモス校の良いところは、どんな人でもきっと気の合う友人が見つけられるところ、数々の就職先にアルムナイがいるところ(但し同級生同士での戦いが発生する)。キャンパス周辺に同級生は皆住んでいるので、基本的に皆MBAでの2年間にdevoteするのも良い点と思う。
    尚、何処の米MBAも留学生比率を推していると思うが、余り信頼しないほうが良い。アメリカ国籍なのに、合格可能性が上がるからともう一つの国籍でアプライする学生等は数多である。学部からアメリカというのがデフォルトとも思う。詰まりあの留学生比率は現実を反映していない。

  4. 価値観への影響
    MBAが"価値観"という点からa life changing experienceであるという人がいる。そしてそれを期待してMBAに進学する人がいる。私はこれに対してNO AND YES。
    NOから。進学するタイミング。目安であるが25-27歳くらいでMBAに飛び込んだ同級生は、drasticな価値観変化を経ているケースが多いように感じられた。これは単純に人格形成が未だ終わってない段階で刺激溢れる環境に身を置いたからであろう。30ちょいで飛び込んだ私は遅すぎた。今更私の人となりは変わらない。19歳の時の交換留学がよっぽど人格形成に影響を与えたと思う。次点、海外経験の有無。当然であるが、海外経験がはじめてであればあるほど、海外進学することは刺激的な経験となるだろう。生憎当てはまらなかった。
    YESについて。あまり変わっていないと今さっき述べた価値観だが、1ミリたりとも変わってないとは言えない。具体的には3点。日本人という自覚が強くなった。これは正直意外だった。弊学はケースというacademicの形式上、日本が関連するケースでは最後に態々コメントをする時間を設けられたり、めちゃくちゃ寿司を期待されたり、日本への団体旅行を企画したりする。あ、私日本人なんだと強く認識させられる経験に非常に恵まれたのである。2点目、自分の幸せは自分が定義すると思うようになった。他人に定義される幸せは私の幸せではないのである。未だに難しいけど。就職予備校であるMBAだが、キャリアが人生の全てではないと、多くの教授が口にするのが印象的であった。3点目、vulnerability。どうやってvulnerableになれるか。他人のvulnerabilityをどう受け止めるか。それらを如何に関係性の向上にcontributeさせていくか。2年間、遊んでいるだけのように見えて兎に角沢山のことが起きるので、色々考えさせられることが多いのです。生憎語彙力が足りない。

まとめってないまとめ。海外MBAって結局なんだったんだ。

正直無事卒業し、結果的に希望していた職を得た現在も、大金と時間を叩いて得たこの学位の価値が私には余りわからない。もちろん、前職にいたままであったら、この職を得る未来はなかったのは確かであるので、そういった意味ではキャリアチェンジをする術としての価値はあった。でもそれよりも、暑苦しい且つtangibleではないので心苦しいのだが、この学位を通じて得た友人たちとの人生の夏休みが、価値だったなと振り返って思う。この友人たちはあのまま商社に留まっていたら決して出会うことのなかった友人たちであり、もうそれだけで良いじゃん。ならMBAじゃなくてもよくない?とセルフツッコミするが、MBAは何だかんだ就職予備校としての最低限の役割は果たしてくるので、キャリアがマイナスになることは無い。如何にプラスにしていくかは数々の誘惑と戦う自分次第。

MBAが人生を変えたかという問いについては回答を濁してしまうものの、MBAは間違いなく人生を豊かにしてくれた、と思う。ので、私は行ってよかったって素直に言える。ただ、進学を決意する前に自分の現在地を客観的に極力正しく理解した上で、MBAへの期待値を適度に設定しているか確認されるのが良いと思う。自分の現在地からかけ離れた期待値へとなってしまうほど、将来、現実とのギャップに苦しむ可能性があがると思う。結局はこのMBAへの期待値Managementと、多額の学費(と機会費用)のバランスをどう見定めるかで海外MBA進学の是非を決めれば良いと思う。

以上は私の個人的な経験に基づいた感想でしかないので、そういった意味でも海外MBA進学の検討においては自分と似たようなバックグラウンドや志を持った人に話を聞くのがお勧めである。とっても凄いことを在学中に成し遂げる方も沢山いらっしゃるのは事実であり、この私のポエムはそれらの事実をdowngradeする意図は全く無い。ただ、そういったaccomplishmentが"MBA進学する"という事実だけで自分にも出来るかも?というのは誤解であり、海外MBAはキャリアを一発逆転させる魔法では決してない。

以上、MBAを卒業してそろそろ1年、のポエムでした。
卒業1周年のReunionがもう直ぐあるんです。友人たちと再会できるのがとっても楽しみ!もうそれだけで良いじゃん!

海外MBA受験/米就活相談は@tenmusubisanまで。

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