ねこを看取る。
先日、17年連れ添った猫を亡くしました。名前はてん。
猫のお見送りをするのは人生三度目。ほとんど家にいて亡くなるまでの時間をこんなにも密接に共にしたことは初めての経験でした。
その時々の気持ちを最後の何日間かメモに書き綴っていたこともあり、ちゃんと書き残しておきたい・・・思い出すのはつらいけれど、てんの見事な生き様を決して忘れたくないので書いておきたいと思います。
(長いです。とてもとても長いです)
てんが腎臓病を発症したのは2020年3月。
投薬と自宅補液(点滴による水分補給)で療養を続け、時折食欲不振や嘔吐などの症状が出てはまた持ち直す、を繰り返しつつもこの数年間はステージ2(比較的安定した状態)で踏みとどまっていました。
2023年末から体重がじわじわと下降。心配された今年の猛暑は意外と元気に乗り切ってくれたのですが…9月末からガクンと食欲が落ちる。血液検査ではステージ2のままだったが、何しろ人間でいえば80代の高齢。ごはんを変えたり食欲増進薬を使って一時的に食べられるようになっても長続きせず、10月に入る頃、1年前4.2㎏だった体重はついに3㎏を切ってしまいました。
以下、ツイッターに書いたものやメモ書きしたものに加筆修正し、時系列で・・・
10/25
ちゅーるすらひと口も食べなくなってしまった…
獣医さんから点滴入院3日を提案されたけど、てんには耐えがたいと思うのでお断りした。今後は自宅で流動食あげながら少しでも穏やかに過ごすことに。
本当にもう、残された時間は少ない。大切にしよう。
流動食は一日4~5回(3時間以上間あける)
初回チャレンジ!注射器みたいなシリンジで口に少しずつ流し込む。以前水薬飲ませるの失敗してむせさせてしまったトラウマあり心配だったけど、ちょっと嫌そうではあるが大丈夫だった。終わった後も逃げなかったので味おいしいのかな?
2回目の流動食で私がミスって、てんも自分も流動食まみれになる…という大失態。もう二度と口にしてくれないかも、と泣きそうだったのに全然てんは怒んなかった。
流動食が呼び水になったのか、ごはん食べてくれた!まる2日くらい食べてくれなくて、もう無理かも…と思ってたから嬉しすぎる。
流動食の時、私は普通に膝の上抱っこであげてたんだけど、つべ動画見たら「強制給餌」という恐ろしいタイトルで猫バスタオルぐるぐる巻きエリザベスカラー付けててびっくり。てんは顔背けようとするけど暴れたりはしない。
私にはもったいないできた猫だ。
時々メソメソしそうになるけど、あまり深く考えないよう普段通り!を心掛けて過ごす。病院・補液・流動食といろいろやることあるせいか、むしろ普段より元気。
10/28
また食べなくなってしまった…
流動食は引き続き。比較的上手にゴックンできる時もあれば口からボタボタ出てしまう時も。私のあげ方が下手だから?
まぁ勝手に口に入れられ飲み込み強要されるなんて猫の尊厳を無視した行為ではあるからな…
一日中嫌なことばかりする嫌な人間なのに、変わらず近くにいて指にスリスリして甘えてくれる。てん、私よりはるかに徳高く器の大きい立派な猫だよ。感謝と尊敬が募るばかり。
10/30
流動食もあまり飲み込めなくなって、もう無理に飲ませるのやめよう、と決断した。
そう心の中で決断した瞬間「わあぁぁ」と大声で泣いてしまった。それは、一縷の望みを持つことはやめ、本格的な看取りに入る、ということだから。
自宅補液で水分補給はある程度できるから、あとはてんの生命力で自然に行けるところまで…
11/1
今日病院で今後の話をした。おそらく、てん最後の診察。
11/2
てんはこのところ、お気に入りだったテレビ横の穴倉をやめて(もうたぶんテレビ台には乗れない…)、私の定位置だったクッションふかふか椅子をねぐらにしている。
前は「人間も自分の居場所主張します!」と、抱き上げて自分の膝に置き直して座っていたけど~てんの安静を邪魔しないよう全面的に譲渡してる。
やむなく私がベッドの上でくつろいでいると、てんの方でのっそりベッドに来て私の膝にのってきた。柔らかくあったかな感触を感じながら2人で小1時間ウトウト。この期に及んでも私の方がてんから癒してもらっちゃってる。
11/3
病院通いも流動食もなくなって急にぽっかり平穏な日常。
てんの細く薄い背中撫でてるとぽろぽろ涙出るけど…ごはん食べて「おいし~」とかテレビ見て笑ったりは前と変わらない。数時間以上の外出は控えつつなるべく毎日外に出る。
きっとてんは、能天気で機嫌が良い私が好きだから。
てんはよくしゃべってくれる猫だったけど、しばらく前からすっかり無口になってしまった…
この前なでなでしてたら「ぐぅぅ」と喉の奥から変な声出したのでほんとはしゃべりたいのかも。「無理しなくていいよぉ。ちゃんとわかってるからね」と言うと、それからはただ穏やかに喉ゴロゴロ鳴らしてる。かわいい
11/4
眠っているてんのお腹が動いているか確認するようになった。呼吸するたびにお腹が小さく膨らむのが見えるとほっとする。
今日は朝から呼吸するたび「ふん…ふん…」と鼻の奥から小さな呼吸音がする。きっと息苦しいのだろう。頭も呼吸のたび微妙に動く。
トイレから出た後に嘔吐。というか、吐くものがないので胃液がちょっぴり出ただけ。
全身強張らせてえづくのが苦しそうで、実際苦しくてさらに呼吸荒くなる。犬のように口呼吸することはないが、呼吸するたび鼻の穴が膨らむのがわかるほど。鼻の呼吸音も大きい。こんなことは初めてだ。
座って休んでもその状態が続くので、いよいよもう・・・と思ってそばに付き添って撫でたり声を掛ける。ただ、撫でたりするとささやかに反応する(しっぽ振ったり身じろぎしたり喉鳴らしたり)ので、あまり干渉すると疲れてしまうかも・・・とじっと見守る。
そんなことを繰り返し時間が経つにつれ、鼻からの呼吸音があまりしなくなり落ち着いた状態になった。とりあえず一旦山は越えたらしい~と私もひと息つく。
以前からトイレで踏ん張った後吐くことがよくあった。体調悪い時は特に。お腹に無理に力を入れることで胃を圧迫してしまうからなのか…ただでさえ体の中の水分も養分もわずかしか残ってないのに…
どうしようか迷ったけれど、今日も補液をする。無理な延命行為はしない、とは思っているけれど、補液はこの4年以上ずっと続けてきた日常。てんが嫌がったり苦しそうでなければ水分補給だけは続けようと思う。
服薬はもうやめる。獣医さんも、飲んだ方が体が楽になるけど無理に飲ませなくていいと言っていたし。
午後になるとなんだか機嫌よさげで私の方をじいっと見てるので「かまってほしいのかな?」といっぱいなでなでする。とってもうれしそう。
喉をゴロゴロ鳴らして、指先に口元をスリスリ。呼吸音とは少し違う「ぐぅぐぅ」(人間のいびきの小さめな感じ)の音をしきりに出してる。鳴き声と喉ゴロゴロの中間みたいな。かわいい。めちゃめちゃかわいい。
少し動いただけでヒューヒューと呼吸音が激しくなる。足元フラフラで歩くのがやっと。しんどいね。
干した掛布団を取り込んだら、早速中に潜り込んでいた。目ざとい。
と思ったらいつの間にか失禁していた。トイレでうっかり外にこぼすことはあっても失禁は初めて。別に怒ったりしないのになんだかばつが悪そうな様子。
11/5
ほぼずっとぐったり座っているか横たわっている。
比較的調子がいい時は、香箱座りのように背中が綺麗な曲線を描き、頭を上げて座っている。具合が悪いと手足を投げ出しだらりと伸びて横になり、頭が床に落ちる。撫でても反応が薄く、近くに私がいても頭を上げて関心を示すことが少なく、目線は下に落ちたまま。余裕がないのだろう。
それでも撫でながらお腹に耳を当てると、小さくゴロゴロ鳴っている。名前を呼ぶとしっぽの先をピクッと動かす。
昼過ぎ、トイレに行き排便(泥状便)したあと激しい呼吸困難。ヒューヒューゼェゼェ苦しそうな呼吸音が1時間弱つづく。
首をだらりと床につけて横たわっている姿に、もうダメかも・・・と思ったが徐々に元の状態、鼻から小さな呼吸音がする程度に戻って落ち着きを見せる。すごい頑張り。
てんが苦しんでいるのに何もできない無力感。背中を撫でさすったり声を掛けたりしてみるけれど、それもうざったいのかもしれない…と思う。本当に苦しい時、てんは私にあまり見られたくないんじゃないかな、という気がする。
息が苦しい中わざわざ壁際の椅子の後ろまで歩いて行った。たぶんそっとしておいてほしいんだろう・・・と私は椅子に座ってクッション抱きかかえて激しい呼吸音をじっと聴いていた。
苦しい時に頼られないのは寂しいけれど、弱い姿を隠そうとするのは猫の本能。
もし自分だったら・・・病気の時ひとりぼっちは寂しい。でも四六時中横で心配されたり世話を焼かれるのも煩わしい。
やはりその時々で、てんの好きにさせてあげるのが一番いいにちがいない。
容態が落ち着いてからちょっと買い物に行って帰ってきたら、てんの姿が??
探したらベッドの下にいた。ベッドの下に入るのは私から身を隠したい時。見ると再びベッドで失禁していた。怒らないから出ておいでよ~と声を掛けても出てきてくれない。私に、というより自分がそんな失態をしたことがショックなのかもしれない。
夜遅く、しばらく乾かしてたマットレスに新しいシーツ付け替えるのに手間取ってバタバタしてたら、うるさかったのかようやくてんがベッドの下から出てきて、お気に入りのフロアマットの上へ。
少しほっとしたのも束の間、激しい呼吸困難の発作が出現。今までよりはるかに強い発作。
口呼吸しないはずの猫が苦しそうに口を開け、目をカッと開いて横倒しに倒れ込む。もがくように手足を動かし、急に立ち上がったかと思えばまた倒れ込む。
あまりに凄絶な苦悶に胸を締め付けられながら、とにかく声を掛け続ける。もう頑張らなくていい、とさえ口にしてしまった。これは絶対駄目だ・・・このままもう・・・
が、20~30分ほどしてふっと苦悶が消え力が抜けた様子。それから徐々に呼吸状態が改善していった。まさかあそこから復活してみせるとは。てんの踏ん張りに驚愕する。
それとともに、まだこれから長丁場になるかもしれない、と思った。
1日でも長く一緒にいたい気持ちは当然ありつつ、まだあと何回てんはこんな苦しい時間を耐え忍ばねばならないのだろう…と思うとつらい。
でもてんが「生きたい」という強い意志を持っているからこそ、あの状況から戻ってこられたのだろう。それなら私も最後まで一緒に闘うしかない。
もう補液もやめる。今後はてんの体内にまだわずかに残っているものだけが命をつなぐ。
「今夜が峠です」とわかればすべてを投げ出してそばに付き添うけれど、まだ何日も発作と小康状態を繰り返すのであれば、その間私も自分の生活を営まなければならない。てんより先に私が参っては話にならない。容態が安定しているうちに急いで風呂に入って寝る。
長いので一旦締め…つづきは↓
https://note.com/tenmomo/n/n334f41d3bcf1